琥珀の夏

著者 :
  • 文藝春秋
3.71
  • (375)
  • (871)
  • (761)
  • (82)
  • (19)
本棚登録 : 9128
感想 : 722
本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています
  • Amazon.co.jp ・本 (552ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784163913803

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  • そこそこ分厚いハードカバーだったので躊躇してたけど、やっと読了。
    内容の予備知識なしだったので、何系の話なのかも全く分からず先入観なしで読めた。

    宗教施設で発見された女の子の遺体を巡り、当時の関係者がそれぞれの立場で真相を求めるって感じかな。宗教施設って書いたけど、その呼び名というか、どうしてもマイナスに捉えてしまう先入観について考えさせられた。

    個人的には、特定の宗教に傾倒してないし、金銭面や暴力・拘束、人を強引に勧誘等なければ、思想の自由で誰が何を信じていてもいいとは思う。個人の自由。
    ただ、視野が狭くなったり、行動が制限されるのはどうかとも思う。って当たり前のことだけど、小説だからそれぞれの立場で読め、自分の想像だけでなく違う角度から見ることができてハッとさせられる。
    何のための思想なのか。それが、自分のしたいことで、他を巻き込まなければいいのかな。
    その、他を巻き込まないというのがかなり難しい。ほとんどの人には家族がいる。

    話の中の登場人物の心情描写が細かくて痛く切なくなる。人は生きていく為に忘却するし、忘れたくなかった大事な事でも仕方ない。
    わが子は可愛いけど、母親だって人間で、子育てに向き不向きはある。
    共感できない部分がそこそこあったし、弁護を引き受けた後がもっと読みたかったので、☆マイナス1だけど、色んな角度から疑似体験できて、とても心に残る作品だった。

    内容と直接関係はないけど、モヤモヤするなんとも言い難い思いを言葉や文章に書けることは、改めて重要で素晴らしい手段だと実感した。

  • まさかきっかけがそういう事だったとは、、、
    その時のミカにとっては、大人にも友達にも相談できない、一番困る事だったかも。

    先が気になりぐんぐん読めて、読後はちょっとすっきり、面白かった。

  • 子供時代にうまく言葉にできなかった感情を巧みによく表現しているからこそ引き込まれる。
    法子の言う通り美香はミライの学校に慰謝料請求できる立場。子供に罪悪感植え付けるのも大人。
    子供の人生は親で決まってしまうが、本当はそんな事あってはならない。虐げられたミカたちが、いつかは人を愛することを知って、我が子と寄り添う日々を送って欲しいと願いつつ、虐待を受けた子供たちが、いつかその幼少期がおかしかったと気づき、自分を愛せるようになることを応援しながら読んでいったように思う。

  • 宗教二世の話かと思いきや、そういう話でもないようで。

    ミライの学校と呼ばれるところで、白骨死体が発見される。

    そして、弁護士の法子の元に、その白骨死体は孫のものかもしれないから調べて欲しいと、老夫婦から依頼が。

    法子は子供の頃、夏休みの間だけ未来の学校へ3回ほど行ったことがあり。

    白骨死体は一体誰なのだろう?という謎とともに、子供の頃の出来事と現代と交互に物語は進んでいきます。

    この本を読んで、子供を産むことによって、社会から離れてしまった人がいて。そして、再び活躍の場を与えられると、嬉しいし喜びや自信もあふれた感じになり。

    ただ、子供がいるから産まれる前のような訳にもいかず、活動に制限もされるわけで。

    ミライの学校に預けられる子供たちや、世間の事を考えるとありえないことなのかもしれないけれど、それをありえないという世の中を変えていかないと、女性が活躍する場面も減るし、少子化に繋がっていくんじゃないの?と思いました。

  • 親元から離れて
    先生と子供と過ごす<ミライの学校>
    いつからかカルト球団と批判を浴びる
    そこの敷地後から少女の白骨遺体がみつかる
    弁護士の法子は
    <ミライの学校>で出会ったミカちゃんではないかと思う

    ミカが願いを込めて泉に
    泣きながら宝物を流す場面が胸が痛い

    ごまかして汚いものに蓋をする大人
    美しさや清さ、情熱信念これだけが教育なのか

    親元を幼い時から離れることは
    自立する近道なのかもしれない
    でも、それははたして本物の自立?
    小さい時からずっと子供といて
    過保護、過干渉、虐待のケースもある

    子供にとって何が一番の教育なのだろうか
    それは親子の数だけ答えがあるのかもしれない
    その答えが出るのは子供が大人になってから

    読む性別、年代によって受け取り方が変わる小説

  • 子供時代の描写が丁寧に描かれてるが故に、野暮ったくて読みづらいと感じる側面があったが、結果的に、大人時代との対比が上手く表現されており、中盤以降は一気に引き込まれた。
    かがみの孤城と傲慢と善良の中間ぐらいの作品との印象を受けた。

  • ぐいぐい引き込まれて読ませるチカラがすごかった。
    子ども時代の話は特に、リアルというか説得力があるというか…女の子同士の気持ち、親への思いなど、感情移入して読んでしまいました。

    とても読みごたえがある作品ですが、テーマがテーマなので、再読はしたくない。
    それだけ入り込んでしまったとも言えるかな…。

  • 小学生の頃の思い出ってなぜ忘れちゃうのでしょうね。私も全然覚えていないな〜。
    カルト集団的な集まりの夏合宿に一般の子が参加するというストーリー。
    そういえば、若い頃の職場の近くに、宗教団体の家族が住んでいる団地みたいなのがあって、夏合宿の参加者募集のチラシを見たことを思い出しました。今でもやってるのかなぁ。

    しかしながら、主人公のノリコやミカやその他登場人物の女の子たちがあまりにもネガティブそして気にしすぎなところが読んでいくうえでちょっとイラっとして感情移入できなかったです。

    真相はちょっとあっけなかったけれど、白骨で発見された子以外はみんなちゃんと大人になっててよかった。

  • 【あらすじ】
    かつてカルトと批判された〈ミライの学校〉の敷地から発見された子どもの白骨死体。弁護士の法子は、遺体が自分の知る少女のものではないかと胸騒ぎをおぼえる。小学生の頃に参加した〈ミライの学校〉の夏合宿。そこには自主性を育てるために親と離れて共同生活を送る子どもたちがいて、学校ではうまくやれない法子も、合宿では「ずっと友達」と言ってくれる少女に出会えたのだった。もし、あの子が死んでいたのだとしたら……。30年前の記憶の扉が開き、幼い日の友情と罪があふれだす。

    ・‥…━━━☆・‥…━━━☆・‥…━━━☆

    子どもの頃に過ごした山村での記憶を「琥珀」という言葉で表現しているのが秀逸だと思いました。キラキラしているけど、その中には時と共に閉じ込められた存在がいる…実はそれほどいいものではないよ、外側から見ているだけなら綺麗だけどさ。この本を手に取ったときには、「琥珀」という表現にそういった皮肉が込められていると思いもしませんでした。
    また、子育ての仕方・理念についても考えさせられる作品でした。この作品に出てくる「ミライの学校」は、親元を離れて子供たちだけで生活することで自主性を養うという、一見とても大切なことを実践していますが、その一方で、普通の学校で普通の社会を経験せず、限られた世界での生き方しかわからない人間が育ってしまうという問題に気づかずにいました。高い理想を持ち、それを子育てで実践するということについて、私は親としてある程度必要なことだと考えていました。しかし、大人の考える「理想」が果たしてその子の未来につながるのか、という点を抜きに考えてしまうと大変なことが起きるのだと気付かされました。人と違うことをして、結果的に周囲から浮いてしまうリスク、何か他の大事なものを失ってしまうリスク。親として、本当に子どものためを思ったときに何が大切なのかを一歩立ち止まって考えることが大事なのだと。理想は、それ単体で独立して存在できるものではなく、社会の一部として真っ当に機能といけないのですね。

  • ❇︎
    社会から隔離された宗教施設で育った子供と
    施設が開く夏の合宿に参加した子供が時を経て
    ある事件を機に再開する。

    体験した夏の思い出とかけ離れた友達の姿に
    驚きながらも、思い出にある相手の面影を
    探してしまうもどかしさ。

    子供故の純粋さと残酷な感情を改めて感じる
    戸惑いは、幼い時に共有した思いの見せ方を
    変えて大人同士の関係性を形作ってゆく。

    ーーー
    子供たちの自主性を育てる考え方の元、
    作られた〈ミライの学校〉と『学び舎』

    そこで過ごした夏の一週間。
    麓と〈ミライの学校〉異なる空間の生活で
    生まれる子供たちの感覚の相違。

    麓の学校で友達に溶け込めないと悩んでいた
    ノリコにとって学び舎のミカとシゲルと過ごした
    一時は掛け替えのない思い出だった。

    ずっと長くノリコが忘れていた記憶は、
    子供の白骨が発見されたことで呼び起こされる。

    〈ミライの学校〉の事件と関わることで
    記憶の中身は曖昧さを増して当時と違う表情を
    みせ始める。

    思い出という琥珀の中にキレイな結晶として
    閉じ込められた記憶は、年月を経て飴色に輝き、
    見る者の心によってその見せ方を繊細に変える。



全722件中 51 - 60件を表示

著者プロフィール

1980年山梨県生まれ。2004年『冷たい校舎の時は止まる』で第31回メフィスト賞を受賞しデビュー。11年『ツナグ』で第32回吉川英治文学新人賞、12年『鍵のない夢を見る』で第147回直木三十五賞、18年『かがみの孤城』で第15回本屋大賞を受賞。『ふちなしのかがみ』『きのうの影ふみ』『ゼロ、ハチ、ゼロ、ナナ。』『本日は大安なり』『オーダーメイド殺人クラブ』『噛みあわない会話と、ある過去について』『傲慢と善良』『琥珀の夏』『闇祓』『レジェンドアニメ!』など著書多数。

「2023年 『この夏の星を見る』 で使われていた紹介文から引用しています。」

辻村深月の作品

この本を読んでいる人は、こんな本も本棚に登録しています。

  • 話題の本に出会えて、蔵書管理を手軽にできる!ブクログのアプリ AppStoreからダウンロード GooglePlayで手に入れよう
ツイートする
×