- Amazon.co.jp ・本 (434ページ)
- / ISBN・EAN: 9784152088147
作品紹介・あらすじ
昭和20年、爆弾が降り注いだ和歌山。戦争が激化する中、18歳の警官、瀬名弘之は大事件に遭遇した。砲台島の砲兵3名が謎の焼死を遂げたのだ。弘之は、捜査に訪れた死神のような憲兵、渡里純一と行動をともにする。しかし、謎めいた渡里の言動と次々と起こる事件のため、事態は混乱に陥る。ようやく事件の核心へと近づくが、弘之に召集令状が届き…戦火の中、生と死をみつた少年の哀しみのミステリ。
感想・レビュー・書評
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三咲光郎 2007年の作品。
すさまじい物語だった。
戦時下の憲兵と警察の力関係のことなど、よく知らずに読んだ。
ラスト80ページは「凄惨」のひとことだ。
確かにミステリではある。
が、事件の背景を追えば追うほど、戦時下の日本のありようが読み手に迫ってくる。
謎を追うことを楽しむミステリとは勝手が違う。
重いものが胸に渦巻く。
どんなに読み進めても、憲兵・渡里中尉の恐ろしさが和らぐことはなかった。
反して、最初は威張り散らして見えた憲兵たちの人間らしさが、
徐々にじんわり沁みていった。
主人公の巡査・弘之は、18歳とは思えない冷静さだった。
命が軽んじられていた時代、赤紙が来れば特攻要員として召集されてしまう。
あと4日で召集というせっぱつまった命だった。
だから、ここまで冷静に、なおかつ大胆になれたのか。
一巡査が、大胆に憲兵にズバズバと切り込んでいくその様、
ある種、ハリウッド映画のようだと思った。
地方という特色のせいもあろう。そう解釈したい。
読み終えて、ざわざわしたものが残った。
いろいろな読み方ができるだろう。
食べる手立てをなくした人たちが取った行動について。
毎日、未曾有の命が爆撃で失われている中、
殺された憲兵数人の足取りを追う弘之の捜査について…。 -
やっと読み終わりましたが…怒涛の最後。
最後の最後、そうきましたか。
渡里中尉より矢萩中尉が個人的に好き(笑)
まぁなんというか、ミステリー小説なのでうかつに感想が書けませんが、恐ろしい本でした…。
次々と切られていく玉の緒。この時代の焦土の中に立ってしまった気がしてなりません。
しばらく現実に戻れなそうです…。