四月になれば彼女は

著者 :
  • 文藝春秋
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  • Amazon.co.jp ・本 (269ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784163905532

感想・レビュー・書評

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  • 個人的にはとても心に残った作品です。

    川村さんの文章から「色彩」のイメージが頭の中で大きく膨らむのが印象的です。
    さすが、映像表現のプロ。

    ウユニ塩湖、プラハ、レイキャビク、カニャークマリ、そしてハルが最後に辿り着き、ファインダーの中から捕まえようと必死に手を伸ばした風景とその色彩、、
    とても活字の表現とは思えないほど、色彩に対する想像力を刺激する展開に心を打たれました。

    学生時期の研ぎ澄まされた感性を追い続けたハル、 逆に年月を経ながら日常に埋没していく藤代、、
    藤代がハルを取り戻そうとする気持ちと、現実の足元にある自分、、
    その葛藤は、高い空を飛ぶ蝶を捕まえようと必死に手を伸ばすようなもの、、


    自分もハルに心の扉を強く叩かれた、、そんな読後の印象でした。
    「君の名は」の映画の鑑賞後と似ています。
    忘れてはいけない大切なもの を再認識させられる印象深い好作品と思います。

  • 愛は永遠だとその時に信じていても終わりが来る。
    人の孤独、愛情の切なさ、儚さ、脆さを感じた。
    私は永遠の愛を純粋に信じていたけど、自らの経験からそんなものはないのかもしれないと感じている。
    でもそれでも永遠の愛ってあるんじゃないかと信じてて、自分が証人になりたいと思ってる。
    だからタスクの言葉にたくさん考えさせられた。
    「でも僕、思うんです。人は誰のことも愛せないと気づいたときに、孤独になるんだと思う。それって自分を愛していないってことだから」

    そして、ハルの手紙には共感できる部分が多くあった。
    ハルのフジへの純真な想いは若くて汚れや現実を知らなかったからこそ、持てた想い。
    一度知ってしまったら、もう持てない想いな気がして、大人になることがそういった汚れや現実を知ることなのだとしたら、なんだか哀しくなってしまう。
    だから、次にする恋はもっと現実的な目線が入ってしまうんだろうな。
    知らずに純粋でいられることが幸せか、知って深い人間になれることが幸せか。
    考えても仕方がないけれど、純粋でいられた方が楽だよなと思う。
    手紙のこのフレーズが好きだった。そんな気持ちがあるって、素敵だよね。もう二度と無理なんじゃないかと思ってしまう。

    「あのときのわたしには、自分よりも大切な人がいた。あなたと一緒にいるだけで、きっとすべてがうまくいくと信じることができた。」

  • 1ヶ月一話ずつ読みたいような…
    (結局一気に読んだのですが)
    気温やお天気などでも気分て変わるし、
    分からないながら、迷いながらも
    フジは愛してる(愛されてる)!!
    素敵なお話でした。

  • 複雑であり単純な恋愛を小説で書かれている部分がとてもよかったです。そして、読みやすかった!

    現実の恋愛は、好きな人ができて、付き合ってとかじゃない。だからこそ、実写映画などをみていると、そんな簡単な映画あるわけない!とかツッコミたくなってしまいます。でも、この小説では、複雑な恋愛だけど、現実ではあり得るような内容なところがとても良かったです。

  • 人は誰しも、愛したいと思うし、愛されたいと思うものなんだと痛感。
    本当に大切な人を愛しているのか、考えさせられました。

  •  やはり構成がうまい。まるで、よくできた映画を見るように引き込まれてしまいました。

     形而上的存在である「愛」は間接的にしか確かめることができないため、不安や疑問に囚われると解消するすべがありません。
     特に主人公のようなハイスペックのタイプはそうだろうと思います。

     「愛」というものの不確かさに苦しみつつ希求する人の姿が見事に描かれていた作品でした。

  • みんな思ってるけど、どこか目をそらしてること

  • 川村元気の作品に共通して言えることだが、彼の作品は物語を描いているというよりは、問題提起をしている感覚に近いように思う。身近にあるにも関わらず、見て見ぬ振りをしているような概念を対象にして、それについての思考を求めてくるような作品。それが川村元気らしさと言えるかもしれない。
    「四月になれば彼女は」においては『愛』をテーマにしている。センシティブなテーマ、かつ読者に対して思考を求める作風から、読み進めることを躊躇しそうになることもあるだろう。しかし、その『愛』の答えを求めて読み進めてしまう。そんな作品だ。
    正直万人ウケする作品とは言い難いが、概念に対して思考することに抵抗が少ない人にとっては読み応えのある作品だと思う。私にとってこの本はとても良いと思える本だった。

  • 結婚を控えた精神科医の藤代に学生時代付き合っていた春からの手紙が届いた。春は写真部の後輩で、彼女との付き合いは写真部OBの大島の自殺騒動で断ち切れていた。

    婚約相手の妹に誘惑される藤代。届き続ける春からの手紙。そして、婚約者は藤代の前から姿を消した。

    婚約者の部屋から最期の春の手紙を見つけ、藤代は春が亡くなったこと知る。
    藤代はカニャークマリへ向かう。もう一度行って朝日を見ようと春と約束した場所。そこで婚約者を再会する。

    -----------------------------------------------

    後輩カップルに割って入っていって自殺騒動を起こして後輩たちに爪痕を残した挙句、死んでいった大島さんに感情移入しながら読んだ。
    自分の手に入らないものを愛しく思ってすがってしまう大島さんの弱さに強く共感した。こういう人生、こういう死に方もある、と思った。
    かっこよさなんてまったくない。すべてをあきらめたようで、何かにすがりつこうと必死で、そんな気持ちを誰にも気づかれたくないと思う反面、愛しい人には知ってほしいと願ってしまう男。
    すごく人間臭い人だった。

    藤代さんが婚約相手の弥生さんとインドで再会するラストはドラマチックすぎて、そんなことあるわけないだろと思ってしまった。
    姿を消した弥生さんはインドに行き、毎日カニャークマリで朝日を見ていたってことなのか。それとも藤代さんがカニャークマリにやってきたその日に弥生さんも偶然やってきたってことなのか。藤代さんが弥生さんに気づかず再会できなければ、弥生さんはその後もずっとカニャークマリにいたのか。エンドレス朝日だったのか。そんなことばかり考えてしまった。
    こういうところに突っかかっていける自分は大島さん側の人間だと思う。

    ラストは気になったけど、ところどころにシガーロスが登場する素敵な話だったと思う。

    Sigur Rós『Hoppípolla』
    https://www.youtube.com/watch?v=mZTb8WxEW78

  • ラストシーンが、見たことない景色なのにありありと見えた。いつか本物がみたいと思ったなぁ。

著者プロフィール

かわむら・げんき
1979年、横浜生まれ。
上智大学新聞学科卒業後、『電車男』『告白』『悪人』『モテキ』『おおかみこどもの雨と雪』『寄生獣』『君の名は。』などの映画を製作。2010年、米The Hollywood Reporter誌の「Next Generation Asia」に選出され、’11年には優れた映画製作者に贈られる「藤本賞」を史上最年少で受賞。’12年に初の小説『世界から猫が消えたなら』を発表。同書は本屋大賞にノミネートされ、佐藤健主演で映画化、小野大輔主演でオーディオブック化された。2作目の小説にあたる本作品『億男』も本屋対象にノミネートされ、佐藤健、高橋一生出演で映画化、’18年10月公開予定。他の作品にアートディレクター・佐野研二郎との共著の絵本『ティニー ふうせんいぬものがたり』、イラストレーター・益子悠紀と共著の絵本『ムーム』、イラストレーター・サカモトリョウと共著の絵本『パティシエのモンスター』、対談集『仕事。』『理系に学ぶ。』『超企画会議』。最新小説は『四月になれば彼女は』。


「2018年 『億男 オーディオブック付き スペシャル・エディション』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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