書架の探偵、貸出中 (新☆ハヤカワ・SF・シリーズ 5061)

  • 早川書房
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  • Amazon.co.jp ・本 (272ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784153350618

作品紹介・あらすじ

図書館に収蔵され、書架に住むE・A・スミスは、推理作家の生前の記憶を持つ〈複生体〉。母親と暮らす愛らしい少女に貸し出された彼は、何年も前に姿を消した彼女の父親探しを頼まれる。そんななか彼は自身の古い〈版〉の死体を発見する!? 巨匠の未完の遺作

感想・レビュー・書評

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  • 2023年9月新ハヤカワSFシリーズ刊。シリーズ2作目にして最終巻。というかジーン・ウルフさんが執筆中に逝去されたので推敲前の未完の遺作。推敲前のお話というのは始めて読みました。興味深い。というか、それが、意図なのか誤りなのかわからないところに面白さある。ホントはどういう物語に仕上がったのかは永遠にわからないのは残念。二次創作で続編の完結編が出るかも!。

  • 推理作家E・A・スミスの復生体[リクローン]である「私」は、他2名のリクローンと共に突如他の図書館へ移される。新しい街でチャンドラという少女に借りだされ、彼女の母親から「失踪した夫を探してほしい」と依頼された「私」は、海上で消えたというその男の行方を追って冒険家のリクローン、オードリーを連れて船に乗り込むが……。ジーン・ウルフの遺作となった、『書架の探偵』の続篇。


    作者が亡くなって未完というのが無念。原文は長篇として整備する前の文章なようで、伏線なのか矛盾点なのか判断がつかない箇所に訳註がついている。展開も飛び飛びで、特に後半、前作からのびっくりガジェットである星間移動ドアが再登場して刑事となんやかんやするあたりから頭がこんがらがった。
    引き続き語り手を務める「私」はだいぶ人間味が増していて、チャンドラがうろちょろするなかでオードリーとベッドに入る機会を窺ったり、氷河から蘇った美少女に性欲を感じたりするようになっている。登場する女性リクローンたちも料理研究家、ロマンス小説家、海洋冒険家と個性の違いが魅力的で、ざっくばらんな話し方をする彼女たちに推理作家らしいもったいぶった話し方しかできない「私」がコンプレックスを抱くのが面白い。
    ただ、事件にスミスの著書が絡んでいた前作に比べ、今回は人間の探偵を雇う余裕がないから推理作家のリクローンを借りたという設定になっていて、「私」が選ばれた必然性が薄い。でも本当だったら結末で明かされる繋がりがあったのかも。
    もうジーン・ウルフの新作は読めないと思うととても寂しいけれど、私にはまだまだ読んでない作品がたくさんあるし、本書も含めて彼の作品は一度読んだだけでは読みきれない謎がたくさん隠されているから再読もしがいがあるはずだ。最後まで楽しい問題を書き残していってくれてありがとう、ジーン・ウルフ。

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著者プロフィール

1931年、アメリカ・ニューヨーク生まれ。兵役に従事後、ヒューストン大学の機械工学科を卒業。1972年から「Plant Engineering」誌の編集に携わり、1984年にフルタイムの作家業に専心するまで勤務。1965年、短篇「The Dead Man」でデビュー。以後、「デス博士の島その他の物語」(1970)「アメリカの七夜」(1978)などの傑作中短篇を次々と発表、70年代最重要・最高のSF作家として活躍する。その華麗な文体、完璧に構築され尽くした物語構成は定評がある。80年代に入り〈新しい太陽の書〉シリーズ(全5部作)を発表、80年代において最も重要なSFファンタジイと賞される。現在まで20冊を越える長篇・10冊以上の短篇集を刊行している。

「2015年 『ウィザードⅡ』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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