情報と秩序:原子から経済までを動かす根本原理を求めて

  • 早川書房
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  • Amazon.co.jp ・本 (288ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784152096838

感想・レビュー・書評

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  • MITの「メディアラボらしい」本でした。仮にこの本の著者がわからず読んでも、「メディアラボ」の人が書いたのでは?と思わせるような臭いを発していました。本書は通常の経済成長・経済発展理論の本とは全く異なり、経済学、物理学、情報学のような複数の分野にまたがる非常に興味深い視野を提供してくれています。あえて経済学との関係で言えば、ヒダルゴ氏も述べているように、産業連関表を確立した経済学者ワシリー・レオンチェフのエッセンスを持っていると言えるかもしれません。経済発展理論の正統派(ソロー、ローマー、ルーカスの流れ)は、マクロの集計値(GDP等)を使って経済成長を説明しようとしますが、レオンチェフの産業連関表は一国経済の産業の多様性に着目し、その連関の強弱こそが違いを生み出している(経済波及効果の乗数の大小を決める)という点を強調します。その意味でヒダルゴ氏の「経済複雑性指標」も一国経済内の製品の多様性、そして各製品の普遍性に着目しているという点で、レオンチェフと思考の根っこではつながっているという印象を受けました。

    本書を読んで心に浮かんだ疑問は、現在進行中のデジタル革命は、この複雑性指標にどんな影響を及ぼしているのだろうか、というものです。テスラ社による電気自動車は、自動車のもつ複雑性をガラッと変えてしまいました(おそらく複雑性を低めたし、関係する業界、専門性をガラッと一変してしまった)。ヒダルゴ氏のフレームワークで言うと、自動車の複雑性が低下しているのであれば、自動車が「普遍性」を高めているだけであって、今後は別の製品・サービスがより複雑な製品の地位を引き継ぐだけである、ということなのかもしれません。本書、書かれていることが正しいのかどうかは脇に置いておいても、いろいろと考えさせてくれるという意味で大変気に入りました。

  • 物理と情報理論から経済社会構造の枠組みを探るアイディア。
    エントロピーが増大していく中で、なぜ経済や社会が発展しているのか。それは物理的に安定した個体ができる環境で、個体が非平衡的運動を様々に生じさせるような温度環境(地球のような)がある。そこに情報が蓄えられ、さらに様々な個体が生じる。そしてそれらを促すような計算が出来る主体(分子、生物)が生じることが前提条件。
    さらに経済社会を生み出すには人、社会のネットワークが情報をより多く保持し、計算していかないと複雑な個体を生み出すこと8できない。車を生み出すには多くに人のネットワークとそこに蓄積されるノウハウが必要。これは人を集めたからといって生じるわけではなく、各人のノウハウと社会としてのノウハウの蓄積が必要である。これを図るのが経済複雑性で、より多くの製品を作ることができているか、という観点で図る。

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