神は妄想である―宗教との決別

  • 早川書房
3.73
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本棚登録 : 1402
感想 : 85
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  • Amazon.co.jp ・本 (578ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784152088260

作品紹介・あらすじ

人はなぜ神という、ありそうもないものを信じるのか?物事は、宗教が絡むとフリーパスになることがままあるが、なぜ宗教だけが特別扱いをされるのか?「私は無神論者である」と公言することがはばかられる、たとえば現在のアメリカ社会のあり方は、おかしくはないのか…『利己的な遺伝子』の著者で、科学啓蒙にも精力的に携わっている著者は、かねてから宗教への違和感を公言していたが、9・11の「テロ」の悲劇をきっかけに、このテーマについて1冊本を書かずにはいられなくなった。「もう宗教はいいじゃないか」と。著者は科学者の立場から、あくまで論理的に考察を重ねながら、神を信仰することについてあらゆる方向から鋭い批判を加えていく。宗教が社会へ及ぼす実害のあることを訴えるために。神の存在という「仮説」を粉砕するために。-古くは創造論者、昨今ではインテリジェント・デザインを自称する、進化論を学校で教えることに反対する聖書原理主義勢力の伸張など、非合理をよしとする風潮は根強い。あえて反迷信、反・非合理主義の立場を貫き通す著者の、畳みかけるような舌鋒が冴える、発売されるや全米ベストセラーとなった超話題作。

感想・レビュー・書評

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  • 形而上の神についても論じてほしかったかな

  •  長く教会に通ってきた。10代の頃から。その間、ずっと疑問に思っていたことがあった。ヒトラーはあれほど残虐な政治体制をなぜ、生み出し得たのだろうか。ベトナム戦争は今も続く被害を出しながら、長きに亘って休戦に至らなかったのはなぜだったのか。アジア・アフリカでたびたび起きる戦争とその犠牲者・餓死者は多く子どもである。そして今、ウクライナで戦争中である。平和を多くの人が祈り続けている。身近な体験では、敬虔な信仰を持っていたと思う人が、その家族を殺してしまった。うつ病が原因だったと聞いた。神はなぜ、止めてくれなかったのだろうか。いつも深く胸に引っかかってきた。
     これを読んで心から納得してしまった。神はいないのだ!誰にも言ってないけれど。

  • 神は存在しない。本書の論旨はこの一言に尽きるが、やや舌鋒が鋭い印象を受ける。神は存在しないことはうすうす感じながらも、宗教は人の行いを善くする動機付けなどもたらすのではないか?しかし、筆者はこの立場も肯定しない。宗教上の原理主義者たちは、自分は聖典を読んだのだから自分の考えは正しい、信仰は変わることがないという立場をとる。一方、科学は証拠について調査・研究を行ったうえで真実だとみなし、しかもその真実は更新されていく。宗教は科学の進歩を妨げ、人間の尊厳を踏みにじる。思い切った主張のように思える。
    主張が鋭いと感じるのは、矛先がは主に一神教に向けられている故か。アメリカでは95%の人が死後の世界を信じているそうだ。共和党の主な支持母体であるキリスト教原理主義の勢力も侮れない。こうした背景があるのだろう。
    さて、宗教が過去の歴史として語られる日はいつか来るのだろうか。

  • 『#神は妄想である』

    ほぼ日書評 Day595

    米国において無神論者は差別の対象であるという事実。
    1999年の調査ではあるが、次の属性を持つ人に投票するかという調査が行われた(括弧内がYes比率)。女性(
    95%)、ユダヤ人(92%)、黒人(92%)、モルモン教徒(79%)、同性愛者(79%)、無心論者(49%)。

    タイトルにある文言を口にすることが憚られる度合いは、我々日本人には理解できないものなのだろう。

    それゆえ、米国ではベストセラーになった本書を読んでも、正直苦痛以外の何者でもない。

    神が存在しないことの論拠を、これでもか…というくらい列挙しようとするのだが、その意図からして理解できないのである。

    評者などはむしろ、神とは何かという定義上の問題であり、光なり生命なりが生まれるきっかけとなったものを「神」と呼ぶ、とすれば何ら矛盾を感じないのであるが、人格神であり、この世の支配者である一神教世界では、そのような考え方はやはり通じないのだろう。

    訳者は自然科学系(著者の翻訳をこれまでも手掛けてきた経緯で担当した)の方ということで、「訳者あとがき」にご苦労がしのばれる。

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  • 著者の視座にたてば、それはさぞ理に叶わない世界が広がっているのだと思う。
    違う土地に住むものからみると、それは分かった上で採用した虚構でしょ、とも思う。
    むしろ、その批判の根源としているあなたの理が、それはそれで持続的でないものとして批判の対象になっているのではないでしょうか、とも。

  • 「生まれた家が〇〇教だったから自分も〇〇教」って世の中に、はらわたが煮え繰り返るほどムカついてるドーキンスさんが書いた本。

    彼が用心棒となり、親や社会からの宗教的同調圧力を口ゲンカで木っ端微塵に粉砕するためのトレーニングが受けられます。

    僕としては「人間は放っておいても数百年経つと勝手に神を作り出す性質がある生き物」という仮説を持っているので、その辺りを確認したくて読んでみました。

    神や宗教を斜に構えて見れる人にはなかなか痛快な本ですよ。

  • 日本ではここまで宗教にこだわることはないと思う。

  • ”神は存在しない”、そんな思想的なタブーにすらなりえないテーマを真正面から描き切った一作。

    様々な角度から比喩・暗喩を多用し、エッジの効いたブラックユーモアと緻密で切れ味が鋭い文章で”神の不在”を証明していく。
    カソリックが国のバックボーンになっている欧米で出版されていること、そしてリチャード・ドーキンスという既に当代きっての生物学者の著作であることは大きな波紋を読んだであろう。

    内容は博学(天才?)なドーキンスらしく様々な学問(生物学、哲学、量子力学…)は言うに及ばず、文学から映画まで幅広いジャンルから例をとりながら、宗教(主に3大宗教)が持つ矛盾を仮借なく暴き出していくので、実に読み応えがあって面白い。

    我々日本人の多くが精神的な背景としてもつであろう仏教や儒教は宗教ではなくむしろ哲学としてあえてとりあげていないところも面白い。確かに仏教には排他性がないのは他の宗教と大きく違うところなので納得できる。

  • 簡潔な『訳者あとがき』を先に読むと良いかもしれない。

  • 「利己的な遺伝子」で有名な生物学者ドーキンスが,宗教を完全否定する本。ほんと,完膚なきまでに。
    疑問を封じ,理屈を枉げる宗教は絶対悪。科学の精神とまったく相容れない。とてもよく分かるのだけど,「宗教は現にある」というリアルをどう扱うかの視点に欠けるきらいはある。宗教は現にある。それも,相当広く根深くある。
    日本にいるとあまり意識しないけど,世界の抱える深刻な問題は,今も宗教に起因するものが多い。

    以下,雑感。
    十代のころ,死について長いこと悩んでいて結局は自己解決したのだが,マークトウェインも同様の結論に至っていたことを知った。
    「私は死を怖れない。私は生まれるまでの、何十億年ものあいだ死んでいたのであり、そのことから、ほんのわずかな不自由さえ感じたことはない」p.520
    マザー・テレサ,一般には善人っぽいイメージだけど,ドーキンスも酷評してる。
    “カルカッタのマザー・テレサは、ノーベル賞受賞講演において実際に、「妊娠中絶こそ、最大の平和破壊者です」と言った。なぜなのか?このような偏った判断力しかない女性の発言を、どんな話題についてであれ、真面目に受けとめることがどうしてできるだろう”p.427

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著者プロフィール

英国の進化生物学者。世界的ベストセラー『利己的な遺伝子』で知られる。ほかの著書に『盲目の時計職人』『神は妄想である』『遺伝子の川』『進化とは何か』など多数。

「2022年 『これが見納め』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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