- Amazon.co.jp ・本 (166ページ)
- / ISBN・EAN: 9784163298306
作品紹介・あらすじ
最愛の母ががんになった。始まりは一本の電話だった。医療機関とのすれ違い、転院、「鵺」と呼ばれる父との鬼気せまる確執。静謐な結末が圧倒的感動をさそう、究極の私小説。
感想・レビュー・書評
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初めて出会った作家。親に対する思いを、正直に書いている。それがストンと伝わる。小谷野さんの人となりがたまらなくすきになった。
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面白くてというかつらくてというか一気読みした。父親との関係ももっと読みたいと思ったらそれが「ヌエのいた家」か。
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この人の書き物は小説の可能性をまったく感じない。いったいこの甘ったれた駄文を通じて何がしたいんだろう。
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芥川賞候補作。母親の闘病、病院のスタッフの描写、現実に向き合うことの辛さ、父親の存在など、私小説なのだろうが、惹き付けられてイッキ読み。
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文章のリズムがよい。誇張せず、意味付けのない内容は、フィクションよりもひきつけられる。患者家族の視線が詳細に読み取れた。患者と接する医療従事者にも読んでもらいたい。
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私小説
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母親をガンで喪った経緯を描いた私小説だ。
物書きが肉親を看取るまでを描いた作品というと、私が読んだもののうち、近年なら沢木耕太郎の『無名』や、萩原朔美の『死んだら何を書いてもいいわ/母・萩原葉子との百八十六日』を思い出す。本書は、どちらかといえば『死んだら何を書いてもいいわ』(これは小説ではないが)に近いだろうか。
私の老母も昨年来入退院をくり返しているので(重篤な病ではないが)、他人事ではなく、いちいち身につまされて読んだ。肉親をガンで亡くした人なら、もっともっと身につまされるだろう。
「泣かせ」を期待すると、肩透かしを食うだろう。著者の筆致は淡々としていて、読者を泣かせてやろうというあざとさは皆無だからだ。
本書で私が泣けそうになったのは、1ヶ所だけ。それは、終盤の次のような一節である。
《文筆家の勢古浩爾さんは、私の実家と同じ市の住人である。だから母と、勢古さんの話をしたこともあった。母が病んでから、勢古さんにメールで知らせると、「最後は手を握ってやってください。私は母の手を握ってやることができませんでした」と言われていた。最近出た勢古さんの本にも、そのことが書いてあった。だから、私は進み出ると、母の右手をとった。医師が、頷いた。》
母親を看取るまでの経緯が本作の縦糸なら、横糸は父親との激しい確執だ。著者が「既に父は感情の廃人である」と表現する父親は、妻が末期ガンになってからでさえ暴言を吐き、病院に見舞いにさえ行こうとしない。たしかに、ちょっとひどいと思う。
医療関係者の無神経な対応への苛立ちなど、看取りの過程のディテールがすこぶる鮮やかに描かれている。医師とのやりとり、母親とのやりとりなどが微に入り細を穿って記録されており、逐一メモなどをとっていなかったとしたら、すごい記憶力だ。
そして何より、最愛の母を亡くすまでの著者の心の揺れがヴィヴィッドにたどられ、強い印象を残す。たとえば、次のような一節。
《私は、二つの世界を生きているようだった。一方は、不如意も多いけれどとりあえず順調な仕事があり、若い妻のいる世界で、もう一方が、病んだ母のいる世界だった。私の心は、時に、前者に溺れそうになって慌てて後者を思い出し、あるいは逆に、後者に溺れて前者に立ち返ることができなくなった。そして時がたつにつれて、あとの方が多くなってきた。》
同じ私小説でも、西村賢太の諸作のようなドロドロした感じはなく、水彩画のような印象を残す、母親への静謐なレクイエム――。 -
私小説なので仕方がないと思うのだが、自分の家族(父親)に対する嫌悪の様子がストレートすぎて嫌になった。母親が肺がんにかかり闘病を支える家族、親戚はさらっと書き綴られているが、当の母親さえ愛想をつかす愛情のないというか癌にかかった伴侶にたいして暴言を吐いてしまい見舞いにも来ない壊れた父親はまさに家族の中の末期癌のように描かれている。救いようのない壊れた家族の話を読むのはつらい。小谷野敦さんの本は実は読んだ事はなくて、はじめて読んだのだが別な作品を読むのは少し先になる気がする。私小説としては秀逸なのだろうが、正直言って誰もに進められる本ではないかな。
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いつも読むと厭な気持になる(著者の人間性が好きになれない)のに、不思議と読んじゃう。読ませる力があるのよね。
今回も看護婦の顔と頭のレベルがどうのという話があったりして、またか、と思うけど、全編に癌を患う母を思う気持ちがあふれていて、厭度は低め。
著者が学歴にやたらこだわる理由もこの家庭環境なら、とわかる気がした。
一人相撲的恋愛ものより、よかった。 -
小谷野敦氏のことについて紙面であれネットであれ何か書くとあとが面倒なので、レビューはひかえておきます。
と、レビューに書いてみました。