屈辱ポンチ

著者 :
  • 文藝春秋
3.42
  • (16)
  • (27)
  • (66)
  • (4)
  • (3)
本棚登録 : 231
感想 : 23
本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています
  • Amazon.co.jp ・本 (180ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784163181707

作品紹介・あらすじ

魂のなかで沸騰しているもの!わたしはなにも呪えなかった!'98年最後の話題作を収録。

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  • 売れない脚本家が映画プロデューサーからの突然のオファーにより、ロケハンへ出発。東京にほど近い場所で出会う不条理感たっぷりの人々・・・。次から次へと起こる珍騒動を描いた「けものがれ、俺らの猿と」。

    バンドをしながらフリーター生活に甘んじている「俺」が、友人に副手の代行をさせられることから始まる珍騒動を描いた「屈辱ポンチ」の2編を収録。

    どちらも強烈にギャグが冴えていて、かなり笑える作品。
    町田節ともいえる弾丸のような、言葉!言葉!の緊張感。
    そして間の使い方のセンスが独特の脱力感を生み出し、読み手を町田ワールドに引きづり込みます。

    ポイント、ポイントでかなりツボに入るギャグもあるので、静かな喫茶店などでは注意が必要です。

  • 町田康はその処女小説『くっすん大黒』を書いた時点で、作品のスタイルを確立していたと思う。

    ともすると冗長でだらけているように受け止められかねない文章も、実はリズムという計算のもとで、滑らかに響く。ところどころに挟まれる古典的ジョークや細かすぎるくらいに事の成行きを描写するあたり、あるいは奇怪な行動を起こす登場人物や、蠢く虫ども。これらは、下手をするとそれだけで読者の読書意欲を殺いでしまう可能性がある。しかし、町田康は果敢だ。徹底している。

    町田康の小説に出てくる主人公は、悉く堕落・没落した生活を送っていて、これではいかん、なんとかせんければならぬとあがくのだけれど、その思惑と現実とのズレは常に広がっていき、如何ともしがたい。そのため、読者はストーリー展開をまったく予測できず、さらには現実と妄想の境目が曖昧模糊としていき、それが却って小説の不気味なリアル感をいや増している。

    主人公たちは社会を嘗め切っている。嘗め切っているが、社会の有り様をいったん受け入れたうえで、著しく脱線。そして軽侮しているのである。そこから彼らは立ち上がろうとする。その姿たるや滑稽、しかし、美しい。

    処女作『くっすん大黒』ではさほどでもなかったが、芥川賞受賞作『きれぎれ』に到るころには、そのストーリー展開たるや、凄まじいスピード。話はあらぬ展開へ進み、そして唐突に幕を閉じる。多くの読者は、呆気にとられて、ジ・エンド。頭の中は、カオス・オブ・カオス。

    人間社会に生きることの中に潜む、醜さ・惨めさ・馬鹿馬鹿しさの視点から、ここまで真正面にぶつかっていく作家は他にいない。

    【収録作】
    『けものがれ、俺らの猿と』…仕事のない佐志のもとに、老プロデューサー楮山が現れる。脚本取材のために出掛ける先々でトラブルに巻き込まれる佐志。有無を言わせぬ兇悪警官。珍妙な素麺祭(?)での人々の大混乱。ヘボ大仏とクレイジー田島。そして猿のアンジーちゃん。ストーリーは楮山の咳の激烈さとともに加速度を増し、純喫茶「悶」での、何故か分からぬウェイター役で、唐突に終わる。滑稽の極み。

    『屈辱ポンチ』…知人・浜崎の頼みで、ひょんなことから跋丸という人間への復讐をすることになった岡倉。浜崎から差し出された助っ人(?)帆一とともに、跋丸へ嫌がらせをこれでもかと実行するが、これ皆失敗。無言電話。白紙FAX。生肉。活け鱒…。岡倉と帆一のくだらないやり取りをリズミカルに描く。滑稽の極み、再び。

  • 理不尽パワーで突っ走るぜ!永瀬正敏主演での映画も面白い!

  • 「けものがれ、俺らの猿と」が良かった。映画の鳥肌実も良かった。

  • 相変わらず阿呆な話を考えるなぁ。
    出てくるのは奇人・変人ばかり。
    独特の文章がその可笑しさを引き立てる。
    彼の考える物語の主人公にだけはなりたくない。
    この物語は結局どこに向かってるんだ、
    と思い始めた頃、あやふやに終わってしまう。
    もう少し読んでいたかった。

    <収録>
    1.けものがれ、俺らの猿と
    2.屈辱ポンチ

  •  「けものがれ、俺らの猿と」「屈辱ポンチ」の二本。こんなことねーよ、って思わせる能力はピカイチですね。町田康の手にかかれば、誰のどんな日常も、わたわたしたぬるぬるした感じに描かれるんだろう。

  • 「けものがれ、俺らの猿と」 売れない脚本家が、ベテランプロデューサーに社会派映画の脚本依頼を受けるが、ロケハンに出かけた先で色んなトラブルに巻き込まれるという話。色んな頭のおかしい人がでてきたり、伝奇物的な怪しげな雰囲気で、横溝的な因縁話が! と期待するが、物語は尻切れトンボで終わる。お膳立てだけは色々してあるのに、なんでここで終わるんだろうと、不思議に思った作品。「屈辱ポンチ」売れないパンクロッカーが、友人のライターの子分とともに、跋丸という男にいたずらをする話。色んなばかばかしい手段でいたずらをするのだが、これも途中でなんか尻切れトンボ。こっちは一応後日談がついているので、まとめようとはしている模様。 文章はすらすら読めるし、途中で笑えもするんだけど、尻切れトンボだとなんか物足りない。

  • けものがれ、俺らの猿と
    タイトルもさながら、中身もブッ飛んでる。youtubeの予告編が好きです。鳥肌実すごい。
    屈辱ポンチ
    おっさんの珍道中。ほほえましいなあ。

  • ロックンロールな一冊。

  • 死ぬほど面白い。奇才。

全23件中 1 - 10件を表示

著者プロフィール

町田 康(まちだ・こう)
一九六二年大阪府生まれ。作家。九六年、初小説「くっすん大黒」でドゥマゴ文学賞・野間文芸新人賞を受賞。二〇〇〇年「きれぎれ」で芥川賞、〇五年『告白』で谷崎潤一郎賞など受賞多数。

「2022年 『男の愛 たびだちの詩』 で使われていた紹介文から引用しています。」

町田康の作品

この本を読んでいる人は、こんな本も本棚に登録しています。

  • 話題の本に出会えて、蔵書管理を手軽にできる!ブクログのアプリ AppStoreからダウンロード GooglePlayで手に入れよう
ツイートする
×