- Amazon.co.jp ・本 (436ページ)
- / ISBN・EAN: 9784163213705
作品紹介・あらすじ
あるいは衆目を前にして死し、あるいは死して宙に浮かび、あるいは忽然として屍を現わし…。絶世の貴公子と少女たちが遊ぶ理想郷で、謎の詩句に導かれるように起こる連続殺人の真相とは?中国最大の奇書『紅楼夢』を舞台に、著者が放つ入魂の本格巨篇。
感想・レビュー・書評
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本格ミステリ大賞候補(2005/5回)
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紅楼夢という中国の小説の登場人物が出てくる推理小説らしい。
紅楼夢を見てないので、中国の富豪の家の住人(登場人物)に凄く違和感を覚える。全登場人物が若くて美女か美男でアニメチックな設定。更に文章が稚拙なので余計オタク臭くくだらない雰囲気をかもしだしている。トリック自体はそう酷いものではないが、本当に台詞など漫画チックで馬鹿馬鹿しくなってしまう。 -
よくわからなかった。
中国史知らないし。 -
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不勉強な私は「紅楼夢」という原典の存在すら知りませんでした……。なのでとにかく序盤はとっつきにくい印象の一作。もう何が苦しいって、登場人物の名前が覚えられないし(これだから中国史は大の苦手)。何度も何度も登場人物表と家系図を見比べて、ようやく覚えた頃には事件が解決しちゃいましたとさ。
それでも。読み終わってみると、これは間違いなく面白かった。事件が起こりだすとあとはもうページをめくる手が止まらない(止めると登場人物が分からなくなる、てのもあるけど)。そして解決に向けて一気になだれ込む様は爽快。ラストのあれはまさにカタルシス、だよなあ。
数々のトリックも凄いけれど、この作品の核心は「なぜそういうトリックが必要だったか」という部分。これは考えもつかなかったというかなんというか……なるほどなあ。作品の舞台は非常に現実離れしているのだけれど、この観念は妙に現実に即していて、皮肉的。 -
元ネタの中国版の方も読みたくなった。
ミステリとしては、動機がおざなりだったり、トリックが荒唐無稽だったりして、ある意味さすが元ネタ中国小説!って感じだけれど、全体を通して読むと、「あーもうとっても美しい世界だから、そんなん許すっ」というのが正直な感想。
女子高女子大育ちなので、美しいお姉さま&妹に囲まれた庭園なんて、憧れちゃうのよね。
しかし最後には全て滅び去ってしまうのが悲しい。
誰か一人でも幸せになって欲しかったなぁ。 -
ところは中国、栄華を極めた大貴族の邸内に築かれた人工庭園「大観園」。類稀なる貴公子と美しき少女たちが遊ぶ理想郷で、奇々怪々な連続殺人が勃発します。衆人環視の中で消え失せる犯人。空を飛ぶ被害者…。中国最大の奇書『紅楼夢』を舞台にした絢爛たる犯罪絵巻は、中国古典ファンも必読の傑作ミステリー―――――「紅楼夢」なる作品の存在を初めて知りました。「紅楼夢」ありきのミステリであるため、まずその「紅楼夢」なる世界を知らなくてはなりません。もちろん、始めは「紅楼夢」の成り立ちから教えていただけます。簡単なあらすじとしては、そもそも「紅楼夢」とは豪華な邸宅のこと(安直な例えですみません)で、そこでは男尊女卑の不遇にある高貴な女性が集められ暮らしています。その中に唯一人存在する男が、この話の主人公の賈宝玉(原典の主人公かは解りません)。彼は世の中のそういった見方とは違って女性を大事にする性質なため、屋敷の主として彼女達を見守る役目を務める。そんな中、彼は今で言うミステリなる書物に興味を持ち始める。その一方で、紅楼夢で奇妙なことが起こるという御文が探偵役の○○(人物名を忘れてしまいました)の元に届きます。彼は上司の命に従い、「紅楼夢」へとその調査に赴いていく。そして第一の事件が起こる。と、ここからミステリとして話が動き出してきます。多くの登場人物にたじろいでしまうかもしれませんが、読み進めていく内に重要な人物、それ程重要じゃない人物と、自分の中でランク付けが出来てくるので、それ程困難な作業ではなかったです。ラストはミステリとしての興奮よりも物語としてのカタルシスの方が強く、良い感じに締めくくってくれました。ジーンときました。
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風太郎翁の『妖異金瓶梅』は確かに凄まじいけれど、これもすごいや。『紅楼夢』という舞台でなければなりたたない唯一無二の回答にうなるしかない。 十分厚くて、ややこしいのだけれど、もっと絢爛豪華に書き込んでくれても、楽しかったかなと思う。
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何と言っても原典をちゃんと読んでいないのが致命的だったかなという印象。
勿論これはこれできちんと話は通じますし、本格ミステリとして再構築された紅楼夢を楽しめるのですが、如何せん登場人物の多さ、似たような名前の多さが最初のハードルになってしまいました。
そんなわけで序盤は遅々としてペースが上がらなかったのですが、次々に事件が起こり始めると、物語中では読者の側に近い探偵役の頼尚栄とともに、謎と事件を夢中で追いかけていました。
死を予告する謎の手紙、衆人環視の中での死、人間消失のトリック、突然現れる死体など、個別に取り上げれば大して大掛かりなトリックでは無いけれども、それらを全て『紅楼夢』の世界に組み込んだ際に現れる壮大さは確かに力作と評価するに値することが出来るかもしれません。
もっともトリックが全て明らかにされた際の、ハリボテが日の光の下に曝されるような感覚は、好みが別れるところかも知れません。
個人的には、名前の錯誤によるアリバイトリックは今ひとつ頂けなかったかなという部分が引っかかっています。
ただし、本作の醍醐味はトリックの鮮やかさではなく、「探偵小説」であることを逆手に取った、アンチ・ミステリ的な構造かもしれません。
また、ミステリの舞台としてわざわざ『紅楼夢』を持ってきた作者の必然性にも、十分納得出来ます。頼尚栄とはまた違った立場に立つ今一人の探偵役が最後に語る、「何故このような仕掛けが為されたのか」は非常に説得力のあるものでした。