三国志 第二巻

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  • 文藝春秋
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  • Amazon.co.jp ・本 (349ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784163597607

作品紹介・あらすじ

幼い帝を毒殺し政敵を死においやる暗澹たる人物・大将軍梁冀。後漢が生んだ夢魔のような人間をえがき尽す。

感想・レビュー・書評

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  • 後漢第8代皇帝・順帝の后であった梁皇后は、順帝が崩じたあとも、9代沖帝、10代質帝の摂政として政務に忙殺される。

    この梁太后は比較的良識ある人物であったが、当世の不幸はその弟である梁冀が、皇室の外戚であるというだけで、権力を笠に着て、暴政の限りを尽くしたことだろう。

    梁太后には、李固らの有能な側近がおり、梁冀の暴走を抑える形で善政を維持していたが、梁冀が権力を増長させ、宦官たちとの甘汁の連携体制ができあがってくると、ついには李固らの賢臣を排斥し、さらには自身に敵対感情をいだく皇帝(質帝)さえも毒殺してしまう。

    質帝を亡き者にした後は、自らが推す桓帝を立て、妹の梁瑩を后に送り込み、天下をほしいままにする。この政治体制を喜んでいたのは宦官たちのみだ。

    しかし、この桓帝が愛した梁貴人を排除しようとする梁冀に対し、桓帝はそれだけは許せず、ついに梁冀を誅殺する。

    しかし、悪の根源・梁冀が誅殺されても全く世の様相は変わらない。なぜなら甘汁の中に生きる宦官の力が衰えていないからだ。第12代霊帝の時代まで、この乱れた世相は続くのである。

    こうした世の乱れの中で、一つの宗教勢力が拡大していく。張角が率いる太平道の信者の勢力・黄巾族だ。すなわち、これまでの悪世に対する不満の爆発と言えるだろう。瞬く間に勢力は拡大しただけでなく、その勢いに便乗する様々な勢力が暴発した。

    これが三国志の物語が始まる前夜の光景である。

    この時代に、劉備玄徳、曹操、孫堅が誕生する。161年に劉備玄徳が生まれ、それに先立つ155年に曹操、156年に孫堅が誕生する。

    さらに179年には司馬懿仲達が、181年には諸葛亮孔明が生を受ける。

    第二巻では、この乱世の英雄達の名前が登場し、いよいよの期待感がこみ上げてくる。第二巻の最終部では、曹操の初陣の模様が描かれていた。

    学問に精通している者が任じられる「議郎」に推挙された曹操が、今度は黄巾の平定のため騎都尉に推挙される。つまり曹操は文武ともにずば抜けていたということだ。

    初陣は胸のすくような活躍で成果を挙げた。

    さぁ、第三巻の展開はいかに。

  • 幼い帝を毒殺し政敵を死においやる暗澹たる人物・大将軍梁冀。後漢が生んだ夢魔のような人間をえがき尽す。
    <amazon商品詳細より引用>

    皇帝の外戚と宦官の権力絶頂期。
    臣下にとってもわからない皇帝が桓帝。
    優れた行政官たちを逮捕して投獄し、佞臣の臣を喜悦させ、
    天下の民を失望させる。
    王朝最大の過失であろう。
    皇帝の桓帝の非力と凡才は王朝の命を着々と削っている。
    桓帝の死に伴い、太后とその父による外戚政治が始まり、
    宦官たちの権力の撲滅を図るが、
    激しい逆襲にあい、返り討ち状態になる。

    曹操が生まれ、孫堅が生まれ、劉備が生まれ、
    董卓はまだ非道な人物ではない時代。

    そして、まだ是非善悪のわからぬ齢の霊帝の即位となり、
    宦官の絶大な権力のもとで政治の混迷は続く。


    諸葛亮と孫権もこの頃に産まれる。
    張角の太平道も拡充されており、黄巾が広まりつつある。
    30歳くらいになった曹操は黄巾賊討伐の将に抜擢される。
    張角討伐に董卓が差し向けられる。

  • 遂に曹操、劉備の登場!!
    第一巻で黄巾の乱以前をたっぷりと読んだおかげで、何故乱が起きたのか?、曹操の原動力が何なのか?がわかって面白くなってきた。

  • 黄巾の乱勃発
    やっと三国志が始まりました

  • 最後の方でようやく知ったメンバーの名前が出てきて、これからあの世界に入れそうですね。
    しかし、ひでえ世の中。まあ、あの国はずっとそう云う国ではあるんですがね・・・

  • 奸臣が続々登場し、その中でこちらまで良心が麻痺していく思いがする。第8代・順帝の皇后の兄として権力を握り、梁冀が沖帝、質帝、桓帝の時代まで悪行の限りを尽くし、高官たちが手をこまねき、権力にすり寄る姿は痛々しい。今も身近なところで起こっている情景である。桓帝が5人の宦官と梁冀を打倒する姿は順帝を擁立する第1巻の繰返しそのものだ!光武帝の国づくりの基本構想そのものに問題があったというのが著者の考えだろう。ここまで皇太后そしてその兄が実権を握ることの繰返しは日本では有り得なかっただけに不思議な話。孫堅がようやく登場。そして曹操、劉備、孔明が。司馬懿の父・防が曹操を「行政より、尉(警察)に合っている」と評し、後日曹操との歓談の場面が楽しい。三国志の世界が待ち遠しい。

  • ようやく霊帝の時代になって、黄巾党とか出てきた。
    たしかに、チャンバラをやる前に、「なぜ後漢朝がだめになったのか」が分からないといけないは分かる。
    でも、ようやく入り口に来たって感はある。

    ではその後漢朝の問題は何かだけど、私には、システムの問題を個人の能力で解決しようとしたことだと思う。外戚、官僚、宦官、といった政府組織の問題ですらなく、社会哲学の問題であるように思える。
    善悪正邪を考える際に、個人と社会が分離されていないからこうっていると思う。
    しかしそれを、前近代に求めるのは酷だろう。むしろ、近代の偉大さを、逆に思う。
    別の言い方をすれば、人治が過ぎるということで、今の中国人はどういう思いでこの歴史を読むのかな。

  • しばらくあいて、久しぶりに読んだ第二巻。
    ようやく、黄巾の乱。曹操や劉備がようやくでてきつつあります。
    長い長い歴史を順に読み解くように、丁寧に丁寧に。
    そうすることで、三国志の世界が迫ってきます。
    読むのは時間かかるけど、読破していきます。

  • 再読。三国時代にいたるまでの漢の様子が詳細に描かれており、また、諸説も載せてある。三国志ファンは必読!

  • やっと、三国志に関係する人物が出てきた。
    記載ぶりも、説明調から口語調に変わってきたみたいです。

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著者プロフィール

宮城谷昌光
1945(昭和20)年、愛知県蒲郡市生れ。早稲田大学文学部卒業。出版社勤務のかたわら立原正秋に師事し、創作を始める。91(平成3)年『天空の舟』で新田次郎文学賞、『夏姫春秋』で直木賞を受賞。94年、『重耳』で芸術選奨文部大臣賞、2000年、第三回司馬遼太郎賞、01年『子産』で吉川英治文学賞、04年菊池寛賞を受賞。同年『宮城谷昌光全集』全21巻(文藝春秋)が完結した。他の著書に『奇貨居くべし』『三国志』『草原の風』『劉邦』『呉越春秋 湖底の城』など多数。

「2022年 『馬上の星 小説・馬援伝』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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