スプーンと元素周期表: 「最も簡潔な人類史」への手引き

  • 早川書房
4.02
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本棚登録 : 220
感想 : 27
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  • Amazon.co.jp ・本 (446ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784152092212

作品紹介・あらすじ

壮大な歴史絵巻ももとは電子の席取り合戦から!?化学と元素周期表に萌えるひと必読!全米ベストセラーにもなった出色のポピュラー・サイエンス。

感想・レビュー・書評

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  • 元素にまつわる裏話を紹介する軽妙な科学史の本。

    表題の「スプーン」は、周期表上でアルミニウムの下に位置するガリウムを用いたいたずらに由来する(原題は”The Disappearing Spoon”)。ガリウムは融点が低いため、ガリウム製のスプーンを紅茶に添えると、ティーカップの中でスプーンが消えてしまい、客がびっくりするというわけだ。ガリウム製のスプーン、なんてのがどのくらい手に入りやすいのかはよくわからないが、このいたずらの模様はYou Tubeで見ることが出来るらしい。

    ただ、本書は、こうした表題から想像されるように元素そのもののトリビアを挙げているというよりも、人間ドラマを描いた部分が多い。
    元素発見にまつわる順番争いのドロドロや、放射性同位体に関する誤解、アクの強い化学者の話など、著者独特のシニカルでユーモラスな筆致で語られている。
    キュリー夫人が実は魔性の女だった!?とか、ラザフォードがうまく立ち回ってケルヴィン卿のご機嫌を取ったとか、あまりに軽くコミカルに描かれていてほんまかいなと思う部分もある。が、科学者たちの駆け引きを見てきたように身近に感じさせる語り口は、ちょっとゴシップ誌を読んでいるようでもあり、楽しさはある。
    南極探検のスコット遭難に関する話や、タイムリーなキログラム原器の話などは興味深かった。

    数式・図をほとんど使わずに(いや、もちろん周期表自体は収録されていますが)化学的背景の説明をするというのも相当チャレンジングだったのではないかと思う(でも、d軌道、f軌道の話など、図を使った方がわかりやすいのでは、と思う部分もあり・・・)。


    *第10章、サルファ剤発見の場面で、発見者ドーマクが死にそうな娘に注射するのが「血のような色をした血清」っていうのは変じゃないかなぁ・・・? 血清が赤いってどういうこと? サルファ剤であるプロントジル(赤色)と取り違えているのでは? それとも血清にサルファ剤を溶かしたってこと・・・? 原文はどうなっているのか、ちょっと気になる。
      **原文、当たってみた。"...began injecting her with the blood-colored serum"だった。・・・うーん。やっぱり血清にプロントジルを混ぜたってことなのかな・・・? 血清療法の血清にプロントジルを混ぜてみた、ということだろうか。

  • 宇宙に存在する元素の9割が水素で、約1割がヘリウムで。元素周期表を形で捉えたり、安定性で模擬化した地図で捉えたり、一つ一つの元素にまつわる歴史、エピソードが満載で科学的かつ楽しみながら読める。多少難しい話もあるが、読後、必ず知識が増えて世界観が変わる。道も、空気も元素によって構成されている。薬も、ウイルスも。

    健康のために銀を飲み続けて色が変わった人の話とか、ヘリウムのような貴ガスの話。シリコンバレーではなく、ゲルマニウムバレーと呼ばれてもおかしくなかった歴史や、酸素といつも結合していてシリカと呼ばれる二酸化ケイ素。シリカと呼ばれる。とりわけ面白かったのは、金属のガリウムは30度近くで溶けるが、見た目はアルミニウムに似ているから、それを使ったスプーンを使っての悪ふざけ。スプーン曲げならぬスプーン溶け。

    化学の知識が増えれば、世の中の理屈が判るようになるのだが、専門として履修しない限り、理解せぬままスルーしてしまう。特定の元素は馴染みがあっても、全く生活に登場してこない元素の方が多い。今まで元素に苦手意識を持ってきたいわゆる文系の人にもオススメしたい一冊である。

  • 周期表の発明、周期表を埋める元素の発見にはじまり、科学史に残る発見がどのように為されたのか、政治的駆け引きに至るまで興味を惹く筆致で書かれていて面白かった。

  • サイエンス

  • 物理学で優等学位を取った筆者だが,研究よりも身についたのは,先生が授業を脱線して話してくれた科学の裏話の数々だった!元素周期表を「人類学上の奇跡」として愛する筆者が、あらゆるものを生み出す100余りの元素一つひとつについてのエピソードを紹介した本。

  • テーマ史

  • 文字がびっしり詰まった本だったが、ようやっと読了。元素と周期表の説明やエピソードが満載。多少専門的な内容も入ってくるが、科学者たちのどす黒いエピソードも豊富で、私のようなバリバリ文系の人でも十分読める内容になっている。題名になんで「スプーン」が入っているのか不思議だったが、本文を読んでみて納得。科学者が良く行うある元素を使ったイタズラに関係してた。と思って本書の原題を見てみてたら「Disappearing Spoon and other true tales (以下長いので略)」だったので、スプーンネタは著者も結構重視してた模様。本書は「世界で一番美しい元素図鑑」、文部科学省発行の「元素周期表」と併せて読むとより一層理解が深まります。
    113番元素の命名権を日本が得た今、ちょっとでも元素に興味を持った方はぜひぜひ読んでみてください。

  • A

    素晴らしい一冊。

  • 面白い。科学の本なのに一気に読ませる。多少散漫な印象はあるけどもう一度ゆっくり読みたいと思う。第5部は蛇足感を感じる。

  • 90ページまで読んだところ

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著者プロフィール

ニューヨークタイムズのベストセラー『The Bastard Brigade』『空気と人類:いかに〈気体〉を発見し、手なずけてきたか(白揚社)』(ガーディアン誌のサイエンスブック・オブ・ザ・イヤー)『The Tale of the Dueling Neurosurgeons』『にわかには信じられない遺伝子の不思議な物語(朝日新聞出版)』『スプーンと元素周期表(早川書房)』の著者。また、PEN / E. O. Wilson Literary Science Writing Awardの最終候補に2度選ばれている。著作はThe Best American Science and Nature Writing、ニューヨーカー、アトランティック、ニューヨーク・タイムズ・マガジンなどに掲載され、NPRのRadiolab、All Things Considered、Fresh Airでも紹介されている。彼のポッドキャスト「The Disappearing Spoon」は、iTunesのサイエンスチャートで1位を獲得した。ワシントンD.C.に在住。

「2023年 『アイスピックを握る外科医』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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