137億年の物語 宇宙が始まってから今日までの全歴史

  • 文藝春秋
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  • Amazon.co.jp ・本 (506ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784163742007

感想・レビュー・書評

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  • 137億年を500ページで俯瞰する

    ビッグバン以来の137億年の歴史を、文系的・理系的視点の両方から見ていこうという異色の歴史書である。
    著者は大学で歴史を学んだ後、新聞の科学記者として活躍した人物。「自分の子どもにこの地球の歴史をどう教えたらいいか」を考えていて生まれた本だという。

    ビッグバンを0:00:00とし、現代を24:00:00として換算したタイムテーブルもついている。
    歴史を点や暗記事項ではなく、流れで捉えようとしており、42のテーマについて、お話形式で進んでいく。
    物知りの歴史の先生が雑談を交えて行う授業のようで、ボリュームの割に読みやすく、親しみやすいといえるだろう。

    力作であり、意欲作である。
    巻末の参考文献にも挙げられているが、『銃・病原菌・鉄』を彷彿とさせるおもしろさである。図版が多いのも美点だろう。
    アボリジニやラテンアメリカの被征服者に光を当てているところもすばらしい。中国やイスラムの科学文明の話もおもしろかった。

    ただ、このボリュームであれば、レファレンスとなることを期待するのだが、ぜひ家に1冊欲しいかと問われると、ちょっと二の足を踏む。
    なぜかといえば、1つは引用参考文献が少ないためだ。各章に注の形で参考文献は付いている。巻末にも全体を通しての参考文献が何冊か挙げられている。だが、本書を書くにあたって、ここに挙げられたものがすべてではないように感じる(注に挙げられたうち、邦訳がなく、原著でしか読めないものがかなりの割合を占めているのも日本語読者には不便だろう。が、これはまた別の問題か・・・)。
    一方で、通史という性質上、さらりと触れられるのみで話題が流れていく。中の1つのトピックに興味を感じたとしても、それをさらに発展させるには、参考文献への橋掛けが欠かせないだろう。

    もう1つ。
    ビッグバンから人類誕生まで(本書では第1部・第2部)と、文明の夜明けから現代まで(第3部・第4部)をどうしても1冊にまとめなければならなかった意義がいまひとつよくわからない。前半部分は文系的学問の出番が少ないこともあるのかもしれない。この2つの間には断絶が感じられる。
    読者の興味の対象にもよるのかもしれないが、個人的にはこの本の白眉は後半(23:59:59に相当する部分)だと思う。

    おもしろくはあったのだが、one and onlyというよりもone of manyの本だという印象を受けた。

    時間的・空間的に大きな広がりを持つ歴史を俯瞰するのは、本当に難しい。


    *個々の話題については:
    ・スパルタ教育のすごさ
    ・ローマ皇帝の狂気が鉛毒のせいという説(おもしろいと思ったが、正規の学説とはいえないようだ)
    ・アボリジニ4万年の歴史。
    ・「フィボナッチ数列」で知られるフィボナッチ(1200年頃)は、アルジェリアでイスラムの算術を学んだという。
    ・コンキスタドールの凄惨。天然痘の蔓延
    ・中国の科学に関する書を著したジョゼフ・ニーダム
    あたりが印象に残った。

    *原題は”What on earth happened”。ちょっと洒落が効いている。

  • 地球の歴史という意味じゃ137億年前からなんだろうけど、人類の歴史という意味では4000年くらい?この間を繋いで一冊にすることで面白いと思うかは微妙なところ。
    と言ってもね2/3くらいは人類関わってるけど。

    なんだろうね、世界史を見てるとなんちゃら族が侵入してきて、となると、元々住んでた人が追い出されるのよね。戦争でもなく。フン族やらゲルマン民族やら。いやこれって今の移民の流れを見ると恐ろしいとか思ってしまうけど、どうなんだろか。フランスがイスラム国家になったらアツい。
    後はイギリス人ていうか白人のえげつなさというか、エイもう中国は麻薬中毒にしてしまえとかもう酷い話ですよ。ゼロ戦で突撃じゃーとか言ってる日本が第二次大戦で負けるべくして負けるわけですよ。
    などと世界史というのは語る人の主観が入るから何度読んでも楽しいよね。

  • まったくすごい本である。人間存在というものをもしも、自分の子供に話し聞かせるなら、どうするか?と問われたら、この本を読み聞かせる、と言うだろうか。
    ビッグバンから現代史まで詳細に綴られている。
    章末にある詳細な文献案内、索引が付いているのが最高だ。
    語り口がいいので、ついつい惹き込まれる。章ごとに読むのもよし、一気に読むのもよし。大部の本だが、久しぶりに没頭して読めた。
    人間の未来はどうか?と言われると、この本を読んだ後では、どうも暗いと言わざるを得ない。
    人間も進化の途上にある一つの生物に過ぎないと思った。
    人間の次に登場する生物を想像してしまうのである。

  • 素晴らしい。

  • これはいい

  • ■第一部 〜ビッグバンから地球で哺乳類が栄えるまで〜

    太陽系の惑星を全部集めて1,000倍したくらいの大きさなのが太陽。その太陽のような恒星が2,000億個集まったのが天の川銀河。そんな銀河が1,250億個あるのが現在の宇宙。その宇宙をたったひとつの極小の点にまで圧縮したのがビッグバン以前の宇宙。137億年前、ビッグバンによってたったひとつの点が拡散、現在の宇宙となった。

    ビッグバン直後、宇宙には重力と素粒子があった。ビッグバンから30万年後、重力によって引かれあった素粒子が原子となった。原子同士も重力によって引き付けられ、恒星が誕生した。さらに1億年後、恒星も重力によって集まって銀河がかたちづくられた。

    ビッグバン以降、宇宙は膨張を続けている。もしその速度がゆっくりになるとやがて膨張はとまり、逆に収縮を始める。そうなると最後には再びひとつの点に収斂される。そして次のビッグバンへと移行する(以下その繰り返し)。しかし一方でビッグバンは次々と発生していて、我々のと違う宇宙が無限に生まれ続けているという考え方もある(マルチバース)。

    太陽は46億年前にできた比較的新しい恒星。太陽をマーブルチョコくらいの大きさだと仮定すると、太陽から一番近い恒星はそのマーブルチョコから145㎞先にあることになる(ケンタウロス座アルファ星系三重連星/4.3光年先)。

    太陽ができた頃の地球は太陽風に晒される灼熱地獄、一日の長さはたった4時間。しかし45.5億年前地球の将来を決定する大事件が。地球とその同じ軌道を回る惑星ティアが地球に激突したのだ。その結果…… ⅰ)ティアの核を形成していた鉄が地球内部に流れ込み地球の核と融合。地球は磁場シールドができて致命的な太陽風から守られることとなった。ⅱ)水素と酸素が水となって、分離して宇宙に飛散しにくくなった。ⅲ)月ができて地球の自転が安定、一日が24時間になった。

    地球に生命が現れたのが38億年前。その起源は不明だが、自己再生能力を持つ生命や地球にある大量の水は、木星の軌道をまわる彗星によって地球にもたらされたという説もある。

    シアノバクテリアが太陽の光を利用して光合成を始めた。シアノバクテリアから放出された酸素は地表の鉄と化合したのち、大気中でどんどん増えていった。酸素の一部はオゾン層となって太陽の紫外線をブロックするようになった。シアノバクテリアは二酸化炭素を吸着するので大気の温度も下がっていった。

    つづいてその酸素を利用する生物が誕生した。さらに異なる原核生物どうしがひとつに融合していった。すなわち大きめの原核生物の中に、小さな好気性原核生物が入ってミトコンドリアとなり、小さなシアノバクテリアも入って葉緑体となり、スピロヘータは外側にくっついて鞭毛となった。そうやって複雑になった原核生物は複雑なまま自己再生するため、細胞内にDNAを保存する核を持つようになった。真核生物の誕生である。

    真核生物は他の生物を取り込むだけではなく、捕食して消化したうえで自分が生き延びる素材として使った。しかし捕食者の体内で被捕食者のDNAが生き延びる場合があった。生き延びた被捕食者のDNAは、捕食者のDNAと対になって二重らせんを形成した。そうして減数分裂が可能になり、有性生殖を行うようになった。有性生殖による繁殖法を得たことで、生物はそれまでと比べ物にならないくらい多様、複雑に進化していくことになった。たとえばカンブリア紀でいえばオーストラリアのエディアカラ動物群、そして驚愕のバージェス頁岩動物群など。オルドビス期になるとカイメン、サンゴ、クラゲ、アンモナイト、ホヤ、ナメクジウオ、板皮類、ウミサソリ、カマス、肺魚などが栄えた。

    シルル紀では植物(コケ類)が水際に這いあがってきた。植物はやがて維管束を発達させ内陸に進出した。地下では根を菌類と共生させてより効果的に養分を摂取できるようになった。気孔の蒸散作用で高くまで水分をくみ上げることができるようになり、巨大に育つようにもなった。胞子ではなく種子で子孫を残すことによってより遠くへ広がっていけるようになった。

    植物が地上で光合成をすることで大気の酸素濃度がいっきに増えた(最大35%)。その結果今度は動物が陸に上がってきた。カギムシは昆虫に進化し空を飛んだ。昆虫はソテツの有性生殖を手伝った。昆虫が、そして線虫や菌類が土を育てた。

    魚は両生類となって上陸した。しかし水辺から遠く離れることはできなかった。そんなおり(3億年前、ペルム紀)、離れ離れにあった大陸がより集まり大きなひとつの大陸、パンゲアとなった。するとそれまであった海岸線がなくなって内陸が干上がった。ここで、強い皮膚が体内の水分を保ち硬い殻が卵の胚を守ることができる爬虫類(双弓類)が誕生した。両生類からは哺乳類の祖先となる単弓類も生まれた。

    しかしペルム紀の末(2億5千万年前)、シベリアの火山が大噴火。噴火は200万年以上続いた。追い打ちをかけるように巨大隕石が地球に衝突。地球は二酸化炭素とメタンガスが充満して超高温化。結果、全ての生物種の96%が死滅した。

    ペルム紀の大量絶滅を奇跡的に生き延びた爬虫類(双弓類)は恐竜へと進化した(単弓類は哺乳類に進化した)。歩いて移動できる恐竜はパンゲア大陸の覇者となった。そして環境に合わせて様々なかたちに進化していった………超巨大化したもの、小型ですばしこいもの、群れで生活したもの、肉食、草食………翼竜はスピットファイアくらい大きかった。逆に海に戻って進化したイクチオサウルス(胎生)もいた。このようにして恐竜は1億8千万年にわたって地球を支配した。

    1億3千万年前に突如として顕花植物が現れた。顕花植物は、花と果実を高度に進化させ種の繁栄に備えた。時を同じくしてハチや甲虫が現れ、植物の意図をくみとって受粉につとめた。動物も果実を食べて肥料とともに種子をまき散らした(ココヤシの果実は海を渡る/スナバコノキは爆発して100m先まで飛ぶ/オナモミは動物にひっつく/ドングリはリスによって土中に埋められたのち食べられるがいくつかは忘れられて生き残る/タンポポは風に乗る)。

    しかし6,550万年前、直径10㎞の巨大隕石がユカタン半島に衝突。インドの火山爆発とあいまって、地球を暗黒と猛毒の塵で覆った。これでほとんどの恐竜は絶滅した。

    恐竜で生き残ったのは小型で羽毛が生えているもの。彼らは鳥に進化した。恐竜がいなくなることで小型の哺乳類が台頭してきた。パンゲア大陸がローラシア大陸とゴンドワナ大陸に、そしてさらに細かく分裂していった。結果、様様な違った環境が生じることとなり、哺乳類はそんな環境に合わせてどんどん姿を変えていった。


    ■第二部 〜大規模な大陸移動による地球環境の激変、そして人類の誕生へ〜

    2,000万年前くらい、ゴンドワナ大陸の北東の一部が離れて漂流、現在のインドに行きついた。さらにそれは北に向かって地面を押し上げ、ヒマラヤ山脈を形成するにいたった。結果、インド洋で発生した大量の水蒸気はヒマラヤ山脈にさえぎられて大雨となった。大雨は二酸化炭素を溶かして海に流れ込んだ。二酸化炭素は海の中で炭酸塩鉱物として体積した。こうして地球の二酸化炭素濃度が劇的に減り、地球がだんだん冷却していった。

    また別の大陸の一部は現在の南極付近まで移動した。結果、南極付近の海水は停滞し、そのあたりの水温はどんどん下がっていった。南極大陸は凍りつき太陽光を反射した。気温はますます低くなり、海から蒸発する水蒸気量が減った。そのため降雨量も減少し、森林は廃れ大草原が広がっていった。

    南北のアメリカ大陸がつながり、それまで交流を持たなかった南と北の動物たちが接触した。結果、南アメリカ大陸に住む有袋類は全て駆逐されてしまった。それまで大西洋から太平洋に抜けていた暖かい海水はメキシコ湾を北上し、ヨーロッパの気温を10度上昇させた。そのまま海流は水蒸気を北極まで運んだ。水蒸気はそこで分厚い氷塊となって蓄積。さらに地球は寒冷化していった。氷河が発達しノルウェーのフィヨルドを、北米の五大湖を形づくった。海抜が低くなりドーバー海峡は歩いて渡れた(範囲は狭くなったが熱帯は相変わらず暖かかった)。

    遺伝子配列の研究によれば、600万年前〜500万年前にチンパンジーとヒト属が分岐している。320万年前のヒト属(アウストラロピテクス/猿人)の化石、ルーシーは直立二足歩行をしていたと考えられている。ところでルーシーの頭骨の容積はチンパンジーとさほど変わりがない。すなわちチンパンジーとヒト属の分岐は直立二足歩行ということだけにかかっている。

    240万年前のヒト属の化石ホモ・ハビリス(”器用な人”という意味/原人)は脳の容積がルーシーの倍(ホモ・サピエンスの半分)あって石器を使っていた証拠がある。

    200万年前、ヒト属のホモ・エレクトス(原人)がアフリカで誕生した。脳の容積はホモ・ハビリスの1.5倍。槍を使い頭髪、汗腺があった。肉を火で焼いて食べた。そして170万年かけてアジアまで歩いて広がった(北京原人もジャワ原人 (ピテカントロプス)もホモ・エレクトス)。

    35万年前にアジアでヒト属のネアンデルタール人(旧人)が現れた。ネアンデルタール人は逆にヨーロッパまで広がった。ネアンデルタール人の脳の容積は現代人より大きかった。彼らは言葉を喋り、指を器用に使いこなし、副葬品とともに死者を葬った。

    数十万年前アフリカにおいて、ヒト属のホモ・エレクトスからホモ・サピエンス(新人)が枝分かれした。ホモ・サピエンスは何らかの理由で一時激減したものの持ち直して世界中に広がった(地域に特化してそれぞれコイサン語族、コーカソイド(クロマニョン人)、モンゴロイド、アボリジニの4民族)。当時ネアンデルタール人を含めてほかに少なくとも5種類ヒト属がいたが、ホモ・エレクトスを除いてそれらは全て絶滅した。

    数万年の間、ホモ・サピエンスは狩猟採集生活を営みながら、病気も戦争もない平和な時代を生きた。

    1万4,000年前に氷河期が終わり間氷期となった。気温が上がり、海面が上昇した。そのぶん森林と草原が消えた。つぎに気温の急激な揺り戻しがあり、いっきに地球が冷えだした。それによって超巨大化していた哺乳類が絶滅(特にアメリカ大陸とオーストラリア大陸で)、あるいは小型化していった。ホモ・サピエンスも、恵まれた狩猟採集生活だけには頼れなくなった。

    1万年前、ホモ・サピエンス(現イスラエル辺りのナトゥーフ人)は生物の進化のプロセスをのっとり種の人為選択をしだした。つまり農業(農耕と牧畜)を始めたのだ。作物を育てる土地が生活の基盤となったため、放浪をやめて一か所に定住した。結果、出産制限する必要がなくなり人口が増えた。余剰人員は芸術家、商人、呪術師、政治家となった。家を作り、集落となり、町ができあがった。町と町は交流し、種子や黒曜石が行き来した。一方で人間は家畜由来の新たな病気にかかるようになった。


    ■第三部 ~世界各地で文明が花開く〜

    ①シュメール文明
    約5,000年前、シュメール文明において最初の文字(楔形文字)がつくられた。商人たちが必要にせまられて造りだしたものと考えられている。アッシュルバニパルの図書館より出土したギルガメッシュ叙事詩は、楔形文字によって書かれた最古の文学作品(紀元前1,200~1,300年)。シュメール人は他にも、7日で一週間、24時間で一日、12カ月で一年、12個で1ダース、円の一周360度、平方と平方根などを考え出した。車輪を発明し、宝飾品をつくり、金属を加工して武器や甲冑にした。法律を作って私有財産をめぐる争いを治めた。しかしシュメール文明は塩害と気候変動により消滅し、アッカド帝国に呑みこまれた。

    ②エジプト文明
    約6,000年前ころからエジプトの南が乾燥しはじめ砂漠が形成されていった。そしてエジプトの北に広がるのが地中海。エジプトはどちらからも攻められることがない地の利を得たことにより繁栄した。
    また、ナイル川は北向きが下流となっているので船を進めやすい。逆に南向きは風下となるので帆を立てればやはり船を進めやすい。この双方向の交通手段はピラミッド建造のための労働者を各地から招へいするのに役立った。
    もうひとつ。ナイル川は毎年氾濫するのでシュメール文明のように塩害を心配する必要がなかった。
    ギザの大ピラミッドは紀元前約2,500年くらいの建造物。紀元前1,270年ころ(ラメセス二世)にはヒッタイトとの戦争とアブシンベル神殿建立。

    ③インダス文明
    紀元前2,000年頃の遺跡、モヘンジョダロもハラッパーも現在のパキスタンにある。
    ハラッパーには上水道、下水道、床下暖房、二階の家があった。神殿も宮殿も見当たらず、貧富の差がなかったと考えられる。他には高度な鋳造技術、十進法。
    紀元前17世紀ころ大地震により滅亡。

    ④ヨーロッパにおける巨石文明
    ギザのピラミッドと同じころ。イギリスのストーンヘンジとエイヴベリー。トルコのチャタル・ヒュユク。マルタ島のハジャール・イム神殿とイムナイドラ神殿。男女平等、争いのない世界。

    ⑤ミノア文明
    クレタ島、首都はクノッソス。ミノス王の宮殿の地下にはミノタウロスが閉じこめられていた。男女平等。”牛飛び”スポーツの壁画。
    サントリーニ島のアクロティリ遺跡。素晴らしい壁画(女、イルカ、つばめ、百合、青い猿、ボクシングする少年たち)。素焼きの土器。土管を用いた下水道。上水道は冷水と温水が使えた。
    紀元前17世紀、サントリーニ島の火山噴火により高さ150mの津波が発生。ミノア文明は滅亡した。

    ⑥金属、馬、車輪
    家畜の群れをつれて南ロシアを移動する遊牧民たちは地震や津波の被害を受けなかった。羊、山羊、豚、牛のみならず、馬を家畜化して物資を運んだ。円盤型だった車輪をスポーク式に改良した。銅と錫から青銅を鋳造した。そして戦車ができあがった。このころから、より力を持つ民族が弱い他民族を征服するようになった。ヒッタイト人は鉄の鋳造を得意とし、馬と戦車を使って戦った。しかし彼らは謎の”海の民族”によって滅ぼされた。

    ⑦ミケーネ文明
    ミノア文明を踏襲したのがミケーネ文明。しかしミノア文明の壁画では動物たちは喜びを与えてくれるものだったのに対し、ミケーネ文明の壁画ではたんなる獲物としてしか描かれていない。紀元前1,200年ころ、ミケーネ王アガメムノンと小国連合がトロイアと戦争になった。

    ⑧中国文明
    中国文明を支えた三つのもの。ⅰ)米……米はどんな作物よりも多くの人間を養うことができる。また害虫に強い。それに水田は養分を全体に行きわたらせやすい。ⅱ)絹……絹の製法は紀元前二千年以上前から門外不出。西暦550年にヨーロッパに伝わるまで中国の絹は超ぜいたく品、絹との貿易のためシルクロードが栄えた。ⅲ)鉄……溶鉱炉を使った鉄製品は農機具が主だった。紀元前から大量の鉄を製造しており、西洋がその規模に追いつくのは18世紀になってから。

    ⑨オリエントの戦争
    気候と降水量の変動により遊牧民は新天地を求めるよりほかなく、その結果、移動先で異なる民族の間の衝突、戦争が頻発することとなる(前5世紀のヘロドトス『歴史』や『旧約聖書』などによる)。
    ………アブラハムは正妻サラとのあいだには子供が生まれず、女奴隷のあいだにできた子イシュラムが12人の子供をもうけてアラブ人の祖先となった。
    しかしそののち正妻サラにも子供が生まれ、孫ヤコブは12人の子供をもうけて(12支族)ユダヤ人の祖先となった。イスラエル王国はサウル王→ダビデ王→ソロモン王を経たのち12支族が分裂。アッシリアのサルゴン2世に征服された。
    ………そのアッシリアは北と東からスキタイ人とキムメリオス人に攻められサルゴン2世は戦死。息子のセンナケリブは南方に位置するバビロニア王国に兵を進め侵略した。センナケリブは毒殺され、その息子のエサルハドンは父が破壊しつくしたバビロニアを再建した。その後エサルハドンはエジプトを征服、エジプトからインドにおよぶ大帝国をつくった。そのまた息子のアッシューニバニバルは楔形文字が刻まれた粘土板2万枚を収蔵した図書館をニネヴァに建設した。
    ………しかしアッシリアは依然としてスキタイ人やキムメリオス人に攻められ続けており次第に弱体化。さらにバビロニアが力を取り戻しスキタイ人と同盟を結んでアッシリアのニネヴァを奪回。ついにアッシリアは滅亡。そして新バビロニア王国が成立した。
    ………新バビロニアの王ネブカドネザル2世はユダ王国の神殿を破壊し、謀反を企てたゼデキア王の家族を王の目の前で惨殺したうえで王の両目をくりぬき、他の貴族らとともに捕虜とした(バビロン捕囚)。
    ………一方、ペルシアのキュロス2世はメディア王国、リディア王国を破り小国を併合して、ペルシャは大帝国となった。キュロス大王は新バビロニア王国の征服にも成功した。その際バビロニアに囚われていた諸民族は解放された。ユダヤ人たちもイスラエルに帰還することが許されのみならず、ネブカドネザル2世に破壊されたユダヤ教の神殿の復興費用まで与えられた。キュロス大王は自身がゾロアスター教信者であったにもかかわらず、他宗教にも寛大で信仰の自由を容認、また奴隷制度や強制労働を否定したのだった。しかしキュロス大王は、スキタイ人のマッサゲタイ族との交戦中、女王トミュリス(二人の息子をペルシア帝国に殺されている)に殺され首を刎ねられた。ただしその後もペルシア帝国は200年間も繁栄。ダレイオス1世時代にはスエズ運河を建設、現代のエジプト、ギリシャからアフガニスタン、パキスタンまでを支配した。
    ………そのダレイオス1世は厄介なスキタイ人との抗争にピリオドを打つべく、ギリシアから黒海の北を通ってスキタイ人を後方から撃とうとした。しかしギリシアではアテナイ(マラトンの戦い)やスパルタ(レオニダス王、映画『300』)がペルシア帝国に反抗した。ダレイオス1世の死後、その跡を継いだ息子のクセルクセス1世はいったんはギリシアから退却し翌年また攻め入ったが、結局はギリシャの都市国家連合軍に敗れ、ヨーロッパから掃討された。
    ………こうしてギリシアは滅ぼされることなく、この後西洋文化の礎を築く大役を果たすこととなった。またヨーロッパとアジアはユダヤを巻きこみながら、どこまでいっても光の見えない混乱と衝突の暗渠に迷い込んでいったのだった。

    ⑩ギリシアの都市国家(ポリス)
    オリーブの持つ力を背景に、ギリシアでは数多くの都市国家が繁栄した。
    ミレトスではタレスが遊星の動きを解明、皆既日食が起きる日時を予測した。
    アテナイのディオゲネスは犬の生活を理想とした。ソクラテスは無知の知を説いた。プラトンは人間を、民主主義を攻撃した。アリストテレスはあらゆる知を探求しようとした。ソロンはdraconianなドラコンの法律を廃止、貴族の力を残しつつ民衆も政治に参加させるという新しいかたちの政治に挑戦した。
    スパルタでは子供たちに極端なスパルタ教育が施された。
    オリンピアではスポーツの競技大会が始まった。

    ⑪ヘレニズム文化
    マケドニアのフィリッポス2世、そしてその死後は、20歳で即位したアレクサンドロス大王がギリシア全土を支配下に置いた。またペルシアを破り、エジプトにアレクサンドリアを築いた。そしてスキタイとアフガニスタンを征服した。しかし生涯の友で恋人でもある軍の指揮官ヘファイスティオンが病死すると狂気に取りつかれるようになり、自身もその8か月後に(おそらくマラリアで)亡くなった。アレクサンドロスの帝国はその後、ギリシア(アンティゴノス朝)、トラキア(リュシマコス朝)、シリアからペルシア(セレウコス朝)、エジプト(プトレマイオス朝)の4王国に分割された。
    アレクサンドロス大王がオリエント全域とエジプトを征服した結果ギリシア語がその一帯の統一言語となり、ギリシアで生まれた科学、哲学、技術が各地に広まった(ヘレニズム〜”ギリシア風の世界”という意味〜)。ヘブライ語版しかなかった聖書もギリシア語に訳されユダヤの枠を越えることとなった。アルキメデス、エラトステネス(地球の全周と月までの距離を測った)、ユークリッドはギリシアの学者だが、エジプトのアレキサンドリアに建てられた王立図書館で多くを学んだ。

    ⑫ローマ帝国
    ローマ帝国は戦争に勝ち続け、戦利品と奴隷を奪いとることによってまたたくまに栄華の頂点に昇りつめた。………アスクルムの戦い(vsエピロス、”ピュロスの勝利”の逸話を残す)。ポエニ戦争(vs北アフリカのカルタゴ、シチリアを奪い取る)。カンナエの戦い(vsカルタゴ、カルタゴのハンニバル将軍が活躍)。ポンペイウス将軍によるギリシア、オリエントの征服。シーザーによるガリア(現在のフランス)の諸民族との戦い。オクタヴィアヌスによるエジプト(プトレマイオス朝)の征服(クレオパトラ、アントニウスは自害)。ブリテン島も支配下においた。
    しかし戦いに勝ち続けると次第に侵略すべき敵国がなくなってきて経済が停滞する。支配階級はその生活水準を維持するために奴隷階級を厳しく弾圧した。当時ローマの人口50万人のうち40%が奴隷。DⅭ73年に剣闘士スパルタカスらが脱走、奴隷を含めた12万人の反乱軍とローマ帝国(執政官クラッスス)と闘ったが、生き残った反乱軍6,000人は全員磔にされた。
    また膨大な数の市民をまとめるためには、軍隊、土木工事、見世物が奏功した。
    志願兵は職業軍人となり各地に駐屯させられた。ガリアにいたシーザーはそんな自らの軍隊と”ルビコン川を渡”ってポンペイウスと元老院に宣戦布告した。ポンペイウスは結局、逃亡先のエジプトでプトレマイオス13世に殺され、シーザーは独裁者として君臨。しかしそんなシーザーも最後はブルータスを含む暗殺団にめった刺しにされ殺された。
    貧民と奴隷は建築工事に駆り出された。特に目覚ましい建築物は50㎞に渡って続く水道橋(ポン・デュ・ガール)。また85,000㎞におよぶ街道(そのほとんどは直線道路)。そして5万人の観客を収容できるコロッセウム(主な出し物は剣闘士同士の戦い、処刑、1万頭以上の動物のなぶり殺しなど)。また貧民と奴隷は鉱山での採掘にも使われた。鉛は水道管や鍋にふつうに使われ、知らず知らずのうちにローマ人の内臓を蝕み、精神を狂わせた。
    ユダヤ人は、アブラハムとモーゼが神と交わした契約により自分たちだけが神に認められた民族だと固く信じていた。しかしそこにユダヤ人の王と崇められるイエスが現れ、自分の言葉を信じれば肌の色や人種に関係なく誰でも永遠に救われると説いた。ディオクレティアヌス帝は拡大するキリスト教を厳しく弾圧した。が、次のコンスタンティヌス帝は勢いには抗いきれず、キリスト教を国教として認めた。しかし権力からお墨付きが得られると今度はキリスト教徒が異教徒を残酷に迫害するようになった。
    ゲルマン民族の侵入、フン族の襲来、鉛中毒、疫病などが原因で476年、ついに西ローマ帝国は滅亡した。


    ……………つづく

  • 【貸出状況・配架場所はこちらから確認できます】
    https://lib-opac.bunri-u.ac.jp/opac/volume/62893

  • 非常に情報量の多い本だったので、読破するのに結局一年くらいかかった、分量こそ多かったが飽きずに楽しめた。
    地球の歴史の大まかに学ぶには素晴らしい本だと思う。

  • 類書も多いが、本書が契機であったと認識。企画時点で既に面白い。写真や図はもっとずっと充実すべき。図鑑レベルにそれが欲しいところ。

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