三日間の隔絶 下 (ハヤカワ・ミステリ文庫 HMル 6-14)

  • 早川書房
4.37
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本棚登録 : 130
感想 : 17
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  • Amazon.co.jp ・本 (400ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784151821646

感想・レビュー・書評

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  • アンデシュ・ルースルンド『三日間の隔絶 下』ハヤカワ文庫。

    グレーンス警部シリーズの第9作。そして、シリーズ内シリーズのグレーンス警部&潜入捜査官ピート・ホフマン・シリーズの第4作。

    かつて、北欧ミステリーというと登場人物の名前を覚えるのに苦戦したのだが、本作はサクサクと読める。それは本作が非常に面白いからなのだと思う。

    いよいよグレーンス警部とホフマンは事件の核心へと向かう。鍵を握るのは17年前に一人だけ生き残った少女なのか。グレーンス警部の上司、信じていた同僚が事件に関与しているのか……

    余りにも悲しい結末。

    グレーンス警部とピート・ホフマンが各々が抱える事件と問題を解決するために協力する。グレーンス警部がホフマンを脅迫する相手を特定するために警察への潜入捜査を行い、ホフマンは17年前の銃殺事件の容疑者を次々銃殺する犯人を探し出すことに。期限は僅か三日間。

    突然始まる17年前に一人だけ生き残った少女の物語。当時、ザナ・リーライという名前だった少女は証人保護プログラムによりハンナ・オールソンという名前を与えられた。ザナは家族と自分が巻き込まれた忌まわしい過去を取り戻そうとするが……

    本体価格1,400円
    ★★★★★

  • スウェーデンの小説の翻訳である。ストックホルム警察のエーヴェルト・グレーンス警部が活躍するシリーズだ。加えて、潜入捜査員のピート・ホフマンも登場する。「ダブル主人公」というような体裁でもあるのだが、そういう体裁としては4作品目ということになる。
    「警察の最高機密が漏洩?」という事態に思い至ったグレーンス警部と、潜入捜査員として活動した経過が在る凄腕のピート・ホフマンは問題の解決に向けて共闘する。やや遠い過去の事件がグレーンス警部の眼前に現れ、謎の脅迫者と向き合うホフマンの活動により、過去の事件の「裏」が引き寄せられる。そして「そう来たか?」という意外な結末が待っている。
    こういう経緯で進む上下巻の物語だが、本当に一気に読み進めてしまった。過去のシリーズの中でも、本作は殊更に面白い。「機密の漏洩?」という事態で慎重であると同時に、大胆にグレーンス警部が動き、推論を巡らせる。他方で腕利きのホフマンは、事態の核心に着実に迫る。そして明かされる意外な結論である。
    或る意味では「最もこのシリーズらしい」という魅力が溢れる作品かもしれない。かなり夢中になった。

  •  グレーンス警部と潜入捜査員ピートとのW主人公シリーズは当初三部作のはずだった、と思う。三秒間、三分間、三時間で終了するはずだったこのシリーズは、さらに三日間、三年間と続くようで、今回は四作目の「三日間」の物語だ。何はともあれ、作者も多くの読者同様、このダブル主人公シリーズを終えるに忍びない状況となっているに違いない。

     迷惑なのは、長年潜入捜査を強いられているピート・ホフマンとその家族だろう。これまでいくつもの死地を潜り抜け、その都度、肉体的・精神的な負担を異常にかけられてきたピートと、そのとばっちりを受けっぱなしの家族に、いい加減平和と幸福をもたらしてほしい気持ちは読者心理の中でも上昇を続けんばかりなのである。

     しかし、やはり飛びついてしまう。やはり続編が有難いのだ。ホフマン家には申し訳ないが、またしても息を飲むようなピンチとそこからの脱出を試みて頂きたいのだ。本当に申し訳ないことなのだが。

     それはそれとしてグレーンス警部はそもそもが単独シリーズ主人公でもある。この極めて個性的で癖のある、全然格好良くない上、私邸にも帰らず警察署の私室で寝泊まりしているというワーカホリック。頑固で変化を拒まず、年下の上司にも扱いづらく思われている我らがヒーロー。そのグレーンス警部も定年退職まで残すところ一年を切っている状況。

     さらに今回の事件はグレーンス警部の心に巣食っている未解決事件の一つに端を発する。17年前、4人の家族が銃殺され、5歳の誕生日を迎えたばかりの少女が死体の遺された部屋で三日間取り残されていた。異常かつ過酷すぎる事件である。当初、ぼくはこの過去の三日間が、タイトルのそれなのかと思っていたが、タイトルの三日間はしっかりと現在のホフマンに対し約束通り与えられることになるのでご安心を。分刻みの時計がネジを巻かれる例の場面はこのシリーズの最大の楽しみである。それでも少女の三日間にも何らかの意味があるかどうか。それはそれで読んでみてのお楽しみ。

     犯罪組織の標的となった者たち。彼らが守られる、あるいは彼ら自身で自分たちを守る手段とは、一体何なのだろう。潜入捜査官であるピートは、職務の都度、別の人間になり替わって、犯罪組織の壊滅に貢献してきた人間である。絶対にその正体を知られてはいけない存在。

     本書では犯罪者側にピート・ホフマンの正体と家族の情報が漏洩してしまう。家族を隠そうと翻弄するピートばかりか家族情報までが、まるで彼らを翻弄するかのように洩れてゆく。これまでになかった絶体絶命の危機を招いている原因は何なのだろうか? 警察機関内部の敵を疑わざるを得ないという、これ以上ない緊迫した状況のなかで本書は進行する。絶え間ない緊張と、その重圧。

     グレーンスの過去の事件の上に、ホフマン一家が現在捉えられている危機とがどう交錯するのかわからないまま、物語はそれぞれに二つの重戦車の如く進んでゆき、思いがけぬラストに繋がる。いつものストーリーテリングが何よりも素晴らしく、その語り口が凝りに凝った仕掛けを支え続けている。タイムリミット型エンターテインメントであると同時に、17年前の家族斬殺事件の意味も明らかになってゆくだろう。

     しかし、どのように?

     この終始クリフハンガー的状況を、けれん味たっぷりに描く唯一無二の語り口。是非とも手に取って味わって頂きたいと思う。

  • 自分を脅迫している人物を明らかにするため、ホフマンはグレーンス警部に警察への潜入捜査を依頼する。だが、その交換条件として彼は17年前に起きた事件の容疑者を次々と殺していく犯人を探し出すことを命じられる。背中を預けあうことになった彼らに残された時間は、17年前の最後の容疑者である男を拘留できる‟三日間"。しかし、事件は予想もつかない展開へ――。

    子どもの描写がうまい。だから、この結末はいつまでも心に響く。

  • 2023.05.23
    文句なしの傑作。
    海外ミステリに二の足を踏んでいる人にもオススメ。
    理由は読みやすいし、どんどん読み進めたくなる切迫感にあふれているから。

  • 面白いけど、もっと求めてしまう。

  • 2024/4/25読了。

  • う~ん。読ませるなあという読後感。
    ジリジリと迫るリミット。意表を突く展開。
    時系列のズレがやられた。冷静に考えればそうなんだけど読んでる時には気が付かない。
    大変な状況なんだけどホフマンとグレーンズ警部の協力体制が嬉しい。
    ホフマンの子供たちとグレーンズ警部の交流が微笑ましい。もうホフマンを平穏に過ごさせてあげたいところだが、シリーズの次回作があることがわかっているので気の毒にも思う。

  • めちゃめちゃ面白かった。
    これを待ってたよ。三分間、三時間とパッとしなかったんだけど待ってた甲斐があったな。
    まったく読めない展開。あらゆるところに仕掛けられた謎。繰り返されるどんでん返し。いったい真犯人は誰なんだ。先生、もうページを繰る手を止められませんっ!!

    解説の人も前2作は無かったものの如く書いてたから気持ちは同じだったんだな。
    しかし次は一気に三年!!?
    どうなることやら。。。

  • 見習いの子を信用しすぎなところがなんだからしくない感じがして違和感

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著者プロフィール

アンデシュ・ルースルンド 1961年生まれ。作家・ジャーナリスト。ヘルストレムとの共著『制裁』で最優秀北欧犯罪小説賞を受賞。

「2013年 『三秒間の死角 下』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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