古事記日本書紀の解説本は読んだことがありますが、その時はわかったつもりでも振り返るとしっくりこないことばかりなので、もっと易しい初心者向けの本を探していたら本書を見つけました。
古事記の中でも出雲神話の部分に焦点が当てられ、とっつきやすいし分かりやすくてためになりました。
特に解説部分がいいんです!著者独特の解釈の説明に納得感があり、すっきりする箇所多数。。
中でも一番印象に残ったのは、「人間」の存在です。
古事記の神話に登場するのは神ばかりで人が活躍することはありませんが、地上には最初から人が棲んでいるのです。そのことをはっきり教えてくれたのは本書がはじめてでした。
ちなみに「人」の起源を語るのが、イザナキが桃の実を追っ手に投げつける場面に青人草が登場し、これが「青々とした人である草」だとのことで、人は草だったという発想のもと書かれたものと思われるそうです。。
それから、ここに取り上げられた8つの神話のうち、スサノヲがヤマタノヲロチを倒す神話は特に興味深い解説がいっぱいでした。
以下まとめておきます☆
ヤマタノヲロチの正式名は「コシノヤマタノヲロチ(高志之八俣遠呂知)」
八つの頭と八つの尾、木々が生えた体を持ち、腹は血がにじんで赤くただれてる生き物として描かれています。
このヲロチの正体は氾濫を繰り返す島根県の斐伊川(ひいかわ)の暴れ川をさしているそう。自然神としての恐ろしい川の神なのです。
(多頭多尾は支流の幾つもの流れを、胴体の木々は川の両岸と土砂を、腹が赤いのは斐伊川が鉄の産地ゆえ鉄分が多く山肌や川水が赤かったことを表している)
ヲロチ退治神話の構造は、
今までは、娘の両親が毎年娘をヲロチに差し出して(食べさせていた)いたものを、スサノヲに差し出すこと(嫁がせた)に変えたに過ぎません。
では何が違うかと言えば、スサノヲが人文神として人の姿をとる神であるのに対し、ヲロチは自然神です。
水をもたらす川の神ヲロチは娘を消費するだけですが、スサノヲは食べるのではなく結婚することによって、もう一つの実りを与えてくれる存在だということです。
それゆえにこの神話は、結婚の起源を語る神話にもなっているそうです。。
有名でなじみ深い話なのに、ヲロチの正体も神話の意味も、初めて知りました。感動~
いくら簡単に書かれた訳本でも、時代背景や古事記編纂の動機など、いろいろな前提の上で丁寧に解説してくれる本はなかなかありません。
そういう意味でもこの本は、神話をかいつまんだだけのものではありますが、私にとってはかなり良書。古事記を少し理解できました。
また再読したい1冊です♪
ちなみに、著者は三浦しをんさんのお父様だそうです。びっくり!