砲台島 (ハヤカワ・ミステリワールド)

著者 :
  • 早川書房
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本棚登録 : 21
感想 : 5
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  • Amazon.co.jp ・本 (434ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784152088147

作品紹介・あらすじ

昭和20年、爆弾が降り注いだ和歌山。戦争が激化する中、18歳の警官、瀬名弘之は大事件に遭遇した。砲台島の砲兵3名が謎の焼死を遂げたのだ。弘之は、捜査に訪れた死神のような憲兵、渡里純一と行動をともにする。しかし、謎めいた渡里の言動と次々と起こる事件のため、事態は混乱に陥る。ようやく事件の核心へと近づくが、弘之に召集令状が届き…戦火の中、生と死をみつた少年の哀しみのミステリ。

感想・レビュー・書評

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  •  太平洋戦争末期、警察官の主人公が、一人の憲兵とともに一連の殺人事件のなぞを追う。みたいな感じ。 三咲さんの作品は本作で2冊目。全体的に暗い感じが三咲らしい。結局、憲兵が米国側のスパイで殺人事件を捜査する振りして、自分の痕跡を消していた。というのは、”オチ”としてどうかな、と思うけど、この時代を背景にした作品は基本的に好き。

  • 三咲光郎 2007年の作品。

    すさまじい物語だった。
    戦時下の憲兵と警察の力関係のことなど、よく知らずに読んだ。
    ラスト80ページは「凄惨」のひとことだ。

    確かにミステリではある。
    が、事件の背景を追えば追うほど、戦時下の日本のありようが読み手に迫ってくる。
    謎を追うことを楽しむミステリとは勝手が違う。
    重いものが胸に渦巻く。
    どんなに読み進めても、憲兵・渡里中尉の恐ろしさが和らぐことはなかった。
    反して、最初は威張り散らして見えた憲兵たちの人間らしさが、
    徐々にじんわり沁みていった。

    主人公の巡査・弘之は、18歳とは思えない冷静さだった。
    命が軽んじられていた時代、赤紙が来れば特攻要員として召集されてしまう。
    あと4日で召集というせっぱつまった命だった。
    だから、ここまで冷静に、なおかつ大胆になれたのか。
    一巡査が、大胆に憲兵にズバズバと切り込んでいくその様、
    ある種、ハリウッド映画のようだと思った。
    地方という特色のせいもあろう。そう解釈したい。

    読み終えて、ざわざわしたものが残った。
    いろいろな読み方ができるだろう。
    食べる手立てをなくした人たちが取った行動について。
    毎日、未曾有の命が爆撃で失われている中、
    殺された憲兵数人の足取りを追う弘之の捜査について…。

  • やっと読み終わりましたが…怒涛の最後。
    最後の最後、そうきましたか。
    渡里中尉より矢萩中尉が個人的に好き(笑)
    まぁなんというか、ミステリー小説なのでうかつに感想が書けませんが、恐ろしい本でした…。
    次々と切られていく玉の緒。この時代の焦土の中に立ってしまった気がしてなりません。
    しばらく現実に戻れなそうです…。

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著者プロフィール

三咲光郎(みさき・みつお)
1959年大阪生まれ。関西学院大学文学部卒業後、高校の教職に就くかたわら小説の執筆を開始。1993年に『大正暮色』で堺市自由都市文学賞、1998年に『大正四年の狙撃手』でオール讀物新人賞、2001年に『群蝶の空』で松本清張賞、2018年に『奥州ゆきを抄』(岸ノ里玉夫名義)で仙台短編文学賞を受賞。著書に『忘れ貝』(文藝春秋)、『砲台島』(早川書房)、『死の犬』(角川書店)、『蒼きテロルの翼』(祥伝社)、『上野(のがみ)の仔(がき)』(徳間文庫)など。

「2023年 『空襲の樹』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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