哀れなるものたち (ハヤカワepi ブック・プラネット)

  • 早川書房
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本棚登録 : 145
感想 : 14
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  • Amazon.co.jp ・本 (442ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784152088574

感想・レビュー・書評

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  • 私の好きなヨルゴス・ランティモス監督が今度映画化するということだったので、映画公開前に読んでみた。

    最初はフランケンシュタインの話のように荒唐無稽なゴシック小説かと思いながら読み進めていたら、途中から女性や労働者階級の人々がいかにモノ扱いされ、不当に踏み躙られてきたかが語られるようになり、最終的にはそれら全てがひっくり返される…という話だった。

    注釈の部分も立派な本文の一部なので、あとがきの直前までは作品としてしっかり読んだほうが良い。

  • 中身とは関係ないけど著者の名前の綴りはAlasdairなのにカタカナだとアラスターなのが気になってしまった。

  • 2008-04-00

  • 裏ページの紹介文にある「ポストモダン的技法によるゴシック奇譚」というのが、この本の印象を最も端的に現わした一文だろう。序文、本文、本文中に引用される手紙、別に記された書簡、最後は脚注までがストーリーの一部となるといった入り組んだ構造を駆使して、現代風のフランケンシュタイン奇譚を描き出す。

    若干、ベラ、フッカー、アストレーの政治談議が中弛みしている印象はあるものの、全体的には読ませる。

  • 小説家アラスター・グレイが入手した一冊の古書。そこには、19世紀末に実在した医師の"もう一つのフランケンシュタインの物語"ともいうべき驚愕の半生が記されていた……。

    作中作である「スコットランドの一公衆衛生官の若き日を彩るいくつかの挿話」で描かれる冒険に引き込まれるうち、まんまと作者の術中に……w。「序文」や「註」をも含めた多層的な語り(=騙り)の構成が見事。めまぐるしく入れ替わる虚と実にクラクラさせられる。

    独特の味わいのアラスター・グレイ自身による挿絵も素敵。

  • 19世紀後半のスコットランド・グラスゴーを主な舞台とした、奔放なベラの、波乱万丈な冒険が面白くて、ぐいぐい読めてしまう。

    このベラを、『フランケンシュタイン』の名も無い怪物の女性版と紹介しているレビューもあるのだけれど、手記の作者マッキャンドレスがさんざんほのめかしているのは、ベラの創造主である外科医ゴドウィン・バクスター自身も、高名な外科医であったその父親から何らかの処置をほどこされた存在である、ということのように思える。
    となると、怪物が、伴侶となるべき存在を自ら造りだした物語としても読めるということかしらん。

    ベラとの出会いから結婚に至るまでを描いたアーチボールド・マッキャンドレスの手記と、その内容に異を唱えるヴィクトリア(=ベラ)の書簡。
    編者としての「アラスター・グレイ」は、この書簡を、“自分の人生の出発点についての真相を隠そうとする精神障害の女性の書いた手紙”と断ずるが、果たしてそうなのか。

    荒唐無稽で、あり得なさそうな話と、いかにも常識的な話との間で、さてどちらが本当?と、考え始めること自体、アラスター・グレイの策にまんまと嵌ってしまったと言えるのかもしれない。

    ベラ誕生の経緯やバクスターも含めた3人の関係性はともかくとして、前へ前へと進む華やかな妻と、それを陰で支える夫というマッキャンドレス夫妻の夫婦のあり方や、バクスターの善良さや女性の自立に対する先見性、世の中の哀れな人々の力になりたいというベラの決意などは、揺るがないものとして二つの物語の間から立ち現われてくるように思う。

    晩年のヴィクトリアが、友人に宛てた手紙のなかで、「暖かくて何があっても揺らがない男がよかった。―(略)―私の人生を通じてそういう人はひとりだけ」と語り、自分の最期を看取らせるのがアーチー(と名づけた犬)であるというのに、ちょっとしんみりする。夫の生前は、その存在すら忘れがちだったような彼女の、夫の死後35年経っての愛の告白と思えるので。


      Poor Things by Alastair Gray

  • 面白い本ですよ!
    挿絵もゴシック&モダンです!
    手に入れた本を世に発表するという手法。
    二冊本を読んでいるような、、、

  • 読書中。

  • ドグラ・マグラ読んだこと無いけどドグラ・マグラみたいだなと感じた。作中作というか、訳注や資料までも作品というか。

    映画も見てないけど、いつか見たいと思ってる。死んだ女性の頭に赤ん坊の脳を入れて生まれ変わった女性が世界を周りさまざまな男性と付き合う性に奔放な話。自分らしさの話。自我の話。だと思っていたので読んでみると驚いた。

    映画だとどうなってるかわからないけど、脳ミソのところはフィクション。まじかよ。
    でもそれはどっちの言い分を信じるかの話なので。

    ベラが結婚しようとした日に父親や前の夫が押し掛けてきて、追い払うところ好き。
    キャンドルから見たベラ、弁護士のダンカンからみたベラ、キャンドルが書いた文章内でのベラの手紙内でのベラの様子など好きだな。

    見た目は大人の女性でも子供のような知能や振る舞いや無邪気さが良いとされてるのはヘドが出るけど。キャンドルが書くベラの様子は、生き生きと思うがままに振る舞ってるようにしているが、結局のところは子供だと見なしており、妻としての役目も果たさせているところがヘドが出る。

    でも面白かった。哀れなるものとはなにかとみんな考えるようだが、自分はそこまで考えなかったな。なにに自分は哀れむか下に見るかの話じゃないかなぁ。

  • 映画の予告を見すぎて初めからマックスが書いたみたいな内容だということをすっかり忘れて読んでいて大きく映像化されたものと比べると違うな〜違うな〜とずっと思っていた。
    それを念頭に読むべき一冊だった。だから、どこか編集されたような文章や内容だなと思っていた。

    ともかく、挿絵や資料が豊富でたびたび目を通して映画も見てみたい。

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