コンビニ人間

著者 :
  • 文藝春秋
3.62
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本棚登録 : 17359
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  • Amazon.co.jp ・本 (160ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784163906188

作品紹介・あらすじ

第155回芥川賞受賞作!36歳未婚女性、古倉恵子。大学卒業後も就職せず、コンビニのバイトは18年目。これまで彼氏なし。オープン当初からスマイルマート日色駅前店で働き続け、変わりゆくメンバーを見送りながら、店長は8人目だ。日々食べるのはコンビニ食、夢の中でもコンビニのレジを打ち、清潔なコンビニの風景と「いらっしゃいませ!」の掛け声が、毎日の安らかな眠りをもたらしてくれる。仕事も家庭もある同窓生たちからどんなに不思議がられても、完璧なマニュアルの存在するコンビニこそが、私を世界の正常な「部品」にしてくれる――。ある日、婚活目的の新入り男性、白羽がやってきて、そんなコンビニ的生き方は「恥ずかしくないのか」とつきつけられるが……。現代の実存を問い、正常と異常の境目がゆらぐ衝撃のリアリズム小説。

感想・レビュー・書評

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  • 「おまたせいたしました。いらっしゃいませ。おはようございます」
    私は次に並んでいた女性客に会釈をする。朝という時間が、この小さな光の箱の中で、正常に動いているのを感じる。
    (中略)
    世界が目を覚まし、世の中の歯車が回転し始める時間。その歯車の一つになって廻り続けている自分。私は世界の部品になって、この「朝」という時間の中で回転し続けている。

     主人公古倉恵子は、アスペルガーなのかな?子供の頃から他人の気持ちが分からず、不可解な行動をしていることを“異常”で“治さなければならないこと”と言われる。例えば、公園で小鳥が死んでいるのを見つけたとき、皆は「お墓を作ってあげよう」と言うのに、恵子は「持って帰って食べようよ。」と母親に言ってギョッとさせた。「そのほうが父親も妹も喜ぶだろうに何が悪いのか」と恵子は思っていたのだ。だけど読者は気づく。公園の小鳥は死んだら可哀想と思い、養鶏場の鶏は食べるのが当たり前と思っているマジョリティたちは残酷ではないのか?と。
    「男子たちの喧嘩を誰か止めて!」と言われ、当事者の男子たちの頭をスコップで殴って喧嘩を止めるなど、恵子の中では真面目に人のためになることをしたつもりが“乱暴なこと”“歪んだこと”と思われ、学生時代を通じて、人と喋らず、自分を出さず、友達もいなかった。
    そんな恵子が唯一自分の居場所を見つけたのがコンビニだった。学生時代のある日、新オープンのコンビニ店員募集の貼紙を見つけ、応募し、笑顔の作り方から声の出し方、身だしなみ…何から何までマニュアル通りに“コンビニ店員”としての自分を産み出していった。
    マニュアルに合わせる生き方なら出来る。羨ましくさえあった。何故なら私はマニュアルを与えられたって笑顔を上手く作ることは出来ない。心のバリアが邪魔をしてしまうからだ。あ、いや違う。恵子は真面目なのだ。コンビニ店員でいるためには、ビデオのマニュアル通り顔の筋肉を動かして笑顔を完璧につくる。明日のコンビニでの仕事のために毎日体調を整える。コンビニの中ではどんな小さな変化もキャッチしてテキパキ動き、頼りにされ、仕事仲間の中でも浮かないように、他の店員の普段着を真似たり喋り方を真似たりして、自分の居場所を守る。そうして、18年間、36歳まで独身で同じコンビニのアルバイトだけを続けてきた。恵子はそれで幸せだったのに、周囲が認めない。結婚もせず、就職もせず、コンビニ店員だけを続けている恵子のことを仲の良い妹さえ肯定してくれない。
     カチッと揃った歯並びの良い白い歯を守ってくれる歯科衛生士さんのように、恵子はコンビニの中では、小さな隙間もキチッと噛み合うように仕事が出来る“地上の星”だと思った。
     “マニュアルさえあればそこに合わせていくことは出来る”。これも貴重な能力。勿論、恵子みたいな人がマジョリティであれば、“軍隊”が簡単に出来てしまうと思う。しかし、根拠のない自惚れ屋がマジョリティである世の中で、“変わらないこと”に何故か不安を覚える人間が多い世界で、恵子のように“変わらない”ことを変わらず続けられる人が“マジョリティ”の隙間を埋めていてくれる。これも神様の作った立派な生態系なんじゃないかと思った。
    コンビニ店員しか出来ない人の惨めさを描いた小説かと思っていたが、全然惨めではなかった。恵子の目を通したコンビニはテーマパークのように何十年間も人の期待を裏切らない完成された世界であり、そこに“歯車”として身を投じる恵子の姿も美しかった。

    • たださん
      まこみさん
      ふがふがしながら、ニュアンスで伝えまして、テコとへらだけ頑張って言葉にしました(^^;)
      まこみさん
      ふがふがしながら、ニュアンスで伝えまして、テコとへらだけ頑張って言葉にしました(^^;)
      2023/02/14
    • Macomi55さん
      たださん
      ふぇふぇふぇふぇふぇ…( ´∀`)
      たださん
      ふぇふぇふぇふぇふぇ…( ´∀`)
      2023/02/14
    • たださん
      まこみさん
      そんな感じです(笑)
      少しは恥じらいを見せろと、私自身に言いたい( ´艸`)
      まこみさん
      そんな感じです(笑)
      少しは恥じらいを見せろと、私自身に言いたい( ´艸`)
      2023/02/15
  • 仕事柄、発達障害の知り合いがたくさんいます。
    その方たちの生き辛さを知っています。
    マニュアル通りに動くことが心地よいのであれば、それを良しとする仕事に就くのが、職場にとっても本人にとっても利害の一致につながると思います。
    だけど、周りはそれだけでは許してくれない。
    「皆、変なものには土足で踏み入って、その原因を解明する権利があると思っている。」
    自分に合った職場で働きたいだけなのに、そこでうまくやっていくには、自分が発達障害であることをカミングアウトしなければならない、ということになると思います。
    皆さん、自分が周りとちょっと違うと理解していて、でもみんなとうまくやっていきたいから、だからこそ周りに変だと思われないように浮かないように努力しているのに、カミングアウトしなくてはいけない状況というのは本末転倒だと思うのです。
    でも知らないものを理解するというのはできないことです。私たちの無知が発達障害の方たちの生き辛さに繋がってしまっているのだろうな、と私は思います。
    発達障害の方たちからしたら私の言っていることもピント外れなのかもしれません。嫌な気持ちにさせてしまったとしたら、ごめんなさい。

  • 第155回 芥川賞受賞作。これまで読んだ芥川賞受賞作のなかでは、いちばん読みやすく共感できる部分が多かった。と、言うのも私自身がコンビニでアルバイトをしたことがある"コンビニ人間"だから(ちょっと大げさ?)…。頭の中で来客を知らせるチャイムの音が、バイトが終わっても何かの拍子に鳴り響く感覚が特に共感できた。懐かしい思い出である。

    • mayureneeさん
      その経験あります!わかります!
      その経験あります!わかります!
      2023/12/02
    • 借買無 乱読さん
      mayureneeさん
      コメントありがとうございます。
      コンビニバイトに限らず、職場で毎日のように聞く"音"は耳に残り、頭の中でグルグル再生...
      mayureneeさん
      コメントありがとうございます。
      コンビニバイトに限らず、職場で毎日のように聞く"音"は耳に残り、頭の中でグルグル再生されますね(^_^;)。
      2023/12/03
  • 『普通』って『常識』とおんなじように学ぶものだと思っていた。
    『みんな』のやっていること、感じていることを学びとり、それを実行する。
    『みんな』が引いたこと、やってないことはやらない。
    昔からずれてるとか言われていたので、それが『常識』かと思っていた。
    この小説が売れたのはそういう人が多数派だからだと思って
    たんだけど、そうでもないみたい(笑)

    そういう自分なので、主人公に感情移入というか肩入れして読んだ。
    ときおり突っ込みを入れながら。嬉々として。
    大人になって『ちゃんと普通にやってる』つもりでも
    「(嫌われものの)白羽さんとお似合いじゃん」
    と言われたり、飲み会に誘ってもらえなかったり...
    ばれてんじゃん、主人公。

    ヒーロー(?)の白羽さんは破壊力が強いな。
    かれの言ってることも分からんでもない。
    むしろ振りきれてるところが眩しい(笑)

    最後は余韻を残したハッピーエンドかなと思った。
    いろんな意味で『やべえ』小説でした。

  • 面白かった。まず、思ったのはコンビニは簡単そうな仕事だと思っていたけどなかなかハードな仕事だということ。コンビニに行ったら当たり前に「いらっしゃいませ」と言われる。でも、その裏側は練習をしているということ。そして、主人公は人と接することが苦手?だけど自分なりに頑張っている姿がよかった。同じコンビニで18年も働けるってすごい!

  • 直木賞かと思うぐらい、読みやすい文章と内容だった。作者自身が長年コンビニに勤めていた事があるため、コンビニ愛に溢れた内容だった。コンビニの日常が良く分かる作品。
    一方、主人公の古倉と白羽は普通とはちょっと異質な人間。彼らの普通と世間一般の普通は大きく乖離している。古倉は普通になろうと努力し、白羽は自分が普通と思い、周囲が異常と思っている。最近はこういう人達が増えて来ているのか、診断技術が向上したので増えたように見えるのか? 普通とは何かを含め、色々と考えさせられる作品だった。

  • 世の中の多くの人が普通だと信じて疑わないこと、そこから少し外れてしまう岩倉さん。
    長く一緒に働いて、岩倉さんとうまくやっていたはずの同僚も妹さえも、本当は岩倉さんのこと不審に思っていて、裏側を知り、人間の恐ろしさを実感した。
    そして同じように苦しむ白羽君とであい、協力して暮らす中で、自分の居場所にきづく。
    できることをして、生きる。
    自分を知ることが、幸せへの近道なのかな。




  • 読後、自分の立ち位置がぐらぐらと揺らぐような感覚に襲われた。淡々とした文章が読み易く、一気に読了したものの、何とも複雑な感情が渦巻いて、簡単に面白い/面白くないとジャッジできないような余韻を今も引きずっている。そういう意味では、これまで読んできた芥川賞受賞作ではインパクトの強い作品だと言える。
    コンビニのバイトを18年続けている、未婚36歳の恵子。「普通」であることがわからないから、何とか世の普通に合わせようと振る舞う彼女の行動に、結構共感しながらもチリチリと痛みも感じた。完璧なマニュアルの存在するコンビニでの仕事に安らぎを感じる、というところにも。私自身コンビニ仕事の経験はないけれど、事細かに描写されるコンビニのシーンが一番好きで、職場が自分の居場所…のような感覚がすごく理解できる。
    バイトの新入り男性・白羽が現れてから、恵子の歯車が狂っていくが、同時に自分の価値観も引っ掻き回され、何が正しくて何が間違っているのかがわからなくなっていく。白羽がなかなかに曲者で、彼と関わっていく後半は個人的には引く部分もあり。村田さんは初読みだったが、ここまで描いてしまうのかという彼女の思い切りの良さというかストレートさに戸惑いつつも、読むことを止められなかった。
    色んな角度から心をえぐられたにもかかわらず、もっと村田さんの作品を読みたいなという気になっている。

  • 村田沙耶香さんが、実際にコンビニで働いていた話は有名だが、何かのインタビューで、その際に人間を見るのが好きだと言っていた記憶がありまして(違ってたら、すみません)、そうした気持ちが本書にも入っているように感じられました。

    それは、好き嫌いのはっきりしそうな人物においても、どこかひどく憎たらしいというよりは、何か滑稽で笑える喜劇を見ているような感じが、すごく印象的で、そうした人達の視野の狭さや矛盾の多さには、フィクションならではの面白さがあったが、現代社会においては、これが実際にありえそうで笑えないところに、怖さもあるというか・・とりあえず、その中で最も際立っていた彼には、一度縄文時代にしっかり謝罪しろと言いたい。

    また、私もコンビニではないが、40代でサービス業のバイト(社会保険はあったが)だけで生活していたことがあり、本書の中の、世界の一部になっている方々には遠く及ばないかもしれないが、それでも、過去の自分を省みて、こういう立場にいたことに納得するものがあり、要は、人からどう言われようが、それを冷静に客観的に捉えればいいだけであって、それでその通りだと思うか、いや私はそうは思わないと感じるか、の問題だと思うのですがね。

    そうした視点で考えると、ある意味、最も幸せなのは、自分の中の手放せない大切なものに気付いた、恵子だと思いますし、既に、私はそうした自分らしさを大切にすることについて、村田さんの他の作品で教えられていたので、今回は物語の喜劇性を楽しんだ感じです。

    おそらく、村田さんの著作の中で、最も有名な作品だと思うので、これで初めて村田さんを知り、よりコアでディープな世界を覗きたい方は、他の作品も是非どうぞ。

    まだまだ、村田さんの世界は、こんなもんじゃありませんよ。

  • 読みやすくておもしろかったです。あっという間に読んでしまいました。
    普通ってなんだろう?って考えさせられます。
    亡くなってた小鳥を見つけお墓を作ってあげよう!でなくお父さんが焼き鳥大好きだから食べちゃおう!の発想やケンカを手っ取り早くやめさせるためにスコップで頭を殴って黙らせた。ちゃんと説明したのに職員会議...笑ってしまいましたが、言われてみればわからなくもない気がしてしまいました。

  • ずっと読みたいと思っていたが、芥川賞受賞作というのが自分にとってはハードルで、なかなか手に取れなかった。
    心配したような難解な文章ではなかった(´∀`)

    シュール。しかし、極めて真っ当な事実を突いている気がする。

    主人公の古倉恵子と彼女に寄生しようとする白羽は、どちらも社会不適合者という枠組みに括られてしまう人達だ。
    古倉は、自分のどこがおかしいのか分からず、なんとか世間に合わせ生きようと、自分を空っぽにし、コンビニ店員としてコンビニの一部となって生きようとする。
    対する白羽は、世間に迎合しようとして受け入れられなかった反動か、世間に対する毒を吐き散らしながらも世間からは隠れて生きようとする。

    白羽は、「ああ、こういう人いそうだなぁ」と思うのだが、古倉は、「うん?え?なんと⁉︎」と思わず言ってしまうほど、ちょっと想像の枠を超える。人の「情」の部分が読み取れない、人間の感情を勉強中のA Iみたいに見える。
    しかし、終盤で、古倉と白羽が同居していることが古倉の職場であるコンビニの人達に知れ渡り、皆仕事そっちのけでゴシップに浸る場面で、古倉が思うことは至極至極真っ当なのだ。

    この本は読み手によって様々な解釈がされそうだ。
    読むたびに感想も変わりそうな、そんな色々な顔をもつ小説だった。2020.3.18

  • 1か月に数冊、読了後に引きずる本があるけど、この本もその一つ。
    (今更感が強かったのだけど、読んでよかった)

    読み始めはめちゃめちゃ仕事出来る風なのに、様々な人と会話していく中で、徐々に古倉さんの異常性が露になっていきます。
    読者である私の感情も徐々に変化が。
    最初は勿論、主人公・古倉さんなんだけど、そこから彼女の友人だったり妹だったりに肩入れしてしまい、超変態と思われていた・白羽さんさえも普通の人に感じる、という不思議な感情の動きをしました。
    150ページの本で、これだけ肩入れする人物が変わるのは、実はすごいことなのでは?と思っております。
    (村田さんの文章力と構成力、神がかっている!)

    特に印象的だった一文がこちらになります。

    ”「なるほど。しかし、私はコンビニ以外では働けないんです。一応、やってみようとしたことはあるんですが、コンビニ店員という仮面しかかぶることができなかったんです。なので、それに文句を言われても困るんですが」”(抜粋)

    この文章読んだときに、よく”置かれた場所で咲きなさい”と言われるけど”咲けるところでしか咲けない人”も少数だけどいるよなぁ、と思いました。
    私が感情移入する人物が古倉さんから普通の人に感情移入していき、彼女から距離を置きたくなったのは、一般的に普通の人側に居れているって事なのかもしれません。(自信ないですが)
    それと共に、世の中には”咲けるところでしか咲けない人”がいる事も忘れてはいけない、とも思いました。
    選択肢が狭まる分、ものすごく生きずらい思いをしていると思うんですよね。
    そして、普通に属している人が、古倉さんの立場にいつでもなってしまう危険性をはらんでいるのが人間の世界なんですよね。(しみじみ)

    考えさせられる読書時間でした。

  • ★3.5

    36歳未婚の古倉恵子。
    大学一年の時から始めたコンビニのバイト。
    大学卒業後も就職せずに、コンビニのバイトは18年目。
    日々食べるのはコンビニ食、夢の中でもコンビニの仕事をしている。
    完璧なマニュアルの存在するコンビニこそが、私を世界の正常な
    「部品」にしてくれ、安らかな日々を過ごさせてくれていると思っている。
    ある日、婚活目的の新人、白羽君がやってきて…。

    芥川賞受賞作は面白くないという偏見をもっていました。
    この本は、軽快で面白くとっても読み易かったです。
    主人公の恵子はまさにとっても「変わった人」
    喜怒哀楽という感情が乏しく、他人の感情や心理理解も不得手。
    そして、目的を達成するためにとる行動が非常識に思われる。
    子供の頃から普通でない考えと、行動をする恵子。
    自分の何処が変なのかわからないものの、
    親に迷惑を掛けないため、無口を通す。
    コンビニでも細心の注意を払って言葉を紡ぎ、顔の筋肉を動かし続けている。
    とっても生き辛いだろうなぁ。苦しいだろうなぁって思った。
    しかし、甥っ子も他の赤ん坊も「赤ん坊」という種類の同じ動物にしか見えない。
    その甥っ子が泣いて、妹が慌ててあやして静かにさせようとしているのを見て、
    小さなナイフを見ながら静かにさせるだけならとても簡単なのにって、
    思っている姿はゾッとした。
    白羽くんは、最低最悪のとんでもなくクズ。
    もーーー読んでて凄く嫌で、モヤモヤした~(*T^T)
    彼に取り込まれ、世界との葛藤の中良かれと思ってした一つの選択がきっかけで、
    彼女の世界が崩れてしまう…。
    その混乱した様子が凄まじい。どうなってしまうのか凄く心配した。
    でも、彼女は逞しかった。失ってしまったものをもう一度選ぶ。
    それこそが存在する意味で、生きてゆく理由だと。
    本当に良かったです。

    普通から外れている彼女の生き辛さが随所から伝わってきた。
    100人いれば、100の個性、それぞれ一人ずつ違ってて「普通」って何だろうって思った。
    普通に生きるってどういうことかについて、考えさせられた作品でした。
    社会性がなく不器用で、他者の心理状態が読み取れない人は、
    現代社会の中で沢山いらっしゃると思います。
    一人でも多くの人がこの問題に興味を抱き、
    ムラが全ての異質を飽和できる社会になると良いんだけどなぁ…。

  • 著者、村田沙耶香さん、どのような方かというと、ウィキペディアには次のように書かれています。

    村田 沙耶香(むらた さやか、1979年8月14日 - )は、日本の小説家、エッセイスト。

    で、本作は、単行本刊行後、かなり売れたようです。
    まあ、大体わかっていましたが。

    ウィキペディアには次のように書かれています。

    本書は2016年7月末に単行本として刊行直後より芥川賞受賞作の中で又吉直樹『火花』に次ぐ爆発的な売れ行きを示し、8月上旬に5刷30万部、11月中旬に10刷50万部を突破した。その後世界各国にて翻訳され、2020年9月時点で全世界累計発行部数は100万部を突破している。

    で、本作の内容は、次のとおり。(コピペです)

    第155回芥川賞受賞作!36歳未婚女性、古倉恵子。大学卒業後も就職せず、コンビニのバイトは18年目。これまで彼氏なし。オープン当初からスマイルマート日色駅前店で働き続け、変わりゆくメンバーを見送りながら、店長は8人目だ。日々食べるのはコンビニ食、夢の中でもコンビニのレジを打ち、清潔なコンビニの風景と「いらっしゃいませ!」の掛け声が、毎日の安らかな眠りをもたらしてくれる。仕事も家庭もある同窓生たちからどんなに不思議がられても、完璧なマニュアルの存在するコンビニこそが、私を世界の正常な「部品」にしてくれる――。ある日、婚活目的の新入り男性、白羽がやってきて、そんなコンビニ的生き方は「恥ずかしくないのか」とつきつけられるが……。現代の実存を問い、正常と異常の境目がゆらぐ衝撃のリアリズム小説。


    私たちが、日常利用するコンビニが舞台になっているので、非常にわかりやすい小説です。
    芥川賞受賞作とのことですが、難解ではなく、けっこう面白い。
    主人公は、いわゆる発達障害の方と思われます。
    ただ、発達障害者と、そうでない方との境目というのは、明確とは言えないでしょう。
    多くの方が、普通ではないとの悩みを抱くことがあると思います。
    そういった意味で、多くの方が共感できる内容と思われます。

  • 学生時代から18年間、コンビニでバイト生活を送っている古倉恵子36歳独身。コンビニの音たちが彼女にはまるで精密機械の鼓動のように聴こえており、自分もその歯車の一部であることに天命を感じている。今、何を求められていて、どう動いたらいいのか、次に求められるのは何なのか的確に把握し心臓が鼓動し、脳はドーパミンやら送り出し、呼吸と同期しながら心地よい刺激に満たされているのだ。

    まるで山の中にいるように、木々のざわめきに揺れる光や臭い、小鳥のさえずりやらの自然に触れて五感を研ぎ澄ませながら深呼吸しているんだ。
    彼女にとってコンビニはすべてであり、神聖な場所でありアルファでありオメガなのである。
    こんなマリア様のような人に、世間一般の価値観を押し付けることの方が間違ってると思うし、そんな価値観の中では彼女は呼吸できないのだと思ってみてました。
    コンビニで働けるならコミュ症じゃないし、人にあわせて口調やファッションだって真似できるんだから器用だし、笑顔だってできるんだから立派な社会人だと思ってしまう。
    ちなみに、私は学生時代ローソンにバイト面接に行って落ちたことありますorz

    今週は、今村夏子さんの小説4冊も読んでいろんな人に会いましたからハードル無茶下がってますので、don't worryだと思ってしまったww

  • 主人公は36歳の未婚女性、古倉恵子。大学卒業後も就職せず、コンビニのバイトを18年間続けている。そんな彼女をみて、家族や友達はどうしてそんな生活を送っていられるのか…と半ば呆れているが、本人は今の生活に満足していた。そんな中、婚活目的での新人アルバイト白羽くんと出会い…自らのことを改めて見つめなおす…そんなストーリーでした。読み終えてみての感想、楽しく読み切れました!彼女はコンビニで正社員になるのが一番良いのかも~そんな風にも思い、また白羽くんがこの先どうなるのか…そこも気になりますね。村田紗耶香さん、3作目ですがこの作品には現実感があって親しみみたいなものも感じました!

  • 面白い。
    表と裏、「あちら」と「こちら」。
    実は世間には「あちら」側の人間もそこそこ多いんではないかとの印象をもった。

  • 社会の一員だと“認識”するためにコンビニで働く――少し癖のある36歳未婚女性の生き方。

    企業に勤めて、恋人を作って、結婚して、子供を産んで…大多数が歩む、あるいは歩もうとする道を「普通」と呼ぶのであれば、そこから外れたら「普通じゃない」のでしょうか。
    主人公の恵子は現状に満足しています。しかし周りがそれを認めようとしません。恵子の今を「変えるべきだ」と意見し、「変わりたいだろう」と決めつけ、「変わりたいのであれば」と勝手に手を差し伸べてきます。自分と周囲との考え方のギャップに板挟みになりながらも、どうにか周囲に、社会が良しとする「普通」に近づこうと模索する恵子をとても健気だと思うし愛おしくも感じました。
    結末の幸か不幸かはさておき、進むべき方向を自ら見定めた人は強いと思います。そして思っていたよりあっさりとした平和的なラストだと思いました(個人的には掃除用具のモップを振り回しての警察沙汰もありうると予想していただけに…でもそこは流石「コンビニ人間」です)。

    私自身も普段、何気なく“こちら側”と“あちら側”との境界を作ってはいないか。人の考えも生き方も十人十色。日頃の自分を振り返るきっかけになる本でした。

  • 36歳未婚女性 36年間彼氏なし
    18年間コンビニ店員としてアルバイト

    一般社会からすれば理解の範囲を超えた彼女の生き方は、好奇な目に晒される。そして周りの人間はどうにか自分達の言葉で解釈出来る説明をつけようとする。

    古倉さんを通じて「普通の人間」の定型にあてはまらず生きづらさに迷う人の心がありありと語られていた。

    白羽さん説く「縄文時代と変わらない人間社会」はあまりに辛辣な表現で苛立ちを感じたが、一方で妙に納得してしまう部分もあった。
    また、コンビニ店員に対する偏見の目は白羽さんの目線を通して作者が世間に訴えているのだろう。

    最終的に、主人公の古倉さんが白羽さんの思い通りにならず、自分が「生まれた」コンビニ店員に戻る意思を固めることが出来た点は良かった。
    ただ、私の価値観になってしまうが、そこでしか自分の存在意義を見つけられない生き方は、やはり寂しく哀しいと思ってしまう。けれどその世界でこそ、生き生きと自分の居場所を見つけられる古倉さんにとっては、誰がなんと言おうと天職なのだ。

    きっと本作を読んで、何らかの障がい名を思い浮かべて読もうとする方も多いだろう。
    社会生活の中で当たり前とされる価値観を持ち、その価値観で人を見定めようとする人間の怖さを垣間見る作品だった。

  • 初の村田沙耶香。

    「女35歳、コンビニ歴7年コンビニ社員(副店長)、独身」
    ↑私自身がそこそこ主人公と設定が似ていてとても驚いた。
    私は20代で他の仕事を色々やった中でコンビニの仕事が好きで選択しもう7年近く続けているし、結婚願望もないので自分の選択で独身でいるが、それでも苦悩している主人公に共感する点が多く、正直読んでいて胸が苦しかった。
    結婚や母親になることを選ばず、週6でバリバリに働く私も、世間的に見たらいわゆる「一般的な普通の人」には入らないのだろう。

    本書にもある通り、社員だろうがバイトだろうがコンビニ店員というのは世の中的にはなんだか見下されている職業で、なんなら学生やパートなら理解できるけど、普通の健全な未婚の女がコンビニを本気で職場として選んで働いている。というのはやはり理解されないことが多い。

    とにかくコンビニの業務の描写がリアル。
    読んでいるとコンビニで働いている時同様の目まぐるしさと焦りとわくわくと達成感が一気に襲ってきて、ちょっとした疲労感を感じるほど。
    分刻みでの仕事にイレギュラーのお客様対応、スタッフとのやりとり、廃棄前のおにぎりを買って早めに待機、家にあるものがコンビニで買い取った商品ばかりなど、コンビニで働いたことのある人が書いたというのが一発で分かる細かい描写。

    普通の人の価値観や考え方、人の気持ちが理解できない主人公がなんとか世界から排除されないように一生懸命みんなと同じようであろうと努力する話なのだが、スタッフの採用とシフトを作ってる身からすると、毎日休まず働いてくれてお店のことを考えてくれている彼女はなんて頼もしくて優秀なスタッフだろうと普通に感心してしまう。
    大切な人達を傷つけないように無理して他のものに
    なろうとしているが、このままずっとあなたの天職であるコンビニ店員として、どうか胸を張って誇りを持って生きて欲しいと伝えたい。
    なんと言われようと誇りを持っていい職業だし、あなたは素晴らしいスタッフだと。

    こんなに熱く感情が入ってしまうのは、私自身も主人公同様、コンビニ人間だからだろう。

    • なべさん
      hinaさん、おはようございます。
      なべです。

      感想がすごく響いたので、コメントしました。
      私はコンビニ人間を数年前に読みましたが、今でも...
      hinaさん、おはようございます。
      なべです。

      感想がすごく響いたので、コメントしました。
      私はコンビニ人間を数年前に読みましたが、今でも内容を覚えているくらい大好きな作品です。

      これからもよろしくお願いします。
      2022/07/26
    • hinaさん
      なべさん、はじめまして。
      コメントありがとうございます。

      本当に読んでいて胸が締め付けられるような、主人公に手を差し伸べたくなるような、な...
      なべさん、はじめまして。
      コメントありがとうございます。

      本当に読んでいて胸が締め付けられるような、主人公に手を差し伸べたくなるような、なんとも複雑な気持ちになったので、そう言っていただけて嬉しいです。

      こちらこそ、よろしくお願いします(^ ^)
      2022/07/26
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著者プロフィール

村田沙耶香(むらた・さやか)
1979年千葉県生れ。玉川大学文学部卒業。2003年『授乳』で群像新人文学賞(小説部門・優秀作)を受賞しデビュー。09年『ギンイロノウタ』で野間文芸新人賞、13年『しろいろの街の、その骨の体温の』で三島由紀夫賞、16年「コンビニ人間」で芥川賞を受賞。その他の作品に『殺人出産』、『消滅世界』、『地球星人』、『丸の内魔法少女ミラクリーナ』などがある。

「2021年 『変半身(かわりみ)』 で使われていた紹介文から引用しています。」

村田沙耶香の作品

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