ドッペルゲンガーの銃

著者 :
  • 文藝春秋
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  • Amazon.co.jp ・本 (396ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784163908960

作品紹介・あらすじ

2018年度ベスト級の謎がここに。ユーモアあふれる本格ミステリ中篇集。女子高生ミステリ作家(の卵)灯里は、小説のネタを探すため、警視監である父と、キャリア刑事である兄の威光を使って事件現場に潜入する。彼女が遭遇した奇妙奇天烈な三つの事件とは――?・密閉空間に忽然と出現した他殺死体について「文豪の蔵」・二つの地点で同時に事件を起こす分身した殺人者について「ドッペルゲンガ-の銃」・痕跡を一切残さずに空中飛翔した犯人について「翼の生えた殺意」手練れのミステリ作家、倉知淳の技が冴えわたる!あなたにはこの謎が解けるか?

感想・レビュー・書評

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  • 駆け出し高校生推理作家の灯里が、小説のネタを求めて真面目ポンコツエリート警察官の兄に無理矢理付き添って不可思議な謎がある事件に挑む連作中篇集。密室の土蔵に現れた死体、東京の端と端で同時刻に使用された銃、雪の日の離れでの自殺者の違和感といった王道な謎に驚愕度はないが現実味のあるしっかりした解が示させるのは安定感ある。(雪の日の離れの真相はちょっと無理があるか)事件の為に無理矢理首を突っ込む姿勢がどうも強引な灯里にちょっと好感持てなくここが残念。各事件を元にした話へのドSな編集者が出す駄目出し、すいません私もそっちの方が好みだわ、と頭掻いてしまった。

  • 女子高生でミステリ作家の卵である灯里。兄・大介は刑事。小説のネタ探しに兄に事件を紹介してもらう。兄と灯里と灯里を助言する者が事件を追う。密閉空間で死体「文豪の蔵」、二つの地点で同時に事件を起こす「ドッペルゲンガーの銃」、空中飛翔したとしか考えられない状況の「翼の生えた殺意」の3遍。
    灯里と大介のやりとり、助言する者が小説内の場を和ませました。謎解きのところ、読ませましたね。そういったところで楽しさと解決とダブルで楽しめる作品集でした。続編があってもいいかなあ。
    サディスティック佐田山氏のコメントがいいね。佐田山氏の鋭さ抜群。

  • 大好きな倉知さん。トリックもなるほど!と、うなりながら読みすすめたけれど。結局、ナゾのおじいさんが刑事のお兄さんに憑依して、頭のキレる妹にヒントを与えつつ真相に近づくというもの。ちょっと現実味がなく、(そこが良かったのかも)何度も憑依されてしまうのは、読んでて飽きてしまった。

  •  どうしたんだろう一体。このところ、倉知淳さんの刊行ペースは早い。今回は、ガチ本格の作品集だという。一見、ユーモア路線っぽい装丁。確かにユーモアという側面もある。しかし、メインはあくまで謎であり、論理的解明である。

     いわゆる本格ミステリの中には、現場が「不可能状況」になっているものがある。例えば「密室」などである。僕も含む大抵の読者は、どうせ抜け道があるのだろうと思いつつ、自ら推理することなく読み進む。そして真相が明かされると、何だよそんな手かよと、文句を言う。その「そんな手」に気づかなかったのに。

     本作でも、3通りの不可能状況が描かれる。もちろん、そこには抜け道があるが、論理的に可能性を一つ一つ検証していけば、なるほど、それ以外にないことは納得せざるを得ない。読者に、「そんな手」かよとは思わせない納得性の高さこそ、本作のすごさなのである。

     「文豪の蔵」。密室に忽然と出現した死体。殺害現場はここで間違いない。ただ一つの鍵は、肌身離さず管理されていた。どこか見落としはないか? そこかおいっ! 正直、冗長だなあと思いながら読んでいたが、ちゃんと伏線になっていたのである。盲点を見事に突いた、ありそうでなかった1編。

     「ドッペルゲンガーの銃」。離れた2箇所で同時に起きた事件。ドッペルゲンガーが起こしたとしか思えない状況の根拠は、ミステリ好きなら聞いたことがある、あの用語。そう、○○○は決して嘘をつかない。だからこそ、こんな状況が生まれてしまった。何だか悔しい気がするが、ぐうの音も出ない。

     「翼の生えた殺意」。状況からして自殺と考えられる、資産家の死。他殺だとすれば、容疑者はたった3人に絞られるが…。本格にはお馴染みの要素がてんこ盛り。その必死の様子を想像すると、涙ぐましいけれども…これだけはちょっとずるい気がする。まあしかし、その点も含めて計算されていると言えるだろう。

     このキャラクター設定は必要なのか? とちょっと思ったが、こういうキャラクターだから、本格としてのガチさが際立つのかもしれない。

  • 倉知淳の作品を久々に読了。
    星振り山荘のイメージが強く本格ミステリーを期待したが、ライトなさくふうで読みやすく少し笑える作品。
    全ての登場人物にクセがあり、灯里と大介のペアは今までのミステリーに登場するセットの中で上位に入るくらい魅力的だった。
    作中のお約束がいくつかあるがそいったところも楽しく読むことがでた。
    基本的にはライトなミステリーもすきなのだが、この時期は丁度重たいミステリーを読みたいタイミングだったので。巡り合わせが悪かったなあ(笑)

  • ミステリ中編集。どれもこれもが不可解な謎、なのだけれど、解ってみるとそのトリックはどれもがとーってもシンプル極まりありません。でもなかなか解けません。「翼の生えた殺意」だけ辛うじて……8割くらいは解けたかな、という感じでした。
    創作に行き詰まる女子高生ミステリ作家の妹と、エリートキャリア刑事だけれどポンコツの兄。これは当然妹が探偵役として謎を解き明かすのだろう、と思って読んでいたら……え、何その展開。この事態が一番ミステリかもしれません。まさしく現象なのか症状なのか……でもどっちでもいいや、なんか楽しいから。
    お気に入りは表題作「ドッペルゲンガーの銃」。これ、よくよく考えてみれば何のためのトリックだったのか、ってのがポイントだったのですね。そこに気が付いてみれば……いや、それでも解けないか(苦笑)。

  • 優秀だけれどもどこか抜けている兄と高校生小説家でおてんばな妹が、一見不可能な殺人事件を解決していく物語。

    興味をそそるストーリーが3編収録していて、期待していた分、割とあっさりとした終わり方でなんとなく尻つぼみ感がありました。また、華麗に妹が事件を解決!かと思いきや、兄の体にご先祖様の霊が乗り移り、その霊が謎を解いていきます。ファンタジー要素を入れたためか、あまり現実感がなく、B級ミステリーを読んでいる感覚でした。3編とも基本的な流れが一緒なので、最後の方になると、ちょっと飽きてくるなと思いました。
    それぞれの殺人事件でのトリックは、あまり驚きというのはなく、登場する編集者の気持ちがわかりました。どこか地味で、パッとしませんでした。
    エンタメ性は抜群で、シリーズ化してもおかしくない印象でした。

  • 小難しくなくてさっぱり読めた
    でも帯に書いてあった完全無欠のフェアプレイ精神ではないんじゃないかな

  •  ちょっと軽く書かれているけど、アイデアはなるほど。

  • 新人ミステリー作家の女子高生灯里は焦っていた。受賞後二作目のプロットが全く通らないのだ。そこで、兄からアイディアを得ることにした。若くしてキャリア警察官僚のわりにぼんやりした兄に、奇想天外な事件を教えてもらうのだ。現場にも行き、そこで出会う謎につまづくが、その謎を解くのは妹でも兄でもなく……。密室の蔵に突如現れた死体、2つの地点で同時に事件を起こす分身する犯人、痕跡を残さず空を飛んで去っていった犯人の三編収録。

    構えていたよりあっさりした仕上がり。兄と灯里のやりとりも慣れてくると微笑ましく、事件もそこまで突飛でなく。確かに先祖の一件を抜いて書いたら編集さんに地味ってボツにされるのは分かるわってな仕上がり。タコ踊り始めた時は構えたけど、先祖かわいいよ先祖。軽い読み物として、シリーズ化するなら読みたいかな。

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著者プロフィール

一九六二年静岡県生まれ。日本大学藝術学部卒。九三年「競作 五十円玉二十枚の謎」に応募し、若竹賞を受賞、九四年『日曜の夜は出たくない』で本格的に作家デビュー。二〇〇一年『壺中の天国』で第一回本格ミステリ大賞を受賞。著書に『星降り山荘の殺人』『片桐大三郎とXYZの悲劇』『皇帝と拳銃と』『豆腐の角に頭ぶつけて死んでしまえ事件』『月下美人を待つ庭で猫丸先輩の妄言』などがある。

「2021年 『作家の人たち』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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