- Amazon.co.jp ・本 (252ページ)
- / ISBN・EAN: 9784163822105
作品紹介・あらすじ
一人の男を巡る妻と愛人の執念の争いを描いたブラックな話から、読書クラブに在籍する高校生の悩みを描いた日常ミステリー、大学生の恋愛のはじまりと終わりを描いた青春小説、山の上ホテルを舞台にした伝奇小説、酔いつぶれた三十路の女の人生をめぐる話、少年のひと夏の冒険など、さまざまなジャンルを切れ味鋭く鮮やかに描く著者初の短編集。著者によるあとがきつき。
感想・レビュー・書評
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『このたびはとんだことで』は美しい景色と表現に満ちた、色のないセカイ。
『青年のための推理クラブ』は桜庭さん曰く『青年のための読書クラブ』の“幻のパイロット版”。最初は完全に騙されました。まだ読んでない『青年のための読書クラブ』を読まないと◎
『モコ&猫』は、一番好きな作品。誰にでも、あるものなのだろうか、こんな恋が。
そして、言葉は悪いけれど、個人的にあまり好きではない作品が『五月雨』
昭和60年というわたしの生まれた年で、2年通った学校のすぐ近くの山の上ホテルが舞台なのだけれど、いきなり作風が変わったようで、その変化にわたしがついて行けなかったのか、最初の3作品で掴まれていたのが急に置いてけぼりにされたような気になったのか、あまり作品の世界に入ってゆけなかった。
『冬の牡丹』は『私の男』のすぐ近くの作品らしいのだけれど、この2作品を並べてみると、桜庭さん、この頃恋をしていたのかな?とそう思う。『私の男』ほど、不穏な空気は流れていない。
『赤い犬花』はこれまでにない冒険譚。『伏 贋作・里見八犬伝』に近いかなあ。
個人的には、短編でもいいから、桜庭さんお得意の年代モノも読みたかったなあ。
『いったいどうすれば、ほんとうに一生懸命生きる、なんて奇跡のような芸当ができるのか。わたしたちがどう戦えば、あなたたちは満足するのか。わたしたちを赦してくれるのか』 -
それにしても桜庭さんは、
思春期の少年少女たちの苦悩や葛藤、
怒りとも希望ともつかないぐるぐる回る感情を持て余す、
パステルカラーのホラーな時期を描くのがほんと上手い。
死んだ男の骨をめぐる本妻と愛人との静かなる戦いを、骨壺からの固定視点から描いているのがまさに演劇的で妙なおかしみがある異色の一編(笑)
『このたびはとんだことで』、
やっぱこの世界観好きや~(笑)
「青年のための読書クラブ」構想中に実験的に描かれたパイロット版。登場人物たちがお互いを好きな作家のファーストネームで呼び合い、ヴィクトリア朝のヨーロッパにいる青年のふりをして語り合うという、読書好きの少女たちに胸がきゅい~んとなります(笑)
『青年のための推理クラブ』、
舞妓はんの脂取り紙を常時持ち、
ぶっ飛んだファッションをした
ゴマ油の瓶に似た(笑)女の子に恋をした男の、一風変わったストーカー的恋情がなんとも切なく痛かった
『モコ&猫』、
美人でしっかり者だが、生真面目で面白くない性格のせいで嫁に行き遅れている32歳の山田牡丹と
アパートの隣に住む老人とのプラトニックな交流をユーモラスに、
どこかエロチックに描いた
『冬の牡丹』、
ある夏の田舎町、都会から来た少年と村の少女が、神隠しに遭い亡くなった少女の秘密を探るため
山の奥深くへと入っていく、ひと夏の冒険譚。風や匂いまで伝わってくる田舎町の風景描写と桜庭さん初の幼い少年による語りが新鮮で胸を打つ
『赤い犬花』
などバラエティー豊かな全六編。
収録されたどの作品にも共通する
のは、限りなく繊細な魂たちを描いていること。
だからこそ、そこに込められたものが切実に胸に響くのだ。
桜庭作品の特徴である豊かな色彩表現と嗅覚に訴求してくる描写、
魅力的で唯一無二なセリフ、
一つの作品に同居するシリアスとお茶目の絶妙なバランス、
たとえ現実離れしたストーリーであっても共感せずにいられない切実で血の通ったキャラたち、
そして臆病で脆弱な者たちの足掻きを描くことで読者の心を揺さぶり続けるエモーショナルな世界観など(だからこそ桜庭作品は読後の余韻に浸れるし、本を閉じても物語から離れられない)、
エロティシズムとリリシズムが溶け合わさった桜庭さんの美学が
短篇集でありながらも十二分に堪能できる作品なので、
桜庭一樹初心者にもオススメです。 -
連休中の暇潰し用に借りた図書館本。
久々に著者の本を読んだけど、短編〜中編で読みやすかった。この方の本は独特の後味があって、読み終わった後に少しの苦味が残る感じがいいなぁと思う。冬の牡丹が今の自分にドンピシャで良い。おじさん?おじいさんは、私の中で火野正平のイメージ。 -
桜庭一樹さん初読。児童文学的?な語り口と着地点が見えず心に迫る感じが不思議。『モコ&猫』『冬の牡丹』『赤い犬花』がよかった。
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桜庭さんの小説は残酷です。現代の人と人の繋がりの刹那さが、ヒリヒリと伝わってきます。家族も恋人も愛人も仇も友達も隣人も…関係の濃密さと儚さ・脆さが共存してるのです。リーダビリティが高いので読んでいる間は面白く、読了後に引き摺るいつものパターン。苦手な作家さんなのに読んでしまう、麻薬性がある(^^;; ただ一つ、登場人物のネーミングセンスだけはどうにかして欲しいけれど、これがフィクションだと気づかせてくれるファクトリーなのかもしれませんσ(^-^;) どれもとても面白かったのですが、「このたびはとんだことで」「モコ&猫」「冬の牡丹」「赤い犬花」がよかった。
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やっと読めた桜庭さんの短編集。
桜庭さんらしい文体とお話の数々。やばい。これはいい。やばい。
年代が大分バラけてたのでこれ書いたのはあの頃かなーっ?って思ったら結構当たってて嬉しい。
短くて読みやすいし桜庭さんのいままでの作品の総集編みたいな感覚で読めた。
長編を読みなれてるから物足りない気もするがこれはこれでいいとおもう。
また溜まったら出してほしい。
犬花が初期の少女小説かスタンドバイミーみたいで素敵だった。はじめての少年小説だけど男の子も書けるんじゃん!!という新しい驚き。新鮮で素敵。でした。
牡丹も好きだ。-
「これはいい。やばい。」
出たばっかりだけど、文庫化待ち中でした。
「やばい」と聞いて、急に読みたい度が高くなったので、図書館に予約!「これはいい。やばい。」
出たばっかりだけど、文庫化待ち中でした。
「やばい」と聞いて、急に読みたい度が高くなったので、図書館に予約!2013/06/26
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無性に桜庭さんの作品が読みたくなり、読了。
この方が書く言い回しは独特なリズムを持っているようで、そこがまた癖になります。その癖が最大限に発揮されている短編集だと思います。
特にモコの話が最高に素敵でどこかおどろおどろしい雰囲気で、大好きでした。 -
『私の男』が面白かったので読んでみた。
『私の男』はテーマがテーマだけにドーンと重かったけれど、こちらはサクサク読める。悪く言うと何も残らない…とも言えるのかもしれないけど。
収蔵されている『冬の牡丹』の、30代女性と初老の男性のゆる~い関係が羨ましい。
濃厚な家族とか恋人とかではなく、なんとなく気になって一緒の時間を過ごす。独り暮らしの楽しさと寂しさが伝わってくる。 -
ゴシック、を読むのはいまは気分的にちょっとなぁ、と思ったときに出会えた一冊。
かなり満足しました。通勤時には読みにくいので、休日にゆっくり読みました。最初は男性の話かなと思わされた女子高?の短編が1番良かったかな。
たしか作者は女子高出身ではなかったような・・。
naonaonao16gさんのお仕事についてはレビューで伺った限りですが、桜庭さんなら『砂糖菓子の弾丸は撃ちぬけな...
naonaonao16gさんのお仕事についてはレビューで伺った限りですが、桜庭さんなら『砂糖菓子の弾丸は撃ちぬけない』などはいかがでしょうか。
GOSICKが有名ですが、桜庭さんはこうした鈍色をした作品も上手いのです。
コメントありがとうございます!
いやはや、わたしより年下の方でしたか!(笑)
「砂糖菓子~」ブクログを一時おやすみし...
コメントありがとうございます!
いやはや、わたしより年下の方でしたか!(笑)
「砂糖菓子~」ブクログを一時おやすみしていた頃、拝読しました。あの作品には衝撃を受けましたね。バイブルのようにしていた時期がありました。
コメントを通して、また読んでみようかなーと思いました。ただ、ちょっとエネルギー使うんですよね…(笑)
「鈍色」というのはすごく的を得た表現です!わたしも桜庭さんの作品は「私の男」とか「砂糖菓子~」などの方が好きですね。
内容がうろ覚えですが、「道徳と言う名の少年」や「ばらばら死体の夜」「傷痕」なども以前読みふけってました。