兄弟の血―熊と踊れII 下 (ハヤカワ・ミステリ文庫)

  • 早川書房
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感想 : 24
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  • Amazon.co.jp ・本 (396ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784151821578

作品紹介・あらすじ

目的は警察への復讐──暴力で繋がれた"家族"の結末とは。ミステリ・ランキング第1位の北欧犯罪小説『熊と踊れ』、待望の続篇

感想・レビュー・書評

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  • いつも解説に共感しすぎてしまうから、読む前にさらっと感想を。

    創作って知ってるから割と心中穏やかなまま読めたが、結末…うーん…せつない…
    大切にしたいものは2組ともに兄弟(片方は母も含むが)、そして暴力を防ぎたい側と使うことに抵抗のないもの。
    ただ結末は大きく違い…
    切ない。最初に強盗に手を染めた理由が個人的にはなんとも否定し切れないが故にさらに…
    きっと読み返すことはないと思うが、久々に読んだ犯罪小説、暴力についてかなり考えさせられた。

  • ただひたすらに復讐遂行に身を投じていく長兄レオ。練り上げられた奇襲作戦は着々と成功を収め、いよいよ「史上最大の強盗」は最終段階に突入した。そして、レオの協力者の正体を知ったブロンクス警部もまた、警官としての領域の限界へと突き進む。この戦いを終わらせるために…。暴力で繋がれた父と子の、そして流血に縛られた兄と弟の物語は、前人未踏の終着点へ!

    続編は完全なフィクションだとのこと。結末には意見が分かれるようだが、これはこれでよいと思う。

  • 切ない、というほどではないかな。

  • ヨン兄弟がここまで脚光を浴びるとは…
    上巻と比べて回想シーンが少なく読みやすかったし、フィクションとも思えなかった。

  •  2016年海外小説部門圧勝の大作『熊と踊れ』に続編が用意されているとは全然知らなかった。あれほどの作品に続編を繋げる馬力をあるとは、この共著コンビ恐るべし。実は本作は二つの作品でセットした二部作との構想を初めから作者らは持っていたらしい。しかも一部は実際にあった事件を元にし、二部は完全なるフィクションで。そのフィクションの第二部は、実際には起こっていないが、起こったとしてもおかしくないくらい自然な筆力で描かれてゆく。

     前作を受けて兄弟も夫婦も親子もばらばらになったところから始まる本書。家族たちの不本意な再会。焼け跡の亡霊のように復活する長兄。彼の犯罪へのさらなる意志が周囲を揺り動かす。兄弟たちのそれぞれの境遇、反応などは前作と同じようにはもうやれない、やりたくない、という新しい世界への意志で長兄を拒絶する。迷う父。断固たる母。家族の構図はこの作品でも危ういままの綱渡りである。

     彼らを追う側の捜査官の兄、しかももと受刑者という形で、新たなキャラクターが加わる。新たな犯罪の推進力。新たな兄弟の葛藤劇が物語に重なる。二つの兄弟の葛藤が世界に新たなコントラストを与える。

     そして作者の飽くなき新手の強奪へのアイディアが凄まじい。読み手の想像力を軽く凌駕する犯罪イマジネーションに感服。前作で手に汗握った数々の犯罪シーンが今また蘇る。悪夢の再生。跳梁する新手の策略。家族の間に張り詰める緊張。

     何よりも劇的要素を高めるのは悲劇だ。本書でも過去が語られる。前作の過去の続編が、現在の緊迫の中に挿入される。父の暴力。母の傷。兄弟の震え。離反。再会。それらが彼らのネガティブなエネルギーだが、再生への希望を持つ兄弟たちと、犯罪への拘りを捨てぬ長兄との溝は深まる。その溝がカタストロフへ向けて疾走する。

     そして思いがけぬ終章は、ぐさりと読者の心に刺さってくる。運命を辿った物語は、その運命から逃れることができぬとでも言うかのように。兄弟たちの慟哭も虚無も一まとめにして巨きな歯車がぎしりと動く。骨太の作品の第二部であり、終章である。完璧に近い前作を超えられるとは思えないまでも、個性的な彼らへの再会が叶えられる歓びは何物にも代え難いだろう。

  • 衝撃を持って迎えられた「熊と踊れ」の続篇。
    前作は、9件の銀行強盗はじめ現金輸送車襲撃、軍の武器庫からの銃221挺の窃盗、ストックホルム中央駅での爆破事件…と、矢継ぎ早に重大事件が起きてめまいを覚えるほどでした。
    今作は、前作と比べると派手さは後退したものの、その分、深度は深まっている印象を受けました。
    タイトル通り、血を分けた「兄弟」が大きなテーマとなっています。
    刑期を務め、刑務所を出たレオは再び犯罪を画策します(それも驚くような奇策。内容はもちろん、読んでのお楽しみ)。
    前作で共に罪を犯した2人の弟は、既に社会生活に復帰しています。
    再び、弟たちとともに犯行を遂行できるのか。
    このあたりのレオと弟たちとのやり取りは、静かですが、ひとつの読みどころでしょう。
    ぼくは、レオたちがあれほど憎んだ父・イヴァンと息子たちの関係性と、レオと弟たちの関係性が見事な相似を成していることに、痛切な思いを抱きました。
    もう1組の「兄弟」も存在も忘れてはいけません。
    レオを追う刑事、ヨン・ブロンクスと兄のサム・ラーシェン。
    サムはかつて弟のヨンを守ろうと、父を殺害し、刑に服しました。
    この2組の兄弟の関係が複雑に絡まり、物語は加速度をつけて進行していきます。
    読後、レオとヨンが背負うことになった運命の悲しさに、胸が塞ぎました。
    「熊と踊れ」を読んだなら、本書も必読でしょう。

  • 暴力と絆の物語。前作と違い今回は完全なフィクションだそう。
    合わせてサーガと呼びたくなる大作に、たまらなく惹かれてしまい、夢中で読んだ。途中何回も叫びたくなり、読後はいつまでも余韻が残る。おもしろかった。

  • 前作から数年後。レオが出所したところから始まる。前作同様に犯罪のにおいに満ちていてその世界観に圧倒される。レオの描く犯罪計画と巻き込まれていく弟たち。兄弟としての形。少年時代にあった絆と今の関係。レオから2人の弟への想いと、弟たちからのレオへの想いのズレ。犯罪計画やそれを追う刑事ヨンの背景もよく、ヨンとレオの犯罪で結びつき、犯罪によって大切なものを失っていくその姿はたくさんの感情がつきまとう。兄弟を求め、拒絶しながら生きていく家族、兄弟の絆の物語。

  • 終わり?終わりか。そうか終わったのか…って感じです。

  • (上巻より)

    再び一獲千金を狙うレオ、
    利用される父親、協力しない弟たち。

    途中で少し客観的になれた。
    多分、それはヨン警部が暴走しはじめたからだと思う。
    ということは、私が肩入れしていたのは、
    ヨン警部だったのだろうか。

    こちらの作品は小説だそうだ。
    そして、最初から二作書くことは決まっていた、とも。
    しかし、もしこの「兄弟の血」を読まなければならないとしたら、
    「熊と踊れ」を勧めるのを躊躇せざるをえない。

    結末が気に入らないとか、
    話がつまらないとか、そういうことではないのだが。

    さらなる続編はあるのだろうか。
    ヨン警部の不正に気が付いたエリサ警部補に
    追及をさせてみたい気がする。
    そして、もしこの次があるのならば、
    レオを安らかに眠らせてやってほしい。

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著者プロフィール

アンデシュ・ルースルンド 1961年生まれ。作家・ジャーナリスト。ヘルストレムとの共著『制裁』で最優秀北欧犯罪小説賞を受賞。

「2013年 『三秒間の死角 下』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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