- Amazon.co.jp ・本 (357ページ)
- / ISBN・EAN: 9784152091413
感想・レビュー・書評
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凄い本だった。読んだあとも衝撃はなかなかやまず、内省が続く。
このところ浴びるようにたくさんの本を読んできたが、当然のことながらそうそう良書にはめぐり合えてこなかった。どの本もそこそこ面白く、読み終われば自然に忘れていくことができる。
しかし、この本はそうはいかない。影響が強すぎて、とうぶん別の本は読めそうにない。この本が良書かどうかは別として、しばらくは北野武の生み出す世界から抜けられそうにはない。
『Kitano par Kitano-北野武による「たけし」』は、仏人ジャーナリストのミシェル・テマンが五年間に渡って北野武にインタビューし、生い立ちから現在までの軌跡、映画、メディア、女性、政治、支援活動…、あらゆる北野武の思想と行動を徹底的にさらけだしている。
北野武はよほどこのフランス人ジャーナリストを気に入って、信頼しているのだろう。非常に饒舌だ。日本で出版された他のたけし本ではありえないほど、内容が濃い。日本ではこういう本は作れないのか? 北野武がフランスを愛するのがわかる気がする。
この本は北野武が日本語で話し、それをベナン人のオスマン・サンコンがフランス語に通訳してテマンに伝え、テマンがフランス語で書き、それを松本百合子氏が翻訳している。
こうした複雑な多重性を持っているためか、インタビュー本でありながら、非常に虚構性を感じさせる本になっている。それは、ここに書かれていることが、どこまで正確に北野武が最初に話した言葉のままなのかがわからないところがあるからだろう。そのために、虚構と事実がどちらともつかず、からまりあって提示されているような不思議な感覚を持たされる。そしてそれが却って、もっとも北野武に近づいたような錯覚を与えられるのだ。
この錯覚を解くためには、とにかく北野武の言葉を聞き、映画を観続けていくしかない。
わたしはすっかり北野武の術中にはまりこまされたようだ。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
希代の天才。。
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フランス人である著者がヒアリング(ゾマホンがインタープリタとして協力)を通じて、北野武の生い立ち、映画に関する思いや政治感なんかをレポートしたもの。生い立ちや映画の話はおもしろく読めた。ただ北野が直接書いていない分、毒気が抜けてややエレガントな雰囲気を醸し出しており、コアな北野ファンには物足りないかも。
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ものすごく面白かった!
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もう、理屈じゃないです。北野武が、ビートたけしが、何をしゃべるのか、とにかく読みたいんです。こんな欲求を見事に満たしてくれる本。
全編にわたり、生い立ち・映画・テレビ・現代日本・アフリカ、などに関してモノローグ的に思うところを語ってゆく。本の体裁はフランス人記者によるインタビューということになっていますが、ほぼ独白本と言ってよいと思います。ところどころに記者の目から見た「KITANO」の解説が入ります。
正直、個別のテーマに対する考え方については、それは違うんじゃないか、と思う箇所もありました。でも、そういうことじゃないんです。当代随一のコメディアンでテレビスターで映画監督で俳優で、etc、etc...カリスマとかセレブとかそういう言葉ですら表すことができない(と私は思っています)、「たけし」という存在が、何を考え何に心を動かしているのか、それをこういう口述筆記に近い形で表すこと自体に大きな意味があると思います。
コンテンツとしては、戦場のメリークリスマスからわりと最近までの(残念ながらアウトレイジは含まれていない)、演じたor監督した映画が一連の流れとして理解できることが良かったです。