琥珀の眼の兎

  • 早川書房
3.63
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本棚登録 : 152
感想 : 19
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  • Amazon.co.jp ・本 (382ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784152092526

作品紹介・あらすじ

陶芸家のエドマンドは東京の大叔父の部屋で出会った264の美しい根付に魅了された。やがて根付を相続した彼は、その来歴を調べはじめる。根付を最初に手に入れたのは、彼の曾祖叔父だった。19世紀後半に日本から輸出された根付はマルセイユに上陸して、美術蒐集が趣味の曾祖叔父の手に渡った。根付たちは華やかなりし頃のパリでプルーストやルノワールに愛でられ、その後、ウィーンの大富豪の親類の手に。だが、ナチスの魔の手が一族と根付に忍びよってくる-。根付の壮大な旅路を追いながら、エドマンドは一族の哀しい歴史を知る。全英を絶賛の渦に巻き込んだ傑作ノンフィクション。「エコノミスト」紙、「サンデー・タイムズ」紙コスタ賞ブック・オブ・ザ・イヤーに選出、王立文学協会オンダーチェ賞受賞。

感想・レビュー・書評

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  • かつてウィーンやパリで栄華を極めたあるユダヤ人一族の末裔が、大叔父から相続した根付を巡り、一族の隆盛と悲劇の歴史を追うもの。19世紀末頃の勃興期から第一次、第二次大戦を経て、ほとんど全ての財産や友人を失う。日記や親戚へのインタビューから様々な史実が明らかになり、抑えた筆致ではあるが国や人種差別への怒りを感じる。最終的に根付は日本に永住を決めた大叔父の手で戦後間もない日本に持ち込まれる。そこでの友情にはホッとさせられる。戦争や人種差別は心底恐ろしいということを再確認。

  • 根付。 おもしろかったけど、ちょっと複雑すぎた。

  • 欧米各国での授賞という事と根付けの表紙とで根付けの蘊蓄がわかる欧米人が語る根付けの種集のお話かと思い3年ほど前に買った本だが、読み始めてわかったのが中身が全く違ったという事だ。ユダヤの大富豪エフルッシ家の末裔である陶芸家の著者が相続した根付の来歴を辿るために、その所有者達であった自分の先祖の血筋をたどりその様子を描いたノンフィクション小説である。ユダヤ人の才覚をもってしてパリで栄華をつかみながらもウィーンにおいて当初贅沢の極みの世界からナチスの横暴でもってすべてを失った家族、アメリカに逃れていた一人が敗戦後の東京へ。次々と寄せる歴史の荒波に呑まれながらも奇跡的に一族の中で受け継がれてきた根付けのコレクションを巡るお話に引き込まれ一気に読み進んだ。ただいつも翻訳物のときに思うがこの本も翻訳のクオリティは高いとは言えず日本語としては読みずらくはあったのが少し残念だが、その点を差し引いても読む価値のある本だと思う。20世紀のパリやウイーンの事を掘り下げて知る事の出来るのも楽しめるポイントだ。そんな久しぶりに出会った楽しめるノンフィクション物語を読むBGMに選んだのはEnrico PieranunziIの"Live in Japan". 知る人の多くないアルバムだと思うがなかなかです。

  • もんのすっごく読みたい本です。
    期待大です。
    (これで、期待はずれだったら悲しいなあ 涙)

  • 内容はともかくとして、こんな角度からウィーンを知れることはそうそうないと思うので、作者に感謝。
    ウィーンに住む大富豪のユダヤ人家族の持つ財宝のうちの一つである日本製根付のお話。
    一族についての話なのか、根付についての話なのか、世界史についての話なのか、自分でもわからなくなってきたと作者が書いていたけど、まさにその通り。
    ある一族が持つ財宝から世界史が読み取れるというすごい作品。
    ユダヤ人差別に関する問題については、詳しく勉強もしていないので私に語る資格はないけれど、確かに、自分たちと違う風習を持ち・違う宗教で・違う見た目で、よそからやってきた人たちが、これだけの莫大な富を得ていたら、なかなかそれを認めるのは難しいのかもしれない。
    途中からノンフィクションとは思えなくなってきたけれど、これもまた事実。
    けれど、目の前でルイ16世の机が窓から投げ落とされるっていったいどんな気持ちだろう。読んでるだけで胸が張り裂けそう。
    暴動や革命もわかるけど、お願いだから歴史的価値のあるものに傷をつけないでほしい。

    決して「面白い」わけでも「読んでて止まらなくなる」わけでもないけれど、貴重なウィーン本。

  • これは、明治維新後、横浜港からジャポニズムブームに沸くパリへ、そして、ウィーンを経て第二次世界大戦後の日本に舞い戻ってきた根付264点の物語である。と、同時に、それはオデッサ出身のユダヤ人財閥エフルッシ家の汎ヨーロッパでの繁栄と二度の世界大戦での没落の物語でもある。さらに言えば、それは20世紀という時代を小さな民芸品を通じて語ったもの哀しい歴史の物語である。

  • 美術や世界史にあまりなじみがないこともあり、
    また文章もどちらかというと読みづらく、
    ようやく最後までたどり着けたという感じで、
    それほど感銘を受けませんでした。

    しかしながら、ナチスがユダヤ人一家の財産を根こそぎ奪っていく中、
    根付けが一家のメイドの機転で強奪の難を逃れ、
    やがてふるさとの日本に戻ってくるくだりは非常にドラマチックで
    感動しました。

  • ルノワールの有名な絵画「舟遊びをする人々の昼食」に不釣り合い描かれたシルクハットの男。プルースト「失われた時を求めて」の主人公の男。そのいずれのモデルになったのが、当時、ロスチャイルド家と並んで名高かったユダヤ人資産家一族のシャルル・エッフェルシであった。美術品の蒐集家であり、印象派のパトロンとして知られたこの男は、日本の工芸品である根付の一大コレクションを持っていた。

    19世紀後半にパリに渡った根付は、ウィーンにてユダヤ人を巡る歴史的な嵐に翻弄され、一族の資産としては唯一ゲシュタポの目をかいくぐり、戦後の日本に戻り、そして今、著者のいるイギリスに再び渡る。著者は、シャルルの一族の末裔である芸術家だが、なぜその根付が自分の手元にあるのか、親族の証言や古文書を元に、根付の由来と、一族の歴史を紐解いていくドキュメンタリーだ。

    物語は、入り組んでいて、同じような名前が何回も出てきて、やや冗長で、読みづらいのだが、それでも著者が費やした、失われた歴史を掘り起こした膨大なエネルギーを感じて、どんどんと引き込まれてしまった。資産家が蒐集した美術品が再び四散していくこと、戦乱で国を失うこと、そして人の歴史を辿り伝えていくこと、とは何か、考えさせられた。

  • 資料ID:21106356
    請求記号:936||D

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