経済成長って、本当に必要なの?

制作 : John de Graaf  David K. Batker 
  • 早川書房
3.50
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感想 : 8
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  • Amazon.co.jp ・本 (393ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784152093714

作品紹介・あらすじ

飽くなき成長の追求は私たちを幸せにするのか? 今こそGDP至上主義と訣別し、真に豊かな社会を目指そう。ドキュメンタリー作家と経済学者によるポスト3・11時代の必読書。枝廣淳子氏推薦。

感想・レビュー・書評

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  • 経済が成長すること≠私たちの幸せ、であり、そもそも経済とはなんぞや、という問いから、アメリカの実情を考える本。日本にも共通するところはある。

    まえがきにもあるように、本書はあくまでも全体図。これからの世の中を考えて行く上で、根底の考え方として経済がなんのためにあるか、その本来の在り方と現在、未来を考える。

  • amazonでタイトル買い。まさに、いま、みんなが思っていることだと思う。『経済成長って、本当に必要なの?』

    現代は新自由主義が跋扈し、どこの会社も、どこの国も、お金のモノサシを当てて利益を確保に動く。ヘッジファンドなんて、その最たるものじゃないだろうか。そこに違和感を覚えながらも、では、世の中一般で議論されていることってどうなのかと考えてみると、「経済成長」が大前提だ。成長し続けるということは、どういうことなのだろうか。誰だって、昨日よりは今日、今日よりは明日は、少しでも良くなっていることを望む。だけど、経済が成長し続けることって、一体何なのだろう。世界にはお金が有り余っている。次の成長先を狙って、そこに金が集中する。だけど、ボクたちはほしいものって本当にそんなにあるのだろうか。もちろん、経済発展途上国は、物質的に豊かになろうとする。でも、先進諸国の生活は、これ以上、成長を続ける必要があるのだろうか。

    いやいや、先進国だって、所得格差が広がり、生活の元手であるお金を稼ぐことさえできない人が増えているというかもしれない。でも、経済成長をし続ける中で、貧富の格差が広がり、日々の暮らしに困る人がいるなんて、おかしくないか? そんな考えは、たぶん、誰でも考えたことがあるのではないだろうか。

    本書の結論は、結局、最後の章に集約される。その問いはこうだ。

    「そもそも、経済とは何のためにあるのか?」

    ボク自身は、生活のためだと思うし、生きるために経済があるのだと思う。だけど、いまの世界はそれを凌駕し、利益を最大化するために存在している。そこに乖離がある。

    著者は続ける。「私たちだけでなく、子供や孫やひ孫たちの生活の質は、今の私たちがどんな経済を築くかに大きく関わっている。働き過ぎ、楽しみを切り捨て、地球を汚し、有害食品を口にし、がんに侵されながらGDPを増やす暮らしはもうたくさんだ。働きすぎをなくし、もっと人生を楽しみ、友人を増やし、そのためのゆとりを持ち、ものはあまり買わず、環境を汚さず破壊せず、ものは増やさず、健康で長生きを楽しみ、意義ある人生を送るほうがいいのではないだろうか」。

    この意見に同意する人は多いだろう。著者は「21世紀の経済」が必要だという。そして、市民として政策に関心を持ち、積極的に行動することで、世の中を変えることが必要だという。

    著者の意見は本当の最後のフレーズだろう。「経済とは何のためにあるのか? それは、人々の”生命”、”自由”、”幸福”のためでなくて何であろう。私たちは、最大多数のための最大幸福を長期に渡ってもたらす経済をともに作り上げることができる。それこそが21世紀の経済であり、新たなアメリカンドリームへの道である」と。

    だけど、その具体的方法をもっと議論しなければならない。そして、グローバル化する経済と企業と、政策を行う国家との乖離が生じていることも理解しなくてはいけない。「最大対数のための最大幸福」はポピュリズムに陥る可能性だってある。

    かつて、1970年にローマクラブが設立され、現在のままで人口増加や環境破壊が続けば、資源の枯渇や環境の悪化によって100年以内に人類の成長は限界に達すると警鐘を鳴らした。破局を回避するためには地球が無限であるということを前提とした従来の経済のあり方を見直し、世界的な均衡を目指す必要があると論じた。だが、結果はどうであったろうか。そんなものは無視されて、欲望のままに、利益最大化をするために経済は動いているのが実情だ。

    総論賛成、各論要議論、というところでないだろうか。

  • 経済成長が、幸せをもたらす。そんな神話が壊れてきている。貧富の差の拡大、長時間労働、物質的に豊かでも精神的には満たされない暮らし、金融危機、環境破壊など、経済成長だけでは、解決できない課題が、山積みとなっている。
    功利主義者ベンサムは「最大多数の最大幸福」を経済の本当の目的であると主張したが、現在は「最大幸福を、最大多数に、できるだけ長期間にわたってもたらす」ことよりいっそう重要となっている。
    経済成長が暴走させないようにしっかりと見ていきたい。

  • 資本主義経済の限界については多くの書籍に書かれていて、自分自身でも感じています。
    「では次に来るのはどんな世界なのだろう?」という疑問があり、関連する図書を継続して読んでいます。
    この本は、アメリカ人のドキュメンタリー番組の制作等に関わっている作家と経済学者による共著。
    そもそも経済とは何のためにあるのか、という基本的な問いかけを読者に投げかけた上で、まずはGDPという現在の「尺度」の問題点を指摘します。
    その上で、「最大幸福を」「最大多数に」「できるだけ長期間に」提供するという視点で、現在のアメリカという国の課題を挙げて、今後どうしていくべきかという提案をしています。
    全体を通じて、アメリカという国の問題をアメリカ国民に問いかけるような構成になっていること、そして提案よりも課題提起にページがさかれているので、日本人の僕には当事者意識が持ちづらいように感じました。
    しかし日本という国にも共通する問題も多く、特に資本について「物的」「自然」「金融」という形に分けてとらえるという考え方は参考になりました。
    世界を牽引するアメリカという国も、多くの課題があり、多くの悩みを抱えているのですね。
    この分野については、継続して勉強していきたいと思います。

  • 一・二章では、現代のGDPに対する過剰な偏重への警鐘が述べられており、これに関しては大変勉強になりました。
    (自分が勉強不足なだけかもしれないが)経済学のテキスト等でも、このようなGDPのマイナス面は教えられていないように思う。
    また、一般的な風潮として、そうした長短をよく知らずにGDPがもてはやされる状況を危惧します。

    一・二章からの一部抜粋。
    ・「国家の幸福を、国の収入を尺度に推し測ることはできない」
    ・「(GNP/GDP)これらの指標は、私たちの暮らしを悪くする無数のことがらを、すべてプラスとして計算する一方で、暮らしを豊かにしてくれるたくさんのことがらはまったく勘定に入れない。」
    ・「政策は、GDPを上げることではなく、社会全体の幸福を高めることを目標にしなければならない。」
    ・「現在の市場では、労働者は投票用紙が1枚とすれば、CEOたちは262枚手にしているようなものだ。」
    ・「モノが豊かになるのではなく、自分自身がもっと豊かになる。」
    三章以降は、主にアメリカ経済・経済政策に関しての内容であり、日本においても参考になるかもしれませんが、私としてはあまり興味を引かれませんでした。

    著者の主張としては、「そもそも、経済とは何のためにあるのか。」という原点を問い直すことであり、その答えとして「最大多数のための最大幸福を長期にわたってもたらす経済」を示している。

    一定の物的豊かさを得、価値観の多様化が進む現代では、もっとみんなの幸せを、そして、何が幸せに繋がるのか、ということをじっくり考えていかなければならない時期にきているのだと思う。

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