- Amazon.co.jp ・本 (215ページ)
- / ISBN・EAN: 9784152094452
作品紹介・あらすじ
卒業式に向かっていたはずの中3少女たち。目覚めると奇妙な貼り紙が。「ドアの開けられた部屋の数をn、死んだ卒業生の人数をmとする時、n-m=1とせよ」――乙女たちの超脱出ストーリー。
感想・レビュー・書評
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>卒業式会場の講堂へと続く狭い通路を歩いていた中3の仁科羊歯子は、気づくと暗い部屋に寝ていた。隣に続くドアには、こんな張り紙が
>>卒業生各位
>>下記の通り卒業試験を実施する。
>>【ドアの開けられた部屋の数をnとし死んだ卒業生の人数をmとするとき、n-m=1とせよ。時間は無制限とする】
>羊歯子がドアを開けると、同じく寝ていた中3女子が目覚める。またたく間に人数は13人に。
扉を開けるたび中3女子が無限に増えてゆく、ホラー(グロ)SF、というジャンルでいいのか、SFシリーズのJコレクションの一冊です。
少年漫画で長らく流行っているデスゲーム物、の皮を被った不条理小説。
表題作「少女庭国」と後半の「少女庭国補遺」でなっており、表題作は言うなれば普通の中学生たちの普通の(?)デスゲーム。殺し合いをするなんて思いもつかない13人の選択。
圧巻は「補遺」。ここがめちゃくちゃ面白かった。
補遺というからには13人の前日譚やら後日談やらやるのかと思ってめくると、一人あたり数行で新たな卒業生たちが、目覚めた後に殺したり殺されたり自殺したり一般的な(?)行動を延々と繰り返したのち、
以下ネタバレ
19人目が2千人の卒業生を起こして回り(最後には一人を残して全滅し)、55人目にして食糞・飲尿を経て食人に発展し、開拓に成功して資源(新たな卒業生を順次目覚めさせ奴隷化もしくは食料とする)開発を進め無限の石の回廊に大帝国を築くにいたるという。
えー、それはムリがあるのでは、と思ったら著者の術中であることに間違いなく、無限の試行回数の中には大帝国を築く回があっても不思議ではない、というのがSFらしいところ。
石の壁と鉄の扉、あとは無限に湧き出る女子中学生の衣服とポケットの中身と血肉骨しか資源の無い(つまり水がない)世界で数十年だか数百年続く文明が興せるかというと、どうなの。でも明らかに無理な状況を設定していることは自明なので明らかに無理と思わせるための設定です。
何もない迷宮で文明をというと「ギャルナフカの迷宮(小川一水)」が思い起こされ、無限でグロというと「最後にして最初のアイドル (草野 原々)」の雰囲気が凄く近い。
ラストでややメタ的に示唆されるように、色んなパターンを書いてみましたという実験小説かな。
ラストの爽やかさがまた、たまらない。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
中学の卒業式に向かう途中、少女は2つのドアしかない部屋で目覚める。開けられる方のドアを開けると同級生らしき少女が。それが無限に続く。「ドアを開けた数-死んだ卒業生=1」がこの奇妙な状態から逃れる条件の中、様々な条件に対する挑戦が描かれる。短編の「少女庭国」は女生徒達らしい逃避の上での収束がリリカルだが、長編の「補遺」での思考実験が圧倒的で置いていかれた。3行で終わるデスバトルが続いたかと思うと生存するために人肉食が始まったり、さらに豪快な方向に発展して文明が発生したり。ついていける人凄いの一言だ。
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https://motoietchika.hatenablog.com/entry/2018/12/15/210216
ブログに長文レビュー...https://motoietchika.hatenablog.com/entry/2018/12/15/210216
ブログに長文レビュー書きました。なぜこの少女たちの断片的な物語は際限なく繰り返されるのか、その「結末」の意味とは……といったところを主に読み解いています。というのを口実に、グリッドマンやANEMONEの話などをしました。2018/12/22
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38:現代版、ファジーな耽美のようで少女小説のようでホラーのようでSFのようで。面白がっちゃイカンと思うのだけど、楽しく読めました。が、このいかんともしがたい不条理感! なんだかモヤモヤが拭えない……。
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壮大なる思考実験の結果と言う感じ。いろいろとすごい。
萌え要素込みでアニメ化しないだろうか。でも怖いから見たくない気もする。 -
レーベルがSFなので、カテゴリSFにしてみたんだけども。
どっちかつーと、ホラーじゃないかと。
不条理だし、何故そうなったのかは明かされないし。
文明の発展を観察するっていう趣旨はSFだと思うけど、個々の事例が余裕でホラーです。
悪夢見そう………。 -
唐突に。「CUBE」って洋画を思い出しました。読んでいてこの意味も出口も無い無差別的な(この小説では少女限定ですが)人選、実は何もしない動かないことが正解(なのかもしれない映画も小説も)というより寄り添うことが。仲間を集いどんなに突き進もうと栄枯衰退は変わらず違う場所で同じ足踏みを繰り返している。中心的な富裕層と端に広がる貧困は今の世界だって変わりはしない極端だが縮小図に思えなくもない。「CUBE」も〔少女庭国〕もラストは明確に書かれていないいや補われていない私たちには知る術が無い。