神父と頭蓋骨

制作 : Amir D. Aczel 
  • 早川書房
3.36
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本棚登録 : 78
感想 : 10
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  • Amazon.co.jp ・本 (328ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784152091390

作品紹介・あらすじ

一流の古生物学者、地質学者にして、敬虔なイエズス会士であったピエール・テイヤール・ド・シャルダン神父(1881‐1955)は、科学と信仰を融合させた独自の理論で知られる。そこには若き日に経験した第一次大戦の、毒ガス漂う苛烈な戦場の記憶も陰翳を添えた。しかし、その先鋭性ゆえに教会からは異端視され、テイヤールはパリから異郷中国へと「流刑」に処される。図らずもその中国で、彼は周口店における北京原人の発見に立ち会い、「ミッシング・リンク」の研究に重要な貢献を果たすことになった。戦時の混乱のさなかに消え去り、日本軍の関与も囁かれるこの原人骨は、今日なお捜索が続く。

感想・レビュー・書評

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  •  テイヤール・ド・シャルダンの本は活字文化全盛だった50年ほど前の一流書店の書棚には必ず置いてあったので手に取ってみた記憶はあるが、その後いつのまにか全然みかけなくなってしまった。ところが、本書の主人公がそのシャルダンだと知ってビックリ!
     おそらくシャルダンがイエズス会の異端児だということは昔も読んでいたはずなのだが、すべて記憶の彼方に消え去ってしまった今になって、本書であらためて知ったその軌跡のまばゆさには<恐れ入りました!>というしかない。
     それにしても北京原人の骨は今どうなっているのだろうか。

  • 最初読んだ時、本の主旨が今ひとつつかめなくて読みにくかった。文章は基本平易なので読みにくいということはないが、話題になっているものの図版が入っていないので、それを知っていることが前提になっている気がする。
    とある神父の軌跡の話。

  • いや、おもしろい本だった。
    北京原人を発見した科学者グループの最も代表的なメンバーにしてあらゆる科学の分野に通暁し、
    恐るべき行動力と明晰な頭脳を持ち、
    近寄る人すべてを惹きつけずには置かない人間的魅力と謙虚さに満ち、
    深く強靱な信仰を持つ、
    というあるカトリックの司祭のお話。

    彼は自らの人類学的発見とそこから導かれる進化論の正しさと自らの信仰が全く矛盾しないことを疑わなかったが、バチカンもイエズス会も彼の思想を理解できなかった。しかし彼は
    聖職者としてその生涯を全うした。

    こう書くとおもしろさが伝わらないが、これがスリルとサスペンスと愛という映画になっても良さそうな題材がたっぷり詰まったノンフィクション作品だ。

    日本軍の侵略とともに失われた北京原人の化石はいまだ見つかっていないし、バチカンやイエズス会にとってこの神父はいまだ「ハレモノ」の扱いのようだ。物語はまだ終わっていない。

  • 内容(読んでください)だけでなく、その筆致(訳文だけど)も精緻というほかない良書。
    ただし、一定の知識は必要だと思われる。

  • 2010年9月11日読了。面白かったけど、ティヤールの生涯をなぞっただけ…とも言えるかも。入門書としてすごく読みやすかった

  • イエズス会神父テイヤール・ド・シャルダンは、科学に造詣の深い父と敬虔なキリスト教徒である母の家庭に育ち、双方の影響を受けながらイエズス会神父兼科学者となります。彼は宗教と科学の考え方を受け入れ、折り合いをつけるべく努力しますが、時代は彼の考え方を受け入れませんでした。科学者としてミッシングリンクの発見に努め、北京原人の発掘に業績を残した彼の波乱の人生を辿る内容です。
    西洋の科学史における宗教と科学の対立というのは、とても根深いものと感じました。それは双方をよく理解する一人の人間の力だけでは、どうにもならないほど深く対立するものであって、現在もほとんど変わっていません。日本人は宗教は人生の節目に利用する儀式としての価値しか感じないので、宗教と科学は別物として扱うけれど、宗教が生活に密接に関係している欧米では、科学が宗教に与える影響は大変重要な問題のようです。
    この本では、彼の人生や取り巻く環境、時代背景については多少知ることができましたが、肝心の北京原人や人類史への貢献については記述が少なくてやや物足りない感じでした。確かにシャルダン神父が大変素晴らしい人物であることは理解できるのですが、、、。

    ちなみに教科書にも出てくるほど有名な北京原人ですが、実物の標本は日中戦争による混乱に巻き込まれ、行方不明なのだそうです。日本のどこかにあるという説も有力です。
    もし発掘されて消えた北京原人を再発掘したら、発見の栄誉は誰のものなんでしょうかね。

  •  おもしろそうだけどもう一つ盛り上がらないのは、主人公であるテイヤール神父の伝記にとどまってしまって、彼が成し遂げた業績がもうひとつ丁寧に説明されていないからのような気がする。

     確かに北京原人の頭蓋骨を発見したチームのメンバーであることはすごいのかもしれないが、むしろキリスト教神学と進化論を止揚した彼の思想にこそ、本当にドラマチックなものがあるのではないか。(僕は、宇宙は神の卵だという小松左京の短編を連想した)

     ドラマは、個人と組織の対立とか、うまくいかない恋愛関係などにあるのではなく、個人がぎりぎりのところで組み立てた思想そのものの中にあったのではないかという気がする。そういう点で、作者の描き方そのものに不満を感じてしまい、最後は嫌々読み終えた1冊になった。残念だ。

  • 北京原人の発見者。

  • 資料番号:011164159
    請求記号:469.2ア

  • (要チラ見!)

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