- Amazon.co.jp ・本 (240ページ)
- / ISBN・EAN: 9784160901261
作品紹介・あらすじ
降伏か、本土決戦か。8・15をめぐる攻防が始まる! 半藤一利の傑作ノンフィクションを、SF伝奇漫画の巨匠・星野之宣が鮮烈コミカライズ。
敗色が濃い昭和20年夏。連合国によるポツダム宣言をめぐり、受諾派と徹底抗戦派との間で鈴木貫太郎内閣の意見は真っ二つに分かれていた。無条件降伏を主張する米内海軍大臣と東郷外務大臣に対し、阿南陸軍大臣と梅津参謀総長は「国体護持」の堅持を訴え、一歩も譲らない。
広島への原爆投下、ソ連の参戦と徐々に追い詰められるなか、いよいよ昭和天皇の“聖断”を仰ぐことに。一方、降伏を認めない陸軍将校らによるクーデター計画が、水面下で進んでいた。
すでに二度も映画化されている終戦を巡るドラマを、コミカライズ版では幕末の「尊皇攘夷」思想から説き起こす。天皇を切り札に討幕を進めた薩長は、明治維新後も陸海軍を掌握。統帥権の名のもとに、軍を議会や内閣から独立した存在であり続けさせた。いわば“玉”を抱え込んだのだ。
皇太子時代に第一次大戦の戦跡を訪れた昭和天皇は、戦争の悲惨さを痛感する。だが、大陸進出を押し進める軍部の膨張は歯止めがきかない。満洲事変、二・ニ六事件、日米開戦……連綿と続く軍部と天皇との緊張関係を軸に、終戦の日のドラマが幕を開ける──。
作画を担当するのは、漫画家の星野之宣。『ヤマタイカ』『星を継ぐもの』で星雲賞コミック部門を、『宗像教授異考録』で文化庁メディア芸術祭マンガ部門優秀賞を受賞。日本人として初めて、大英博物館で原画展を開催した。
感想・レビュー・書評
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感想は下巻で
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教科書では習わない昭和史を学ぶことができます。
終戦の日に読んでほしい一冊です。 -
原作は高校時代に読んだ大宅壮一編『日本のいちばん長い日』(現在は半藤利一著となっている)。これをSF・伝奇漫画の巨匠星野之宣がコミカライズしたというので早速拝読した。原作はドキュメンタリータッチだが、星野作品はそれを踏襲しつつも独自の視点を加味する。すなわち「尊王攘夷思想」と「南朝正統論」の影響である。クーデターの首謀者である畑中健二少佐は吉田松陰に私淑し、畑中を含む首謀者の多くは南朝正統論を唱える歴史学者平泉澄の塾生であった(昭和天皇は北朝の末裔である)。彼らが絶対視する天皇とは連綿たる皇統の継承者たる抽象的な天皇であり、もし具体的な天皇が意見を異にすればその変更を求め、場合によっては別の正統な天皇に挿げ替えることさえ辞さない。これでこそ、『昭和天皇独白録』の次のお言葉が信憑性を帯びてくるのである。
「陸海軍の兵力の極度に弱つた終戦の時に於てすら無条件降伏に対し『クーデター』様のものが起つたのだから、若し開戦の閣議決定に対し私が『ベトー』を行つたとしたならば、(略)国内は必ず大内乱となり、私の信頼する周囲の者は殺され、私の生命も保証出来ない、それは良いとしても結局狂暴な戦争が展開され云々」
そのほか興味深い「漫画家の想像」が散りばめられているが、最後に触れておきたいのは鈴木貫太郎首相が自決をしない理由として挙げている「恩人」のことである。その恩人は二・二六事件で鈴木を襲撃し重傷を負わせながら、とどめをさすことをしなかった。作品中に名前はでてこないが、もちろん歩兵第三聯隊第二大隊第六中隊長安藤輝三大尉である。しかしその恩人さえ、昭和天皇を廃し敬愛する秩父宮殿下を奉戴することを夢見ていた。歴史はなんとも複雑なものである。 -
群像劇的な淡々とした筆致が終戦の日の激動を緊迫感を表している。「尊皇」と「攘夷」を伏流した切り口にも惹かれるものがある。
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上下巻。映画と違い、昭和天皇を主役に据えている。こんな題材にも星野之宣ならではifがちりばめられているのが面白い。