「南京事件」を調査せよ

著者 :
  • 文藝春秋
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  • Amazon.co.jp ・本 (278ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784163905143

感想・レビュー・書評

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  • 結論から言うとあったということ。
    “歴史にはおぞましいものがある。だからといって事実を修正できるはずなどないのだ。国にとって、自分にとって、都合の悪い過去に触れたら「自虐史観」だとか「顔向けできない」からと、事実を押しやってさえしまえばそれでいいのか?”と、正にその通り。
    “それぞれが歴史に学び、事実を知り、憂い、死者に黙祷せずしてどうするのか。そうして二度と国を破滅の危機に追い込まぬことこそが、本当の意味の愛国心でなないのか。それこそが「国を守る」ということではないのか。”調査を重ねた著者の思いが伝わってきます。
    全体として改めて思うことは、知ろうとしないことは罪、戦争は絶対にダメだ…ということ。
    「南京事件」を調査することは、それまでの歴史も理解しなければならない。そのためか、特に後半はやや冗長かなと感じたけど大変勉強になりました。

  • H30/5/23

  • 2015年10月4日に「シリーズ戦後70年」の1本として日本テレビの
    NNNドキュメントで「南京事件 兵士たちの遺言」が放送された。

    放送された当日には見られなかったのだが、後日、動画サイトで
    番組を見た。

    実際に南京戦に参加した元日本兵が綴った当時の日記を元に
    した秀逸なドキュメンタリーだった。しかも放送したのが日本テレビ。
    ここにも価値があったと思う。

    本書は番組内容に大幅加筆しての書籍化とのことで期待したのだ
    が、いささか残念だった。

    番組取材の基本となったのは『南京大虐殺を記録した皇軍兵士たち』
    (大月書店)である。この作品に収録されている日記の裏取りや、当時
    を知る元兵士を探して証言を得る過程に関しては調査報道の手法が
    きちんと生かされている。

    しかし、取材当時に国会で行われていた安全保障関連法案の審議の
    模様が併記されていたり、著者の自分語りが多かったり、やたらと詩的
    な表現が飛び出したりで、読んでいてうんざりする箇所も。

    正直、テレビ番組だけにして書籍化しなきゃよかったのになと思う。
    「文庫X」として話題になった『殺人犯はそこにいる』の時もそうだったの
    だが、自分語りはこの著者の癖なのかな。どうも作品を重ねるごとに
    酷くなっているように思う。

    『桶川ストーカー殺人事件 遺言』以上のものは書けないではないかと
    いう気がして来たわ。

    内容としては南京事件を肯定する作品なので、一部の否定派からは
    総攻撃されそうなのだけれどね。

    ただ先の大戦では日本人は被害者としてだけの歴史だけはなく、加害者と
    しての歴史をもしっかり持たなきゃいけないと思うんだよね。

    まぁ、加害者としての記憶を言うと「自虐史観」と言われてしまうのだけれど。

  • -

  • 南京事件ってみんな知ってるけど、ちゃんと調べてみましょうよ、って本。

    南京事件とか南京大虐殺とか、昔から聞いたことはあって、中国はあったよたくさん殺されたよ‼︎って言ってて、日本はやってねーよ日本人がそんな事する訳ねーだろ‼︎って意見もあったりして、個人的にはんーそりゃ多少の民間人の殺害はあっただろうけど大量虐殺とかはねぇんじゃねぇかなぁ?って感じで考えてた。

    で、著者が調べた限りでは相当数の中国人民間人をバンバン機関銃とかでぶっ殺してたと。想像していたより大量にやったてんだなぁと。と言うか殺した量もアレだけどそれより組織的に虐殺が実行されてたってのが驚きというかなんというか。

    殺す理由ってなんだったんだろうと考えたけど、食べさせるものがないとか生かしておいたらスパイ大作になるとかなんというか… 日本の軍人ってこんなにバカだったの? まぁ特攻作戦本気で勝てると思って採用する連中だもんなぁと言えばそれまでか…

    戦争は手段だし、戦争は何があっても絶対ダメ‼︎とか気待ち悪いこと言うつもりはないけど、それにしても南京で起こった中国人民間人の大量殺害行為はまぁありました、と。そんな感じですね。

  • 南京事件は有ったのか?を「殺人犯はそこにいる」の清水潔が追う。この本を読む限り結論は有ったとなる。人数は特定していないが日本政府も非戦闘員の殺害や略奪行為があったことを認めている。ただし中国の主張する30万人を証明することはもはやできない。南京事件は無かったと言う主張も同じように証明できないのだが。

    この本で取り上げているのは幕府山事件、福島県の小野賢二氏が集めた31冊の日記が元になっている。1937年12月13日、南京陥落。当時の南京の人口は20万人と言われていた。30万人を否定する根拠の一つだがここで言う南京城内は東京で言えば山手線の半分くらいの地域だ。現在でも戸籍人口と常在人口はだいたい倍くらい違う。被害者数の論争は不毛に思える。

    当時の新聞には日本軍の入城を歓迎する南京市民と一緒に笑う兵士の写真が掲載された。これも事件がなかった証明にはならない。日記を元にすると捕虜の虐殺が起こったのは16日。そして18日のNYタイムズには「捕虜全員を虐殺」の見出しの記事が紹介されている。「中国人による統治と軍事力が崩壊し、南京の中国人の多くは日本軍の入城を期待し、その後に生まれる秩序と統治を受け入れるつもりだった」「2日間の日本支配が大きく見方を変えた。無差別に略奪し、女性を凌辱し、市民を殺戮し、中国人市民を家から立ち退かせ、戦争捕虜を大量処刑し、成年男子を強制連行した。南京を恐怖の街に一変させた」この記事がどの程度正しいかはわからない。プロパガンダもあるだろう。しかし南京事件は戦後にでっち上げられたものとは言えない。

    陣中日記を見ると16日に馬風山(幕府山)に向かった第13師団が5千人の捕虜を揚子江沿岸で機関銃で銃撃した後銃剣で突き刺したとある。他の日記でも3千人から7千人と開きはあるが、17日にかけて1万人規模の捕虜を虐殺した記録が複数出ている。Wikiによると日本軍の総数は20万人、対する中国軍は諸説あり6万から15万ほど。 5万人が戦死か捕虜になり7万人が逃亡したとされている。日本軍の正当性を支持する説は逃亡した中国兵が軍服を脱ぎ、いわゆる便衣兵としてテロ行為を行なったため戦闘になり結果として非戦闘員も巻き込まれたと言うものだ。そう言うこともあったのだろう。

    南京戦の陸軍公式記録も一部残っている。第66連隊第一大隊の戦闘詳報には「イ、旅団命令により捕虜は全員殺すべし、その方法は十数名を捕縛し逐次銃殺しては如何」と言う命令が残っている。少なくとも幕府山事件は1万人規模の捕虜の虐殺があったと考えるのは妥当だ。

    他にも旅順虐殺や立場を変えた通州事件もある。いかに中国政府のプロパガンダが気分が悪かろうがいつの時代も、どこの国でも軍隊のあるいは軍隊とは限らないろくでもない行為はあったと考えるのが妥当だろう。「戦場の掟」ではイラクで民間警備会社と言う名の傭兵部隊がルール無用の悪党と化している姿が紹介されている。

    さて、アパホテル社長の主張はどんなものだろうか。

  • 『殺人犯はそこにいる』の筆者が『南京事件』を調査するっていうので早速読むんですが、その前に、おい!ルパン!いつ捕まるんだよ!早くルパン捕まれコノヤロー!
    ・・・・で、今回は1次資料として認められる当時の陣中日記を元にあの清水さんが今話題のアレを調べてくれてまして、ざっくり言うと中国人捕虜を纏めて銃殺しましたよ、いくつもの日記にそう書かれているから事実だよって事なんですが、人数で言うと多くて2万人、中国側の発表では30万人・・・そこの突っ込みはなかったのが残念。まあ、人の命は数じゃないという議論はここでは止めましょう。
     あったかなかったかとかで言えばこれを読む限り南京において大勢の中国人を殺した事は間違いないと思います。ただそれがいわゆる『大虐殺』なのか、じゃ原爆はどうなんだとか、捕虜だけど状況的に暴動の危険があるからOKなのかとか、いやいや中にはどう見ても一般の老人・子供がいたとか、大量殺人は戦争あるあるじゃないかとか、勉強不足の私には分かりませんし、色んな解釈もあれば、それに至る背景もあるわけで、まあ当時の残虐性を現代の価値観で断罪するのは危険なんじゃないかなあと思うわけで、そもそも国際法があったとはいえ戦場なんて北斗の拳状態なんだから何があっても不思議じゃないでしょう。もう自分が何を言っているのか分かりませんから取り合えず戦争には行きたくないです。
     後半になると政府批判とか、ちょっとレフト的なイデオロギーの臭いのする内容で引っかかる事もありましたので、清水さんには複雑な歴史調査より今そこにある事件を徹底して調査して頂く事を望みたいです。次回作に期待!
     

  • 2017/1/23

  • 真実を追求することを目的にこの書を読むならば、手に取らないほうが良いだろう。「南京事件が真実であって欲しい」という著者の思いが、ジャーナリズムを捻じ曲げている。30万人の虐殺は、結局証明されない。しかし、そんなことはどうでもいいのだ。日本人は残虐で、野蛮だから、中国様に頭を下げろと言いたいだけ。日本を虐めることに快楽を感じる人には、強烈におススメ。

  • 【南京事件はあったのか、なかったのか。】79年前の事件を調査報道せよだって!? 戦後70周年のムチャ企画に敏腕事件記者は南京へ。戦争を知らないからこそ書けたルポ。

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著者プロフィール

昭和23年生。皇學館大学学事顧問、名誉教授。博士(法律学)。
主な著書に、式内社研究会編纂『式内社調査報告』全25巻(共編著、皇学館大学出版部、昭和51~平成2年)、『類聚符宣抄の研究』(国書刊行会、昭和57年)、『新校 本朝月令』神道資料叢刊八(皇學館大學神道研究所、平成14年)。

「2020年 『神武天皇論』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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