400年前なのに最先端! 江戸式マーケ

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  • 文藝春秋
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  • Amazon.co.jp ・本 (240ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784163913858

作品紹介・あらすじ

 遊郭のガイドブックだった「吉原細見」はなぜ大ヒットしたのか? 越後屋はなぜ番傘をタダで配るのか? 豊島屋はなぜ酒を原価で提供できたのか? 江戸にいた12人の天才起業家たちが編み出した「400年前なのに最先端」のマーケティング戦略を1冊に集約!
 ドラッカーはかつて「マーケティングは三井家によって発明された」と書きました。現代、世界を席巻するビジネスモデルの原型はすでに江戸にありました。シェアリングエコノミー、信用経済、デザイン経営、サブスクリプション、コト消費、ビジョナリー経営――商売の本質は今も昔も不変。現代の最先端マーケティングを先取りしていた古くて新しいビジネスモデルを『一行バカ売れ』著者が徹底網羅。「ストーリーブランディング」の紀伊國屋文左衛門、「価格戦略」のにんべん 六代目髙津伊兵衛、「産地ブランディング」の山本山 五代目山本嘉兵衛ほか、図解でわかりやすく50の『江戸式マーケ』を解説します。

感想・レビュー・書評

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  •  かの有名な経営学者ドラッカーが、「マーケティングの元祖」は日本にあったと語っていた。その元祖とは、三井越後屋(のちの三越)を開いた江戸時代の商人、三井高利が始めた「現金安売り掛値なし」の手法をさしていたという。
     しかし江戸時代の日本には、これ以外にも世界に通用する革新的なビジネスモデルがあふれていた、というのが本書の主張。現代のマーケティング理論に通じる江戸時代の事例を分かりやすく解説している。
     例えば三井越後屋の「現金安売り掛値なし」の引札は本邦初のダイレクト・マーケティング。雨の日に行った越後屋マーク入り番傘貸し出しは、シェアリング×社会問題解決に加え、無料PR戦略と言えるもの。
     本書は他にも、流行作家と話題作を創りあげ「出版コンテンツマーケティング」を営んだ出版人・蔦屋重三郎、幕府公共事業で治水や航路開発に関わり「ソーシャルビジネス」を行った材木商・河村瑞賢など、様々な人々を取り上げる。歴史エンタメ要素を備え、多くの示唆を与えてくれる軽妙洒脱なビジネス書と思える。

  • 〇縁の聖地巡りをしたい。
    〇江戸の起業家たちのパワフルさ!一人ひとりの伝記を読みたい。
    〇キャリア教育資料にもなりそう。

    ・創業200年の老舗企業…世界に2051社、内日本企業1340社
    ・江戸の創業者のビジネスモデル、イノベーション
    ・温故知新。古い事例を抽象化することで活用する。
    ※集めた事例資料の精査は行っていない。エンタテインメント、入り口として読んでほしいとのこと。

    三井高利「三井越後屋」マーケティングの元祖
    ・番傘の無料貸出:シェアリングサービス
    ・店頭切り売り販売:ダイレクトマーケティング
    ・現金安売り掛け値なし、日本初のキャッチコピー:広告戦略
    ・“暖簾印”:ブランド戦略
    ・事業の多角化:ブルーオーシャン戦略
    ・ホールディングス
    ・マーケティング(ドラッカー絶賛)

    蔦谷重三郎「耕書動」日本初!本格コンテンツ・マーケティング
    ・ガイドブック「吉原細見」独占販売:ストックビジネス
     →現代のパンフレットの大きさとほぼ同じ
    ・流行作家をおさえ、時代に合わせたコンテンツを提供:コンテンツマーケティング
    ・才能の発掘:プロデュース戦略
     →北斎、馬琴、一九など。
    ・写楽の役者絵を話題に:PR戦略
    ・平賀源内:マーケティング戦略
     →イベント、コピーライター(あけすけ)、インフルエンサー・マーケティング、
    ※TSUTAYAとは別。

    富山藩二代目藩主前田正甫、越中富山の薬売り:顧客信用ビジネス
    ・売薬事業の推進:事業開発
    ・反魂丹のトップセールス:PR 戦略
    ・全国販売の許可:官民一体ビジネス
    ・先用後利:顧客信用ビジネス
    ・懸場帳による需要予測:データベースによる顧客管理
    ・おまけ商法:ロイヤルカスタマーの囲い込み戦略
     →紙風船や錦絵

    下村彦右衛門正啓「大丸」ビジョナリーカンパニー
    ・目標:ナンバーワン戦略
    ・パクる。先輩の商法を他の土地で:創造的模倣川柳
    ・傘、手ぬぐい、ふろしきでのPR 戦略
    ・ 先義後利:ビジョナリー戦略
     →人としての正しい道を全うして商売に励む
     →お客のためにならないものは絶対に売らない
     →お客の足元を見ない
     →お客に上下をつけない
    ・貧民救済などの社会貢献
     →大丸=義商  大塩平八郎の乱でも、心斎橋大丸は火を放たれなかった

    河村瑞賢・材木商:ソーシャルビジネス
    ・東廻り航路・西廻り航路の開発:ソーシャルビジネス、東京米不足対策
     →現地調でボトルネックを解消
      ①安全性向上を優先 ②幕府直轄の旗を掲げ、各藩に保護させる ③過積載の管理 ④事故リスクを下げる
    ・淀川治水事業:ソーシャルビジネス、水害対策
    ※海運航路、治水工事、新田開発、鉱山開発など公共事業に尽くす。
     →日本全国の町の発展、大坂=天下の台所、社会問題を解決しながら事業収益もあげる。

    ※現代のソーシャルビジネスの三原則
     ①社会性 ②事業性 ③革新性

    保科正之:有事の際のリーダーシップ

    豊島屋十右衛門「豊島屋酒店」原価販売ビジネス
    ・酒の原価販売(飲み屋)で儲ける仕組み
     →酒ではなく、空の酒樽で儲けた。リサイクル
     →現金払いのみで販売し、資金のプール期間に金貸し業も行う
    ・「田楽豆腐」で酒の消費アップ
     →居酒屋の原型
    ・季節限定品、女性客の取り込み:ターゲティング
     →桃の節句の白酒は女性が堂々と酒をたしなめる。

    ※鴻池新右衛門
     使用人の腹いせから清酒発見
     →濁り酒に灰を放り込まれた

    ※現代のマーケティング戦略
    ・アマゾンのサブスクリプション

    二代目西川甚五郎「西川屋山形屋」デザイン経営
    ・顧客を武士から町民へ:ターゲティング戦略
    ・蚊帳のデザイン変更
    ・イケメンボイス:PR 戦略

    ※近江商人「三方よし」売り手よし、買い手よし、世間よし

    五代目山本喜兵衛「山本山」産地ブランディング
    ・煎茶に「天下一」の名前をつけ、売り出す:ネーミング戦略
     →人気商品「山本山」がそのまま社名に。
     →四代~六代で商いを広げる。お茶文化の振興。
    ・マイナー茶を大ヒット商品に:産地ブランディング
     →狭山茶
    ・玉露の商品開発とブランディング:ネーミング+お墨付き

    ※二代目が味付け海苔を発明

    ※今治タオル:産地ブランディング
     →敢えての白いタオル。タオルマイスターなど、販売者・生産者の育成。

    六代目髙津伊兵衛「にんべん」前払いビジネス
    ・現金掛け値なしの導入:価格戦略
    ・庶民から大名家まで:顧客の多様化
    ・「イの切手」商品券:前払いビジネス

    ※コストコ
     会員制、利用者の年会費で利益を産む。
     低価格・大量仕入れ

    紀伊国屋文左衛門
    ・噂とうたで口コミ戦略
    ・物語:ストーリーブランディング
     →みかん船伝説 
     ※ストーリーの黄金律
      ①欠落した欠落させられた主人 ②遠く険しい目標 ③障害や葛藤を乗り越える
     みかんという品物ではなく、みかん船というイベント
    ・イベントでお客を巻き込む:コト消費
     ←プロデューサー?

    ※ダラーシェイブクラブ
     大手メーカーに立ち向かうストーリー

    佐賀藩第十代藩主 鍋島直正
    ・リストラと財政改革
     →佐賀藩を日本最強に。肥前の妖怪。
    ・教育への先行投資
     →天然痘ワクチンを佐賀から全国へ。
    ・身分を問わず人材を登用
    ・藩外からも技術者のスカウト、研究所を創設:イノベーション戦略
     →理化学研究所

    ※富士フィルムの奇跡
     フィルム産業の斜陽からの新規事業

    伊能忠敬:シニア企業
    ・豪商伊能家の采配。多角経営。
    ・年齢にこだわらない師:年下メンター戦略
     →年寄りの道楽と思っていた高橋至時も次第に忠敬を尊敬するように。よく師弟で喧嘩もした。上野でお墓が並んでいる。
     →暦学、天文学
     →日中の金星の南中を観測データ。観測所の設立。、
    ・大義名分「日本地図」、本当の目的は「子午線1度の距離」
     →江戸から蝦夷までの距離の測量が必要。当時、江戸は禁足地。
     →弟子・間宮林蔵
    ・持ち出しでも成果を:損して得取れ
    ・地図慣性前に亡くなるが弟子たちは3年隠して、「大日本沿海輿地全図」の完成に合わせて発表。

    ※ライフネット生命:出口治郎・60歳の企業。
     左遷からの退職。若いパートナーを得て企業。

  • 「ストーリーブランディング」の紀伊國屋文左衛門、「価格戦略」のにんべん 六代目髙津伊兵衛、「産地ブランディング」の山本山 五代目山本嘉兵衛…。現代に通じる江戸時代のマーケティング戦略を、わかりやすく解説する。

    第1章 三井高利「三井越後屋」 — ドラッカーも絶賛! マーケティングの元祖
    第2章 蔦屋重三郎「耕書堂」 — 日本初! 本格的コンテンツ・マーケティング
    第3章 富山藩二代目藩主前田正甫&越中富山の薬売り — 200年以上続く「顧客信用ビジネス」を確立
    第4章 大丸 下村彦右衛門正啓 — 京・大坂発の「ビジョナリーカンパニー」
    第5章 材木商・河村瑞賢 — 江戸の「ソーシャルビジネス」とは?
    第6章 豊島屋十右衛門 「酒屋豊島屋」 — 「原価販売ビジネス」で大繁盛店に!
    第7章 二代目西川甚五郎「 西川家山形屋」 — 「デザイン経営」でV字回復!
    第8章 山本山 五代目山本嘉兵衛 — お茶の「産地ブランディング」
    第9章 にんべん 六代目髙津伊兵衛 — 「前払いビジネス」の先駆け
    第10章 紀伊国屋門左衛門 — 「ストーリーブランディング」で江戸一の豪商に
    第11章 佐賀藩 十代藩主 鍋島直正 — 徹底した「組織改革」でどん底から最強藩へ
    第12章 伊能忠敬 — 歴史に残る「シニア起業」のロールモデル

  • ◯三井高利
    日本に老舗が多い。200年。65%が日本にある
    故きをたずねて新しきを知る→古い事例を抽象化する能力
    ・番傘のシェアリングシステム、
    →ロゴマーク、顧客満足、シェアリング、
    現代にはアイカサ

    ◯蔦谷重三郎(プロデューサー)
    大田南畝:狂歌、和歌のバロディ
    喜多川歌麿、東洲斎写楽
    二つのものを組み合わせてヒットをうんだ

    ◯前田正(浦の右)とし:薬売り
    先用後利:利益は後、信用を売っていた

    ◯下村彦右衛門正啓
    先義後利:人としての正しい道をきちんと全うして商売を励めば利益は自ずとついてくる。

    ◯豊島屋十右兵衛
    酒を原価で売る
    →酒樽を売る、大量に買って安く、下り酒という今まであまり飲まれなかった酒を売る、女性が飲める白酒を期間限定で売る
    →鴻池新右衛門、使用人が怒って、酒樽を灰に入れたするとにごり酒が澄んだ色になる、そこから清酒がうまれた。

    ◯伊能忠敬
    19歳年下に師事する
    →常識を覆す、そんなこと考えない


  • 江戸時代の商人たちが考えた商売の基本や仕組みは、抽象化して考えれば、今に通じることも多いことがよく分かった。例えば、三井が無料で貸し出した番傘。これは、シェアリングエコノミーであるともいえるし、Youtubeのように利用者の場を借りるともいえる。西川が蚊帳の色を素材のままの茶色から萌黄色に変えた話。機能性だけでなくデザイン性も大事であるという、iPhoneなどにつながる話である。当時を思い浮かべながら、今のビジネスモデルや提供価値を考えると面白い。この本の内容を基に、BMCを作ってみると面白いかもしれない。

  • 独自の哲学で成功を切り開いた偉人たちの発想術に触れる

  • 「越後屋、お主も悪よのう」の江戸商人にあらず

    「世のため人のため」と前代未聞のアイデアを実践することで、令和の今に残る商売を生み出した人たちの利真於勤のマーケティング術

    三越、にんべん、山本山、西川、榮太郎總本舗、山本海苔など400年企業巡りをしに日本橋に出掛けたくなる一冊

  • 江戸時代の知恵者たちは如何にして富豪となったのか。様々な発想・知恵・経験努力が隠されている。中でも「三井越後屋」三井高利がダントツの商売に於ける知恵者であり、イノベイターであったとも言える。発想力、創造力、推進力、行動力どれを捉えても抜群の成果を生み出し、後世につなげている。日本には老舗も多く伝統を如何に継承するべきかなどコロナ禍での葛藤で如何に守り生き残りをかけるべきか、存続企業の試練の時代でもあると思う。

  • 新聞の書評欄でみつけて手に取ってみた一冊。切り口としては面白い視点でしたが、江戸時代の商人を紹介した本という印象が強い読後感でした。

  • 顧客視点、発想の転換、創意工夫、
    何百年前から、ビジネスの成功の本質は変わらないんだなと思った。

    それはすなわち、人の購買行動=心も変わらないってことなんでしょうね。

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著者プロフィール

コピーライター。湘南ストーリーブランディング研究所代表。
大阪大学人間科学部卒業後、大手広告代理店勤務を経て独立。数多くの企業の広告制作に携わる。東京コピーライターズクラブ(TCC)新人賞、フジサンケイグループ広告大賞制作者賞、広告電通賞、ACC賞など受賞歴多数。特に企業や団体の「理念」を一行に凝縮して旗印として掲げる「川上コピー」が得意分野。「物語」の持つ力をマーケティングに取り入れた「ストーリーブランディング」という独自の手法を開発した第一人者として知られる。現在は、広告制作にとどまらず、さまざまな企業・団体・自治体などのブランディングや研修のサポート、広告・広報アドバイザーなどもつとめる。著書は『物を売るバカ』『1行バカ売れ』『コト消費の嘘』(いずれも角川新書)、『キャッチコピー力の基本』(日本実業出版社)、『江戸式マーケ』(文藝春秋)など多数。海外においても「ストーリーブランディング」をテーマにした本がベストセラーになっている。

「2023年 『ストーリーブランディング100の法則』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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