ネメシスの使者

著者 :
  • 文藝春秋
3.82
  • (56)
  • (159)
  • (92)
  • (10)
  • (0)
本棚登録 : 763
感想 : 123
本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています
  • Amazon.co.jp ・本 (338ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784163906850

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  • 死刑が当然と思われた殺人者たちが、温情判事と言われた裁判官の判決で無期懲役や何年かの懲役となる。あるとき、その殺人者の母親が、同じ殺し方で殺され、近くには血染めの「ネメシス」の文字があった。そして、同様の第二の殺人事件が起こる。やはり「ネメシス」の文字があったのだ。これは被害者の家族に代わって、刑務所にいて手が出せない殺人者の身代わりに殺人者の家族に復讐の刃を振るったのか、それとも正義の鉄槌を気取る者なのか。
    被害者家族、さらには殺害者家族の塗炭の苦しみが描かれ、死刑制度や裁判員制度の是非にまで踏み込む。なかなか読みごたえがあるのだ。渡瀬警部や岬次席検事などの登場人物も魅力的だ。(岬というと、あれっと思う人がいるかもしれない)お馴染みのどんでん返しもある。最後は、人間の歪んだ思いに震えるのだ。

  • 犯人は後半早くから判明したけど、最終的な狙い。
    犯人自身もさることながら「ネメシスの使者」としての役割を全うした犯人の勝利だったかな。
    積年の恨みを自身の人生をかけて、全ては計画通り。
    犯人の信念に終盤は圧倒された今回の作品でした。

  • ヒューマンドラマ的な。犯人探しのミステリーというよりも、そっちに重きがある気がします。

    渋沢裁判長の無期懲役の理由は、だろうなと思いつつ読んでいたので理解できた。
    けど、遺族が望んだ刑こそが、犯人への極刑であって、裁判長の偏った私怨で決めて欲しくない。

    結局牢の中にいる彼らは、渋沢裁判長に感謝していたのだし。

    まっとうな人間として生活できないからこそ、再犯して中へ戻る人たちも多くいるんだから。

    遺族が好きなだけいたぶり、苦しめる事ができる刑があればいいのに。
    それができるなら、無期懲役刑で生かしていてもいいけど。

  • 中山七里2冊目。
    おもしろかった!
    前作と微妙に繋がった設定が話に深みを持たせていた。
    死刑か無期懲役か。。
    誰もが一度は「自分ならどちらか?」と考えてみるテーマ。
    この本を読み終えて、改めて自分に問いかけてみたけれど、
    やっぱり難しい問題だなぁ。
    重たいテーマの作品だけど、その中で
    若手の刑事や罪を犯した者の高校生の娘などが
    生命力を感じさせる存在で好演?!
    読後感が良かった。

  • ギリシア神話に登場する、義憤の女神「ネメシス」。
    残虐非道な事件を起こしたにもかかわらず死刑判決を免れ、無期懲役の判決を受けた殺人犯の家族が相次いで殺され、犯行現場には「ネメシス」の血文字が・・・。

    渡瀬警部と岬検事の出演にワクワクしたけど、死刑制度の是非や被害者遺族と加害者家族それぞれの立場での痛みと苦しみという、重く、答えのないテーマに深く切り込んでいて、読み応えあり。

    方法が、ものすごい回り道で、不可能に近いけど一番可能性があり、綱渡りのようにも思え、ここまで感情を持続させることも現実には難しいような気もするけど、こういう状況に身を置かないと生き続けることすら難しいのかもしれないと思うと、本当にやりきれない。

    犯罪は個人の罪で、家庭環境の影響がないわけでないが、犯罪者の家族が人並みに生きる権利も当然ある。
    だいたい、人間というものは恐ろしいもので、自分の罪過を忘れて、人を見下したがる者なのだ。
    そう言う感情がまるでないような人がたまにいるが、そちらが稀なのである。

    人は、案外簡単に死ぬ。まったく、やりきれない。
    とはいえ、戦争やら、事故やらによって、今日もあちこちで命を落とす人がいるし、加害者、被害者の家族というのもどんどん増えるわけである。

    息子が車の運転などして、本人が事故死するならまだしも、人様を巻き込んで死亡させたりしたらと恐ろしい。

    利己主義と言われようと、とりあえず、他人によって、家族や愛する人々、親しい人々の命を断ち切られることが無いようにと祈るばかりである。

    死刑には反対でも、死刑制度には賛成という立ち位置が一番しっくりくるかな、と考える今日である。

  • 難しい。
    その一言に尽きる。
    連続殺人事件をベースにはしているが、司法関係の用語がかなり多く、読むのも難解。そして、日本における死刑制度の在り方。メインで取り上げられているこのテーマもまた難解。
    無残な連続殺人事件を起こしておきながら、懲役刑に罰せられた犯罪者の親族が連続して殺害される。殺害現場には「義憤」の意味を持つギリシャ神話の女神ネメシスの名前が残され、死刑判決を免れた犯罪者たちへの復讐劇とみなされ、埼玉県警の渡瀬や古手川は県をまたいだ捜査に乗り出す…一貫して、司法制度の在り方を問う内容で物語は描かれる。心理技官など、あまり聞いたことがないような役職の人間も描かれ、少し不思議な気がするが、至るところで張られた伏線はラストで綺麗に回収される。
    犯人は結構早い段階で分かるが、どんでん返しが得意な作者だけあって、最後まで気が抜けない。今回も今までとは違う趣向のどんでん返しがあり、ましても、やられてしまった…

  • きっとまだ何かあるという予感を抱えて残り30ページ。
    期待通りの展開だった。
    死刑制度に対する被害者、裁く者あるいはその他の人々のそれぞれの思い。なるほど、無期懲役に対してこんな考えもあるのね、と参考になった。

  • 一気読みなんだけど終了と思った後にまたあった!確かに警告はあったけど。

  • 渡瀬刑事と岬先生のお父さんのコンビが新鮮でした。最後の二人のやり取りになんだか救われます。

  • 残虐な殺人を犯しながら死刑を免れた懲役囚の、家族が殺された。被害者遺族に代わっておこなう、復讐なのか?
    面白かった。渡瀬警部と岬検事をメインに、姿は見せないものの、光崎教授や岬洋介の名前も。なじみの面々の登場が、うれしい。
    遺族感情と、刑の軽さ。裁判所と市民感覚との乖離。死刑制度の是非。読み応えのあるテーマ。
    殺人は犯罪だと理性ではわかっていても、ネメシスの使者に共感してしまうものがあった。

全123件中 1 - 10件を表示

著者プロフィール

1961年岐阜県生まれ。『さよならドビュッシー』で第8回「このミステリーがすごい!」大賞を受賞し、2010年にデビュー。2011年刊行の『贖罪の奏鳴曲(ルビ:ソナタ)』が各誌紙で話題になる。本作は『贖罪の奏鳴曲(ソナタ)』『追憶の夜想曲(ノクターン)』『恩讐の鎮魂曲(レクイエム)』『悪徳の輪舞曲(ロンド)』から続く「御子柴弁護士」シリーズの第5作目。本シリーズは「悪魔の弁護人・御子柴礼司~贖罪の奏鳴曲~(ソナタ)」としてドラマ化。他著に『銀齢探偵社 静おばあちゃんと要介護探偵2』『能面検事の奮迅』『鑑定人 氏家京太郎』『人面島』『棘の家』『ヒポクラテスの悔恨』『嗤う淑女二人』『作家刑事毒島の嘲笑』『護られなかった者たちへ』など多数ある。


「2023年 『復讐の協奏曲』 で使われていた紹介文から引用しています。」

中山七里の作品

  • 話題の本に出会えて、蔵書管理を手軽にできる!ブクログのアプリ AppStoreからダウンロード GooglePlayで手に入れよう
ツイートする
×