- Amazon.co.jp ・本 (576ページ)
- / ISBN・EAN: 9784152096357
感想・レビュー・書評
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これは読み応えがあった。
社会論、文化史、はたまた考現学、ジャンル分けの余地はいろいろあり得ようが、シンプルにゲームの発達史として名著と言って良いと思う。
そもそもゲームという遊びを分析するための枠組みとして、著者はフランスの批評家ロジェ・カイヨワの4分類、すなわち競争(アゴン)、運(アレア)、模擬(ミリクリ)、眩暈(イリンクス)を提示する。
たしかに、勝ち負けを競い、そこに運不運がからみ、ごっこ遊び的役割の演技(模擬)があり、爽快感や操作の気持ちよさ(めまいの感覚)がある、これはゲームそのものの特徴としても優れた考察である。
これらを再現するゲームを作るなかで、コンピュータの黎明期から現代に至るまで、マーケットやテクノロジー、さらには政治や経済で何が起きていたのか、の通史的解説は唸るほどのコクの深さ。
米国でコンピュータ開発の一環で「ポン」(要するにテニスゲーム)が誕生したのがテレビゲームの元祖というのは比較的知られているが、その背景のピンボール、ややこしいところではナチス時代のユダヤ人の苦難や満州との関係までもが浮かび上がる。
しかしやはり私が同世代的に楽しかったのは、スターウォーズのヒットを受けて「ブロック崩し」を改良したスペースインベーダー(1978)から始まり、中沢新一をして「神話性の獲得」と言わしめたゼビウス(1981)、さらにはファミコン、スーマリ、ドラクエあたりまでの1980年代をめぐる圧巻の叙述。
家電としてお茶の間に入り込むためのマーケティング的な工夫からテクノロジーの制約からくる色使いや動きのイノベーションまで、とにかく楽しくて仕方ない。
パソコン世代ならハイドライドやドラゴンスレイヤー、ザナドゥなんて名前にも胸アツであろう。
私自身が最近のゲームを知らないので後半は純粋なテクノロジー発展論のお勉強読書になってしまったのが残念。
なかなか分厚いし、一部の書評にある通りやや衒学的で生硬な文体ではあるので読みやすくはない、が、おもしろすぎるので止めることはできない。そんな本。詳細をみるコメント0件をすべて表示