ザ・チェーン 連鎖誘拐 下 (ハヤカワ・ミステリ文庫)

  • 早川書房
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感想 : 34
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  • Amazon.co.jp ・本 (277ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784151833052

作品紹介・あらすじ

誘拐の連鎖から逃れられるか? 誘拐×スリラー×アクションの無類のエンターテインメント!

感想・レビュー・書評

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  • もしかしたら誘拐された娘が解放されて終わる第一部だけで物語を閉じてしまってもよかったかもしれません。強烈に後味の悪い話になるでしょうが。

    とはいえ第二部では、事件後の被害者であり加害者である主人公たちの精神的に疲弊していく様子、これからずっと不安や終わりのない閉塞感を抱えて生きていくこと、そこから脱却しようと行動する、それと交互に黒幕たちのエピソードがあり、短い場面展開でどんどん読ませていく手法にのせられて物語の先へ先へ。

    最後はハリウッドアクション映画みたいな展開でしたが、まあ満足。
    メキシコカルテルの人質制度とチェーンレターから着想を得たとのことに感心しました。

  • エイドリアン・マッキンティ『ザ・チェーン 連鎖誘拐 下』ハヤカワ文庫。

    下巻は手に汗握るアクションの連続。映画化されたら、かなり面白い作品になるだろう。海外翻訳物に余り馴染みの無い方でも充分に楽しめる作品だと思う。

    無事、愛娘のカイリーを取り戻し、誘拐した子供を解放したレイチェルだったが、チェーンの呪縛からは逃れられない。意を決して、レイチェルはチェーンを断ち切るために元軍人のピートと共に行動を起こす。

    そして明らかになるチェーンの首謀者とその目的……

    一般人がモンスターを凌駕してしまうという出来過ぎなところもあるが、多くの方々にお勧めしたい作品。

    本体価格780円
    ★★★★★

  • シングルマザーのレイチェルの娘、カイリーが誘拐される。身代金2万5千ドルと、別の子供を誘拐しろと要求が。電話をかけてきた者は、息子が誘拐されている、レイチェルが別の人を誘拐しないと息子が解放されないのだと言う。つまり、チェーンのように、次から次へと誘拐が連鎖していくシステムなのだ・・・

    なかなか面白かった。

    魅力的な人物造形はほとんどないが、チェーンというシステムとストーリー展開が抜群だった。純文学と真逆のエンターテイメント。

  • 娘を救うため、レイチェルは元義兄の退役軍人とともに無関係の子供の誘拐を計画し、実行しようとする。しかし彼らの前には予想だにしないトラブルが立ちはだかり……。はたして誘拐の連鎖に囚われた彼らは〈チェーン〉から脱け出すことができるのか?

    第二部からが、やや見え見えとなるが、そこは勢いで読ませる。この設定、実際に行われていたことがヒントになっていたと知り、ビックリ。不幸の手紙もまずいよなぁ。

  • 最後は少し都合が良すぎる感があるが、全体としてレベルは高い。ただ、2冊にする必要はない分量。

  • おもしれー後書きにウィンズロウ出てきて納得

  • 娘のカイリーはつらい体験をしたが,無事に帰ってきた。レイチェルが選んだ次の被害者ダンリーヴィもまた,チェーンをうまく継続させた。一見もとの日々が戻ってきたように見えるが,巻き込まれたレイチェル,ピート,カイリーはみな,取り返しのつかない傷を負ってしまった。レイチェルは娘のために立ち上がる決意をする。チェーンを壊さなくては。

    「ルーム」,「棺の女」等々,「帰ってきた被害者のその後」を描く物語はいくつかありますが,この本の場合は「自分も加害者になってしまった。だから本当のことは誰にも言えない」ということのほか重たい事情を抱えているところが特徴。
    下巻では,ピートに止められながらも立ち向かう決意をするレイチェルの姿と,チェーンを作った真犯人たちの生い立ちとが交互に描かれていくのですが,何しろ上巻でひどい目にあいすぎたので,全然真犯人への同情心がわかないという・・・。
    犯人がだれかわかったところからはめちゃめちゃハラハラドキドキ,向かう展開はそこしかないとわかっているのですが,それでもページをめくる手が止まらなくなりました。
    「もしこの事件が映画化されたら」とかピートのセリフにありましたが,下巻はハリウッド映画さながらのエンタテイメント性にあふれてて最後は楽しく読めました。

    それにしても,上巻の時から,「チェーン」の展開の速さ(週に1回以上は誘拐が起きている計算になる。下手したら2回以上?)を考えると,巻き込まれている人は指数関数的に増えるはずなので,エリックやレイチェルのような「戦おうとする人」が現れる可能性はこれまでにもあったと思われるし,カイリーのように自力で逃げ出そうとして成功する子どもがいたっておかしくはない。
    そう思うと,チェーンてうまくいきすぎじゃないか,設定甘いんじゃ,とも思っていたのですが,終盤でオリーが,3年もたなくたっておかしくなかった,たまたまうまくやれてたんだ,という意味のことを言うところがありまして,やっぱりそうなんだなと。
    スモールネットワーク理論で言えば,もっと早く法執行機関の関係者とつながってしまう可能性は高いので,運も手伝ってうまく回っただけだということで納得しました。

    総評としてはとても面白かった。しかし,上下巻にわける必要ないんじゃないかなとは思いました。1冊でいいのではないか。

  • 下巻は上巻とややテイストが違う。反撃編といったところ。一気読みした。

  • 「誘拐された子供を返して欲しければ他の子供を誘拐しろ」そうして何度となく続いている誘拐の連鎖。全ては自分の子供のため。残酷な要求に応えるために残酷な人間になる。知らず知らずのうちに自分が変化していく。混乱、怒り、絶望、たくさんの感情が流れ、溢れていく。そのさまに恐怖を感じる。下巻に入り少し空気が変わったかなって思い始めた矢先に挿入される船のシーン。唐突に描かれる怖さ、不気味さがある。被害者たちと犯人との対決が始まる後半からはさらに加速して一気読み。面白い。


  •  マッキンティと言えば北アイルランドを舞台にした、闘う警察官ショーン・ダフィ・シリーズでの好印象しかないのだが、驚いたことに、いくつかの賞を獲ったにも関わらず執筆の対価に合わないとしてペンを折ってしまいネット配車タクシーのドライバーに転職していたのだそうだ。そんな、と思ってしまうのはぼくだけではない。

     本作の彼の初稿(短編小説)を読んだドン・ウィンズロウは、もとより彼の才能を買っており、自身の米国エージェントを通して長編化と作家への復帰を説得したらしく、彼は本作で改めてアメリカでの出版での勝負に出たとのことである。作者自身のあとがきと杉江松恋の文庫解説にも詳しい。

     さてその力の入った実にアメリカ向けの作品が本書であり、正直、ショーン・ダフィ・シリーズのマッキンティの躍動する、あの寒々しい北アイルランドの風土と闘いの歴史の上に繰り広げられる重たい捜査模様を期待する読者は、呆気に取られると思う。

     むしろピエール・ルメートルなどに見られるスリリングな状況作り、逆転また逆転の仕掛けといった高いエンターテインメント性など、これがあのマッキンティなのかと驚くほど、それはアメリカンなエンターテインメント作品に仕上がっているのである。

     誘拐された親は次の誘拐を完了させないと我が子を取り戻せないというチェーンに巻き込まれた家族。そのシステムを構築した者の正体は? そして結末は? とまず物語構造だけで緊張関係を作り出してしまっている。

     さらにスマホ、タブレット、パソコン、アプリなど、現代ならではの道具による仕掛けが頻出と多彩な銃器によるアクション。世界中の若者に受けそうな、それこそ今にも映画化されそうな面白小説に仕上がっている。

     個人的にはショーン・ダフィの鼻っ柱の強さが好みだっただけに、マッキンティにはこの手の才能で稼いで生活基盤を手に入れて頂いたら、生まれた地である北アイルランドを素材にしたショーンの物語も末永く紡いで行って欲しいものである。

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