- Amazon.co.jp ・本 (237ページ)
- / ISBN・EAN: 9784163809304
感想・レビュー・書評
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特に容姿に恵まれているわけでもないのに、女性に好かれてしまう三波敏行。男性ならだれでもうらやましがるであろう、この特技(?)だが、学生時代は女生徒に追いかけられ、女教師に色目を使われ、同性にはつまはじきにされるという悲惨な状況。社会人となった今も、それは変わらず、女の付きまといと同僚の敵意を逃れるため、職を転々とする有様。
そんな三波が街中で受け取ったティッシュから、落ちてきた1枚の紙切れ。 「あなたの経験や技能などの『能力』を、あなたにはない誰かの『能力』と交換いたします」 と書かれたその紙には「ばくりや」という店名と、住所が書かれていた。
半信半疑で、その店を訪ねた三波。そして彼は、女性に好かれるという能力を失い、新しい能力を手に入れたのだが……。
「ばくる」というのは、北海道の方言で「交換する」ということのよう。
「女性に異常に好かれる」「雨男」「就職先がいつも倒産」「戦力外通告されたプロ野球選手」……などなど、自分自身の特異な能力(?)を持て余している者たち。彼らは様々な媒体を通して「ばくりや」の存在を知り、自分の能力と引き換えに、新しい何がしかの力を得ていくのですが、どんな力と交換するのかは、適性次第。例えば、「舌でサクランボのジクを結ぶ特技」と「オリンピック級の身体能力」の交換だってあり得るくらいです。
最初の話が超ブラックだったので、そんな内容かと思ったら……そうでもなくて、あの手この手で来るから、飽きずに楽しく読めます。個人的には泣き虫の男が主人公の「さよなら、ギューション」。あったかくって、切なくてよかった。そして、ラストがまた、予想を裏切る内容で……。
乾ルカさん、お初でしたが楽しめました。中学生というより、高校生~大人といったところでしょうか。友だちに「なんか、おもしろい本ない?」と聞かれたら、すすめたいと思います。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
「あなたの経験や技能などの能力を、あなたにはない誰かの能力と交換します。」を謳い文句にする商売「ばくりや」。自分の特異な能力に悩む人たちがやってくる。
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面白い話だった。こういうのは、もっと後味悪くできる設定だと思うが、なかなかいいところで落ちている。幸せな気分になれるかは別だが。
特殊な能力を、別の誰かの特殊な能力と交換できるお店、『ばくりや』を訪れる人々のお話。
女に異常に好かれる能力、移動先で必ず荒天になる能力、就職先が倒産してしまう能力、剛速球を投げられる能力、ちょっとしたことでも泣くことができる能力、間の悪い能力、キリのいい能力。様々な能力をもつ登場人物が出てくるが、『逃げて、逃げた先に』が一番好きだ。
後味がいいのは、『ついてなくもない』だろうか。スッキリするのは『狙いどおりには』。
吉良は怪力のガチムチに掘られるフラグだろwwと思うのは腐女子脳であろうか…。(すみません) -
主人公たちは、自分の持っている特殊な力のことで、かなり悩んでいるところへ「ばくりや」のチラシを見てそのお店を訪ね、能力を他の能力・技能と交換します。
確かに、悩んでいるところにあのチラシを見たら、藁にもすがる思いになるだろうという気持ちと裏腹に、もっとその能力のことをポジティブに考えたらいいのにとも思いました。悩んでいる側からすると、人の気も知らないでということになるのでしょう。
「さよなら、ギューション」の編では、異常に泣き虫だった彼がその能力を取り替た後、大切なものを失い涙するシーンが出てきますが、その涙は大切な人を失ったことで泣いているのか、自分のことで泣いているのかとても悩みました。
「ついてなくもない」と「きりの良いところで」の編では、どうしてそれを「運がいい」と考えることができないのかと思いました。
考え方を少し変えるといいんじゃない、それに交換後の彼らは本当に幸せかどうか…そう考えるときりがないけど、特殊な力のない凡人からすると、ちょっと贅沢な悩みだと思えました。でも確かに、持って無くてもいいような能力もありましたけどね。 -
世にも奇妙っぽいおはなしで面白い。1話目は先が読めたからずっとこんな感じだったらいまいちかな、と思ったけどパターンがいろいろで飽きなかった。最終話も結末はベタなんだけど、それを予想させない展開。連作短編で一気に読める。
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ご不要になったあなたの能力お取り替えします。北の街の路地裏に、その店はあった―。ハンサムでもないのに異常に女にもてる、就職した会社が必ずつぶれる。古い自分を脱ぎ捨てるため、「ばくりや」を訪れた者たちの運命は。
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7編の短編集。
最後のオチが、以外で面白かった。 -
後半の方になるとオチがどんどんシュールになっていくような・・・
1編1編もっと長かったらいいのになと思いつつ、
この絶妙な短さが余韻を残していいのかも。