百花

著者 :
  • 文藝春秋
3.54
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  • Amazon.co.jp ・本 (299ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784163910031

作品紹介・あらすじ

「あなたは誰?」息子を忘れていく母と、母との思い出を蘇らせていく息子。ふたりには忘れることのできない“事件”があったーー。現代に新たな光を投げかける、愛と記憶の物語。『世界から猫が消えたなら』『億男』『四月になれば彼女は』の著者、待望の最新刊!【内容紹介】大晦日、実家に帰ると母がいなかった。息子の泉は、夜の公園でブランコに乗った母・百合子を見つける。それは母が息子を忘れていく日々の始まりだった。認知症と診断され、徐々に息子を忘れていく母を介護しながら、泉は母との思い出を蘇らせていく。ふたりで生きてきた親子には、どうしても忘れることができない出来事があった。母の記憶が失われていくなかで、泉は思い出す。あのとき「一度、母を失った」ことを。泉は封印されていた過去に、手をのばすーー。現代において、失われていくもの、残り続けるものとは何か。すべてを忘れていく母が、思い出させてくれたこととは何か。

感想・レビュー・書評

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  • 濃密な母と息子の物語でした。
    産まれたその日からずっと二人きりの生活。
    父の名前も顔も知らない。
    祖父母との縁も切れていて、頼る人は誰もいない。
    だからだったのかもな?と今は思い始めています。
    息子を置いて不倫相手の元へ走ってしまった母。
    中学生の息子は一年間、一人きりの生活をします。
    ‥‥どうしてもそこが受け入れられなくて、レビューを書くことができなかった私‥‥
    でも朝ドラの『舞いあがれ!』を見ていて、ちょっと考えが変わりました。
    『舞いあがれ!』では体の弱いヒロインと心配し過ぎる母が祖母の家に住むようになるのですが、祖母は
    母に「お前は帰れ」と言います。母娘の共依存に、祖母は危険を感じたのだと思います。そして母も娘と離れてホッとしている自分に気付きます。
    この物語の母と息子も頼れる人がいれば違ったのかもしれません。母も一生懸命なだけだったのかもしれません。そのピンと張った糸がプツンと切れてしまっただけなのかも。
    読書はやっぱり自分のフィルターにかけて読み進めていると思うので、映画化されたこの作品を観たらまた印象が違うのかもしれません。

  • 映画が海外の賞を受賞したとのニュースを耳にし、遅ればせながら読んでみました。

    嬉しいこと、辛く悲しいこと…
    いつまでも覚えているだろうと思っていても、
    時が経つといつの間にか忘れてしまう。
    「みんないろいろなことを忘れていくのよ。だけどそれでいいと私は思う」と笑っていた母。
    その母が認知症になっても忘れなかった親子の思い出…ラストで息子がそれを思い出すシーンはじんときました。

    現在と過去の場面が頻繁に入れ替わる読みづらさ、この登場人物は必要?という疑問も感じました。

  • 綺麗な話だった

    きいろいたべものがすきなんだ

    灰色がかった黄色い空には色とりどりの花火があがる
    不思議な花火。上半分だけ、半円の花火。

    思い出を盗むなんて、なんてひどい

    花火は消えてしまう
    色や形も忘れてしまう
    そこがすきなの

    覚えている、誰とみてどんな気持ちになったのか

    大切なはずの名前を忘れても
    大切な気持ちは残っている

    • kohei1813さん
      映画も見てください。
      映画も見てください。
      2024/01/22
  • シングルマザーで、ピアノを教えて一人息子を育てた女性が、認知症になっていく。
    息子は、自分を忘れていく母親を、介護する。

    私にも、娘と息子がいるが、子供には、決して迷惑をかけたく無いと、思ってはいるが、事、認知症に関しては、どうなるかわからない。

  • 川村元気という人をあまり知らない。
    「億男」からの2冊目
    題名と、本の美しさに惹かれて
    借りたもののなかなか読む気にならなかった。

    本にはいつも白紙で向き合う〜
    読後中村元気の肩書に驚き

    映画監督、脚本家、絵本作家
    はたまた題名を知っている作品多々。

    アルツハイマー
    最近このテーマが多くない?
    葛西百合子「母」
    葛西泉「息子」
    だんだん母が若くして認知症になる

    認知になる症状のリアルさに
    恐ろしく、悲しかった。

    泉の好きな味噌汁を作ってるよと
    そこには鍋の中には広告だとか紙がちぎられ
    お味噌汁の具になっていた。

    これだけではなく、
    ネタバレになるので書けないが
    シングルマザーで誰にも頼らず
    ピアノ教師をしながら生きてきた百合子に起こったことがあるー
    このことを自分は許せなかった、

    息子の泉が許して生きてることをーどうしても
    許せない。自分の潔癖性、真っ直ぐすぎる
    融通のつかないところ。
    本を通して自分の狭さに「なんだろう〜」と傷ついた。

    作品はよくできてる
    さすが変化に、テーマに
    泉自身が親になることへの戸惑い。

    しかし、器用に作られてる
    うますぎることにもう一つ信用できない?
    他の作品をまだまだ読めばわかるのだろうか
    出来過ぎ感が否めない。
    器用にこなしてる。
    映画やテレビにすればおそらくヒットするだろう〜
    この不信感はなんだろう〜
    いつか
    この思いに詫びる時があるのかないのか?

    本文よりー
    医者が言うには
    もともと50年も生きることができなかった人間が
    長生きするようになって
    ガン患者が出てきた
    ガンが治せるようになりさらに長生きできるようになったら
    アルツハイマーが増えた、どこまでいっても、人間はなにかと戦わなくてはならないんです。」

  • 『百花』川村元気さん
    1.出会い
    世界から猫が消えたなら
    億男
    四月になれば彼女は
    理系に学ぶ
    と読んできました。
    好きな作家さんのひとりです。

    2.百花を読み終えて
    どの小説とも違う読了感です。
    題材が、高齢に伴うアルツハイマーだからであるかもしれません。
    いえ、最後に記載ありますが、川村さんの祖母との思い出、歩みを想いながらの執筆だからかもしれません。

    近くの人。
    愛する人。
    その人がアルツハイマーになったとき、周りはどのように受け止めていくのか?
    そして、その人が願う、最期かもしれない願いにどのように寄り添えるのか?

    遠くに離れていたら、やはり、進行に気づけないのかもしれません。
    また、本人は、認めたくないために、声もあげないのかもしれません。

    そして、忘れるのは、その当人だけではなくて、周りの人たちも、少しずつ大切な何かを失っているのかもしれません。

    だからこそ、今を生きる。
    この一瞬を一遇として生きる。

    そんな想いになりました。

  • 一流レコード会社に勤めるエリート夫婦
    その旦那の母親がアルツハイマーになり
    あっさりと超優良な施設が見つかり
    すぐに入れる!
    その母は息子が中学生の時、不倫相手と
    一緒に神戸に行ってしまう
    息子を置いて…
    一年くらいでしらっと帰ってくる!

    アルツハイマーが進行して、息子自身も認識できなくなったと思ったら、すぐに肺炎で死にましたとさ

    1つも感情移入出来ずに、読んでて辛かった…
    前の2作はけっこう好きだったので残念です
    次回作に期待します

  • 泉と母 百合子のお互いを思う切なさに、とても考えさせられました。大切な人はいなくなってからその存在の大きさに気付かされます。この本はそんなことを教えてくれました。

  • 映画化されたけれど観に行く暇がないので、小説で読むことにした【記憶】にまつわる話。
    認知症まではいかないけれど、自分の母親も物忘れが激しいのでなにか参考になるかな?と思い読んでみた。
    仕事、妊娠出産、日記、施設とコロコロ場面展開してどの話も中途半端で、正直今までに味わったことのない読み辛さだった。どうやらこの方とは相性が良くないみたい。途中諦めそうになったけれど2週間かけて読了。
    日常的な記憶は失くしても、人生において大事な場面の記憶は覚えている。最後の最後で少しスッキリ。
    例え母親が私の名前を忘れてしまっても、昔印象的だった出来事を1つでも覚えていてくれたらそれでいいと思えた。その時読み返したらもっと響くだろう。
    きっと映画なら泣いてる。

  • 認知症の親を看取った経験から言えば、認知症のもっとどうしようもない悲惨な状況にはならずに理想的な施設に入所出来て、泉も百合子もラッキーとしか言いようがない。まぁお話ですから。
    母と息子が2人で生きてきて、途中で母を離脱し一年間女になったり(そこまで極端でなくても)子育ての長い年月には様々なことがある。それを一緒に振り返る事はなくても、それぞれに思い出してみれば、もしかしたら、そこには感謝と同じくらい、たらればの後悔があるんじゃないかなぁと思う。
    半分の花火を見て泣き崩れる泉に何となく自分が重なった。

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著者プロフィール

かわむら・げんき
1979年、横浜生まれ。
上智大学新聞学科卒業後、『電車男』『告白』『悪人』『モテキ』『おおかみこどもの雨と雪』『寄生獣』『君の名は。』などの映画を製作。2010年、米The Hollywood Reporter誌の「Next Generation Asia」に選出され、’11年には優れた映画製作者に贈られる「藤本賞」を史上最年少で受賞。’12年に初の小説『世界から猫が消えたなら』を発表。同書は本屋大賞にノミネートされ、佐藤健主演で映画化、小野大輔主演でオーディオブック化された。2作目の小説にあたる本作品『億男』も本屋対象にノミネートされ、佐藤健、高橋一生出演で映画化、’18年10月公開予定。他の作品にアートディレクター・佐野研二郎との共著の絵本『ティニー ふうせんいぬものがたり』、イラストレーター・益子悠紀と共著の絵本『ムーム』、イラストレーター・サカモトリョウと共著の絵本『パティシエのモンスター』、対談集『仕事。』『理系に学ぶ。』『超企画会議』。最新小説は『四月になれば彼女は』。


「2018年 『億男 オーディオブック付き スペシャル・エディション』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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