終点のあの子

著者 :
  • 文藝春秋
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  • Amazon.co.jp ・本 (199ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784163292106

作品紹介・あらすじ

プロテスタント系の私立女子高校の入学式。中等部から進学した希代子と森ちゃんは、通学の途中で見知らぬ女の子から声をかけられた。高校から入学してきた奥沢朱里だった。父は有名カメラマン、海外で暮らしてきた彼女が希代子は気になって仕方がない。一緒にお弁当を食べる仲になり、「親友」になったと思っていた矢先…。第88回オール讀物新人賞受賞作「フャーゲットミー、ノットブルー」ほか全4編収録。

感想・レビュー・書評

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  • 女子高生の夏。
    中学から内部進学した人、外部から進学してきた人。
    女子高のカースト制の中で、もがきながら成長していく。
    カーストの最上段にいる恭子だって、もがいてる。
    飄々としている朱里だって、苦しんでる。
    いや、朱里をみてると、その苦しみは、自分が招いているかもしれないけど。
    ふたりでいるのに無言で読書が好き。
    早智子といる恭子が好きだな。
    お気に入りの一冊になりました。
    蔵書したい一冊です

  • ブクログ仲間さんのレビューのおかげで、また素敵な本と出会うことができました。
    この作品がデビュー作という柚木麻子さん、追いかけずにいられない作家さんです!

    共学校にももちろん存在するのだけれど
    私立のお嬢様系女子高という閉鎖された環境では、
    なおさら厳然と存在するヒエラルキーの中で

    誰もに一目置かれる女王様として君臨したかったり
    反対に、「みんなと同じ」安心感だけは手放したくなかったり
    誰とも違う、特別な自分を誇示したかったり
    特別に見える誰かに、自分だけが唯一無二の親友と認めてほしかったり、
    確かな居場所を求めてもがく少女たちがくっきりと描かれます。

    朱里がノートに書きつけた、クラスメイトについての上から目線の悪口や
    にっこり笑って会話しながら少女たちが心の中で呟く辛辣な独白が
    かなり身も蓋もない感じに描かれているのに、ドロドロした嫌な気分にならないのは
    柚木さんならではの、透明感に満ちた筆致の賜物でしょうか。

    傷つき、同じくらい傷つけた朱里も希代子も奈津子も恭子も早智子も
    胸が痛くなるような「フォーゲットミーノットブルー」の絵の具の色や
    涙が出るくらい酸っぱい甘夏の味や
    図書館のソファに並んで、互いに無言で本を読んだ静かな時間や
    七輪の上で焼かれ、「アリスの牡蠣」がぱっかりと貝殻を開いた瞬間を
    きっといつまでも忘れない。

    少女たちも、いつも工事中の彼女たちの学校の最寄駅も
    家族も、街も、国家も、そしてこの歳になった私も、
    みんなみんな、発展途上。

  • 3人以上人が集まれば、何やら人のうわさ話が始まる。「あなたはこの件に関して、どういうご意見をお持ちなの?」とおおっぴらには訊ねないけれど、言葉の端はしからどういう立ち位置なのか推測する。どうやら敵ではないらしい、むしろ味方か?となれば、更に本音に近づこうとこちらも腹の中を少しばかりオープンにしたりして・・・。
    女子の端くれとして、未だにこういうトークを繰り広げることもあります。
    けれど、正直とても疲れるのですよ。
    女子の中でやっていこうとするとき、この手の話に「われ関せず」を決め込むと情報からは遠ざかるし、加減が難しいんだよね。
    まあ、男性のみなさんもビジネスにおいて腹の探り合いをすることもあるだろうし、お互い人間関係においてストレスはなくなりませんね。

    私立の女子高生を取り巻く友情と悪意、本音と他人からの評価に振り回される様子を描いている。

    先日TVで男性看護師が増えていて、職場では彼らの得意な分野で頼りにされ、ぎすぎすした感じがなくなったと女性看護師が感想を述べていた。女子だけって、気楽でいいけど、一つ間違えるとわがままで視野が狭くなりがちなのかも。

    どの子も、自分が大切にされていると実感できている時は優しいし、相手に対しても思いやりを持って接することができる。ところが、自分がないがしろにされたと感じるや否や、オセロのこまが白から黒へとあっけなくひっくり返るように、好き嫌いは逆転し、さらに相手に思い知らせてやろうと、心の中では執拗に嫌がらせや意地悪を考え始める。それでも逃げ道を用意し、表面上はそんな感情を隠すこともある。
    好感情のプラスはあっけなくマイナスにも変わってしまう。

    読んでいると、日頃表面に浮かび上がってこなかった感情が自分の中にも確かにあったと思い知らされて、口の中に苦い思いが広がる。彼女たちの思いや行動が底の浅い愚かな行為だと笑うことができない、冷静な自分がいる。
    こういうことで一番傷つくのは、本人なのだと今はわかるのだけど・・・。

    第4話の「オイスターベイビー」の美咲と杉ちゃんは、主人公たちを際立たせる存在として登場する。自分を認め、自分を正当に主張するさまがカッコイイ!
    逃げ場のない渦巻の流れに取り込まれた主人公たちも、少し大人になって、自分の軸とするところが見つかるといいんだけど・・・。

  • 多感な女子高生たちの手探りの友情。
    女子同士っていつまでも友情の方程式が解けないのかもしれない。
    共学校だった私には女子校はめんどくさそうに思える。
    でもここにいる女の子のひとりひとりがとても可愛く思えた。
    若さってかけがえのないもの。
    失敗も後悔も宝物にできる。

  • 駅前の本屋さんの店頭で、今月頭から文庫フェアをやっています。(夏だもんね)
    が、これがね、すごいの。

    作家さん自身が、自分の著作のPOPを、直筆で、書いているのです。
    朝井リョウ、辻村深月、百田尚樹、畠中恵、坂木司、小川洋子、三浦しをん、原田マハ、桜庭一樹、森見登美彦などなど…
    そうそうたる顔ぶれで、平積みされた棚の周りぐるぐる何周もしてしまいました。
    正直言って、みなさん大概テキトーなPOPで、書店員さんの愛と気合のあふれるものと比べるとなかなかに手抜きで、しかもみなさんあんま字がきれいじゃない。(笑)
    そんなところが、とても親近感がわいて素敵でした。

    内容的にはたいしたことないPOPが多い中、最初にちょっと気になったのがこの本でした。
    そして、窪美澄さんのPOPが何故か「柚木麻子に負けたくない!」だったので。
    仲いいんでしょうかね、きっと。


    「あまからカルテット」はぬるいと書きましたが
    こちらはひんやりとしたりギラギラしたり、いいね、十代の女子は。
    こっちのほうがだいぶおもしろかったな。
    実際は高校生なんてガキんちょなんで、自意識過剰すぎてこんな俯瞰した目線で周りも自分も見れないんだけどね。

    希代子と朱里、女王様恭子と早智子の話がビターでよかった。
    最後の朱里大学生の話は、ちょっと違うテイストでなんか心地いい余韻。
    表紙もいい。

  • なんだ、この人めちゃくちゃ上手い。これがデビュー作って。
    また表紙が可愛いの。
    はっとするようなブルーの背景に(フォーゲットミー、ノットブルー?)白いワンピースにグレーのハイソックスにローファーを合わせた少女たち。胸元には大きな赤いリボン。

    今後追いかけて行きたい作家さん発見!山田詠美さんの「風葬の教室」や「蝶々の纏足」が好きならこちらも是非。

    中高一貫の世間では一応お嬢様女子校と呼ばれる(実態はどうあれ)プロテスタントの学校にいたものとして、中学から持ち上がりの子と高校から入ってくる子たちとのなんとも言えない違いとか、どこかのグループに属さないと居場所がなくなる感覚とか、派手な子が勝者の法則とか、どれも身に覚えがあり、ほろ苦く学生時代を思い出した。

    (ちなみに大学まで附属している我が母校では、大学入試組からは「内部生は甘え」とされ、高校から→シルバー馬鹿 中学から→ゴールド馬鹿 と揶揄されていた。小学校はないけど幼稚園まであるのに・・・幼稚園から→プラチナ馬鹿になるのだろうか。。。それかブラック馬鹿!?)

    私服だったので恭子の制服への思い入れや学校名でちやほやされる感覚はあまり経験ないけど、文化祭などで近くの進学校の男の子たちと自然に話せている華やかなグループの子たちを見て「違う世界の人」みたいに感じたりしたなぁ。

    有名カメラマンを父に持ち、海外暮らしが長く自由奔放な朱里、そんな彼女に憧れるも想いが届かず彼女を憎むようになる希代子、地味で目立たない自分を変えたくて禁止されているアルバイトを始めた奈津子、スタイル抜群の美人で常に注目を浴びている恭子、人からどう見られるかはあまり気にせず己の世界でのびのび生きる早智子・・・

    どの子のなかにもあの頃の自分がいて、痛いのに面白くて好きになりました。

    一番好きなのはもちろん杉ちゃん、次に早智子かなぁ。恭子も肩の力抜けばいいのに。

    くっついては離れて自分の居場所を模索していたあの頃。仲の良い友達が別の子と仲良くしていると嫉妬すら覚えたものです。
    自分にはないものを持っている子へのあの頃の羨望は実際、恋に近いような感情だったかもしれない。

    少女たちはこうやって女になっていくんだね。

    • まろんさん
      おお!hetarebooksさんがここまで絶賛されるなんて、もう読まずにいられませんね!

      高校→シルバー馬鹿、中学→ゴールド馬鹿・・・幼稚...
      おお!hetarebooksさんがここまで絶賛されるなんて、もう読まずにいられませんね!

      高校→シルバー馬鹿、中学→ゴールド馬鹿・・・幼稚園は?
      の件がツボにはまって笑いが止まりませんでした。
      私は小中一貫の教育大付属校だったので
      中学に上がるときは、小学校の先生たちから
      「中学で受験して入ってくる子は優秀だぞ~!」
      と耳にタコができるくらい言われ続けて
      幼い胸がプレッシャーに潰されそうでした(笑)
      2012/09/12
    • hetarebooksさん
      まろんさん

      ぜひ読んでみてください!まろんさんはこの多感な年ごろの少女たちをどう受け止めてくれるかな?

      そうそう、周りから見たら...
      まろんさん

      ぜひ読んでみてください!まろんさんはこの多感な年ごろの少女たちをどう受け止めてくれるかな?

      そうそう、周りから見たら同じ学校に通う子たちなのに先生方が違いを押し付けてくるんですよね(笑)

      なんだかんだ、ゴールド馬鹿であることに誇りをもっているhetarebooksなのでした♪
      2012/09/13
  • 読んでいると真理つきすぎてて、自分の心の見たくない部分を丸々表現されてたりする本。良い意味で「吐きたくなる」(?)

    人は世間からはみ出したくない、波を立てずに生きたいと願いながら、人に個性的とか「みんなとは違うんだ」と思いたいよなぁ。

    と感じる本。ただ一番初め、最後の短編以外は普通。

  • え、どうしよう。いままで読んできた柚木麻子作品で1番好きかもしれない。文庫版を家に置いておきたいレベル。

  • 女子の世界はメンドクサイね。
    それは高校だけじゃない。大人になっても、おばあさんになってもそうだと思う。
    この本にはそこまでは書いてないけど。

  • 箱入りの私立女子校の話。お嬢様女子校ならではの悩みなどが新鮮だった。

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著者プロフィール

1981年生まれ。大学を卒業したあと、お菓子をつくる会社で働きながら、小説を書きはじめる。2008年に「フォーゲットミー、ノットブルー」でオール讀物新人賞を受賞してデビュー。以後、女性同士の友情や関係性をテーマにした作品を書きつづける。2015年『ナイルパーチの女子会』で山本周五郎賞と、高校生が選ぶ高校生直木賞を受賞。ほかの小説に、「ランチのアッコちゃん」シリーズ(双葉文庫)、『本屋さんのダイアナ』『BUTTER』(どちらも新潮文庫)、『らんたん』(小学館)など。エッセイに『とりあえずお湯わかせ』(NHK出版)など。本書がはじめての児童小説。

「2023年 『マリはすてきじゃない魔女』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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