キャパへの追走

著者 :
  • 文藝春秋
3.51
  • (6)
  • (19)
  • (25)
  • (2)
  • (1)
本棚登録 : 145
感想 : 21
本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています
  • Amazon.co.jp ・本 (318ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784163902609

作品紹介・あらすじ

キャパがその激しい一生で捉えた一瞬の数々、その足跡を辿り、同じ現場に立つ。◆写真史上もっとも有名な作品のひとつ「崩れ落ちる兵士」をはじめ、数多の名作を撮影した伝説の戦場写真家、ロバート・キャパ。著者は学生時代よりキャパにシンパシーを抱き、評伝の翻訳、写真集の監修など、その生涯を追い続けてきた。2013年の『キャパの十字架』では、「崩れ落ちる兵士」の撮影の真相に迫り、その作品の秘密がキャパに背負わせた“十字架”を感動的に描き切った。本書で著者は、キャパが故国ハンガリーを出てから、最期の地インドシナに至るまでの人生すべての旅路をたどり直す。キャパが生涯で残した数多の写真の撮影場所を可能な限り探し歩き、同じ角度で現在の光景を撮影したのだ。キャパの実質デビュー作であるデンマークでのトロツキーの撮影から、運命のパートナー、ゲルダ・タローと出会ったパリ、スペイン戦争での数々の名作、第二次大戦のノルマンディー上陸作戦やパリ解放、唯一の来日から最期の地インドシナまで、著者は世界中を旅して、キャパがレンズを通して見たものを追体験する。そして旅の最後には、ニューヨークに眠るキャパの墓へ……。世界中を追う「キャパへの旅」で、キャパが歩みつづけた「勇気あふれる滅びの道」すべてを巡礼することで、人間・キャパの全体像が見えてきた。著者の永年にわたるキャパへの憧憬を締めくくると同時に、今までにない形の紀行・人物ノンフィクションを提示する大作。

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  • ロバート·キャパの人生と作品をなぞって、沢木さんが旅をしながら撮影された内容。
    こういった趣味はオシャレだなー、という印象。旅の中での人との関わりも描写されている面白い。

  • ☆キャパの写真の撮影場所を訪ねて。『キャパの十字架』とはまた別の味。

  • 沢木耕太郎がキャパが撮った写真の場所を訪ね、同じ構図で写真を撮り比べてみたい、として文藝春秋に長期に渡り連載されたものに、新しい写真を加えてまとめたもの。
    著書「キャパの十字架」で、キャパの代表作「崩れ落ちる兵士」は、本当に撃たれた兵士を撮ったものではないという説を立てた沢木のキャパへのオマージュ。インドシナで亡くなる直前に滞在していた日本・東京駅の写真から始まるこの本には、沢木のキャパに対する熱い思いが溢れているように感じる。

  • 第2次大戦に活躍した写真家ロバート・キャパを追いかけるノンフィクション。
    キャパは沢木さんのライフワークなんでしょうね。翻訳もいくつかあるようですし、この作品の発端になった「キャパの十字架」もあります。
    「キャパの十字架」がキャパの1枚の写真”崩れ落ちる兵士”の謎について400頁を費やした作品なのに対し、こちらは39枚の写真が撮影された場所を訪ね、同じアングルで写真を撮るという企画です。そして1枚の写真に数ページの文章が付けられています。
    実はもっと紀行文的な作品だと思ったのです。各地を訪問し、そこで触れた文物について語る。それも沢木さんの得意分野です。しかし、実際には文章のかなりの部分がキャパの行動記録です。沢木さんのキャパに対する思い入れの強さなのでしょうが、とはいえキャパの人間性にまで踏み込んでいるところは少なく、伝記としては不十分です。キャパやその写真に思い入れがある人には楽しめるかもしれません。でも私にとってはキャパを知るという事にも、紀行を楽しむという意味でも中途半端に感じました。
    写真も小さすぎます。多分そのせいでしょう、沢木さんの言う「凄さ」が伝わってこないのです。
    大好きな沢木さんなので期待していたのですが、ちょっと残念です

  • 「崩れ落ちる兵士」。スペイン内戦時に撮影された1枚の写真は、
    素寒貧だったユダヤ系ハンガリー人の成年を一躍有名にした。

    ロバート・キャパ。40歳でインドネシアに散った写真家を代表する
    作品は多くの謎を秘めていた。たった1枚の写真の真実を追う旅
    を描いたのが2013年に発行された『キャパの十字架』だ。

    本書はその姉妹編というところか。40年という生涯のうちにキャパ
    が遺した作品のなかから39の写真が撮影された場所を訪ね、
    キャパの足跡を追っている。

    前作の『キャパの十字架』もだが、私の紀行文のバイブル『深夜
    特急』に始まり、沢木さんの旅は本当に憧れるわ。

    写真に切り取られた風景や建物を頼りに、列車に乗り、バスに乗り、
    タクシーに乗り、街を歩く。

    そして、その当時のキャパを思い、撮影された時代を考える。なんて
    贅沢な旅なんだろう。

    勿論、キャパが撮影した頃と、沢木さんがその街を訪ねた時期では
    風景も建物も違っている場所もある。それでも、当時のままの姿で
    残る場所があるんだよね。

    キャパが立った場所、その同じ場所に立つ。いいなぁ、私もやりたいわ。
    但し、時間とお金があって、言葉が出来れば…だけど。

    どの章も味があっていいが、「雨のパレルモ」と題されたシシリー島で
    の話がいい。レストランのウェイターは粋だし、写真を片手に街の風景
    を見比べているとワラワラと人が集まって、車が通れなくるほどの黒山
    の人だかり。

    その時、沢木さんが手にしていたのは第二次世界大戦時にシシリー島を
    解放した連合軍を、歓呼で迎える人々を写した写真。偶然にも沢木さん
    も、シシリーの人々に取り囲まれちゃったのね。

    終章はキャパ終焉の地であるインドネシアではなく、ニューヨーク郊外
    にあるキャパの墓。この墓地への巡礼の文章が途轍もなく素晴らしい。
    読み終わって、しばらくの間、感慨に耽った。

    キャパを追う、長い長い旅。沢木さんの裡では、本書で一旦、ピリオド
    なのかもしれない。

  • この本は、「キャパの世界、世界のキャパ」という文藝春秋での連載を1冊の本にまとめたものです。この連載では、キャパが撮った有名な写真の現場に行き、同じような構図で撮った写真を並べて載せたものです。

    しかしこの連載の真の目的は「崩れ落ちる兵士」が取られた場所を特定し、本当に兵士が打たれた写真なのかという疑問の答えを出すというもので、その答えは、「キャパの十字架」という別の連載となったそうです。
    筆者も言っていますが、「キャパの十字架」はスピンオフの作品ということになるものの、どちらが「本体」でどちらが「派生物」かを判定するのは、難しいところがあります。

    この本では、気の赴くままに世界各地をまわり、写真が取られた場所を探し出すという感じで、キャパの十字架のような切迫感がありません。だからと言って面白くないわけではなく、気軽に紀行文を読む感じで、なおかつ作者のキャパへの思いも感じられる本です。沢木耕太郎のロバート・キャパへの思いが伝わる本です。

  • 考えてみれば、capaというカメラ雑誌があるのは知っていたけれども、それが写真家に由来しているものだとは知らなかった。
    戦火でしか自分らしい表現できなかったキャパ。その疾走は40年と短いものだった。自分ももう40を超えたが、これだけ濃密な人生を歩んでいるだろうか。

  • 2016年12月16日読了

  • 伝説的存在として今も語り継がれるカメラマン、ロバート・キャパ。
    その代表作の一つ「崩れ落ちる兵士」の謎を追ったノンフィクション作品、『キャパの十字架』。
    https://booklog.jp/users/makabe38/archives/1/4163760709

    印象深かったこの作品の著者、沢木耕太郎が、「キャパの写真が撮られた地に行き、同じような写真を撮る」という雑誌の企画。
    その連載をまとめたのが、この作品です。

    先にこの企画があり、その中で「崩れ落ちる兵士」の部分だけで膨大な内容になったため、『キャパの十字架』にまとめたというのが、制作上の順番だったそうです。

    本書ではまず、キャパの生涯を俯瞰するような形で振り返っています。
    以降は雑誌連載時の文章をベースに、1枚の写真について数ページのボリュームで、その写真が撮られた背景と、著者が撮影地を探す過程が描かれています。

    「戦争」という題材を得た時に、特に輝くキャパの写真。
    そのため、戦地を求めるように活動拠点を転々とする、キャパ。
    そして名声が高まるにつれて、派手な生活をするようになったキャパの生涯が、再現されていきます。

    読み進めていくうちに、20世紀の前半がどのような時代だったのか、匂いを感じとれたような気持ちにもなれませいた。
    写真に興味がある人、旅が好きな人には、ひっかかりのある部分の多い、一冊だと思います。
     
    『一〇三歳になってわかったこと』篠田桃紅
    https://booklog.jp/users/makabe38/archives/1/4344027531
     
     .

  • なかなか面白い企画。ひとつひとつのエピソードが短くやや物足りない気もしたが。

全21件中 1 - 10件を表示

著者プロフィール

1947年東京生まれ。横浜国立大学卒業。73年『若き実力者たち』で、ルポライターとしてデビュー。79年『テロルの決算』で「大宅壮一ノンフィクション賞」、82年『一瞬の夏』で「新田次郎文学賞」、85年『バーボン・ストリート』で「講談社エッセイ賞」を受賞する。86年から刊行する『深夜特急』3部作では、93年に「JTB紀行文学賞」を受賞する。2000年、初の書き下ろし長編小説『血の味』を刊行し、06年『凍』で「講談社ノンフィクション賞」、14年『キャパの十字架』で「司馬遼太郎賞」、23年『天路の旅人』で「読売文学賞」を受賞する。

沢木耕太郎の作品

この本を読んでいる人は、こんな本も本棚に登録しています。

  • 話題の本に出会えて、蔵書管理を手軽にできる!ブクログのアプリ AppStoreからダウンロード GooglePlayで手に入れよう
ツイートする
×