千の輝く太陽 (ハヤカワepi ブック・プラネット)

  • 早川書房
4.25
  • (29)
  • (14)
  • (10)
  • (1)
  • (1)
本棚登録 : 138
感想 : 23
本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています
  • Amazon.co.jp ・本 (444ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784152089762

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  •  読みやすくドラマチックな小説を低くみなす人もいると思うけれど、それによって多くの人々が世界の重大な問題に気付けるのなら、その力は難解な純文学をはるかに超えると思う。
     この作品はソ連侵攻以降のアフガニスタンの庶民の生活、政治状況をリアルに理解させてくれた。ソ連支配下にもいい面があったこと(共産主義では人民は平等なので、女性も学校に行けたし、職にもつけた)、その後のイスラム過激派がなぜ血で血を洗う抗争を続けることになったかなど。
     不義の子として生まれ、15歳で30も年上の男と結婚させられるマリアム。恋愛結婚した教養のある両親の元に育ち、恋人もいたライラ。平和な時代なら決してクロスしなかった二人の人生が重なってしまう。そのこと自体は不幸である。しかし彼女たちのつながりによって生まれた、自己を顧みないほどの愛は胸を打たずにはおかない。
     これを読むと厳格な(あるいは過激な)イスラム主義が生まれた理由もわかる。しかし、その実態は女性の人権を踏みにじるものであることも。

     この本がとてもいいのは、虐げられた女性を主人公にしても、彼女たちの魂の高さ、生き方の美しさを読者にしっかりと理解させること。単に可哀想な女性ではない、逞しさと気高さがきちんと描かれている。もちろん物語の運びもうまい。
     個人的には厳しい家長制度のあった時代の日本でも同じような女性はいたと思うし、今でも世界中にこういう暮らしを強いられている女性がいるだろうと思う。「おしん」がアジアやアラブでヒットしたように、こういう本もそういう女性たちに届けばいいと思う。
     土屋政雄の訳もよかった。
     読みだしたら止まらないリーダビリティのある本。読書をあまりしない人にも薦められる。


  • タリバンとブッシュ。戦争と法にがんじがらめにされる民の過酷さの中に暴力でしか伝えられない男の滑稽さは堪える女と罪なき子どもへの壮絶な不条理。対話と愛を尊ぶタリークの存在が女性の自由と機能する社会を照らす。和平の平和を。

    弱きものはさらに弱きものをおとしめる負の連鎖。母を見つめ赦す子どもは神に近い存在だと思う。もの言えぬ小さな魂こそ未来を救う者なのに。今も戦争が消えない。終わらない戦争は終わらせない戦争となって世界を脅かしている。

    本書は手にしたくない本のリストに入るかもしれない。暴力を嫌悪し安らぎを求める手助けになったけれど生々しく果てなく辛かった。

    なぜ人は地獄を見なければ平和を考えないのだろうか。平和は守らなければ壊れてしまう。地球も平和と併存して生きている。この星の生物が人とともに絶滅していくような気がする。マクロなことを思い戦争をするのだろうか。然し其れはミクロな行為だとは気づかない。畏れはどこにあるのだろう。

  • 男性には決して真似出来ない、真の女性(母親)の強さが胸を打ちます。

  • ハンカチでは足りません。バスタオルをお手元に。

  •  珍しく本屋で目に留まり、購入した本である。
     久しぶりに、長編のフィクションを読んだ。いや、一気に読み上げた。

     おそらく、中東やあちらの単語に不慣れな人には読みにくいところもあるが、女性の視点を通して、アフガニスタンの情勢やムスリムの間での女性の地位、状況、教育状況、地域の雰囲気が伝わってくる。また、それだけでなく、不器用な愛情を、そして、・・・せつなさを・・・ひしひしと感じてしまった一冊。カーレド・ホッセイニの作品は初めてだが・・・泣かせてくれるじゃないか。最後の手紙が効いている。

     BGMには、M.Jの「Human Nature」がぴったり合う。いや、勝手に、頭の中でリフレインするのだ。優しく、甘く、切ない”why、Why・・・”という、あのメロディとフレーズとが。

カーレド・ホッセイニの作品

  • 話題の本に出会えて、蔵書管理を手軽にできる!ブクログのアプリ AppStoreからダウンロード GooglePlayで手に入れよう
ツイートする
×