太平洋の試練 レイテから終戦まで 上

  • 文藝春秋
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  • Amazon.co.jp ・本 (602ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784163915210

作品紹介・あらすじ

史上最大の海の戦いは悲劇のクライマックスへ。
前人未踏の太平洋戦史トリロジー、遂に完結――。

第一部『真珠湾からミッドウェイまで』、第二部『ガダルカナルからサイパン陥落まで』に続き、5年の執筆期間と、前作・前々作の1.5倍の紙幅を費やして描き切られた、太平洋戦争最後の1年間。あまりに巨大かつ濃密なドラマが、かつてなかった戦史の掉尾を飾る。

太平洋戦争はその最終盤においては、初期よりもはるかに大規模に、そしてはるかに政治的になっていた。真珠湾、ミッドウェイ、ガダルカナルといったそれぞれの海戦戦記だけでは決してわからない、終戦に向かう巨大なうねりを可視化するには、本書が描き出す無数の人々の群像劇が必要不可欠だった。

それを象徴するエピソードが、本書上巻冒頭で描かれる、1944年7月のホノルル戦略会議である。ローズヴェルト大統領がハワイを訪れ、太平洋戦域指揮官たちと日本との戦いの最終戦略を計画したこの会議は、これまでの歴史書や伝記ではなおざりにされてきた。
しかし著者は新資料に基づいてこの会議の内実を余すところなく描写する。フィリピン解放を主張する陸軍・マッカーサー、台湾攻撃を支持する海軍・キング。そして前例のない4期目をめざす大統領選出馬を表明したばかりのローズヴェルト。

海軍と陸軍の縄張り争い、国内政治の綱引き、アジアの新勢力図をにらんだ国際政治――日本をどうやって降伏させるかは、単なる軍事的な問題を超えて、微妙な思惑が交錯する政治イシューになっていた。

果たして米軍が台湾に侵攻していたらアジア史がどうなったかは、誰にもわからない。ともあれ、多くの人々の運命を飲み込む決断は下された。そして動き出した奔流のなかで、ニミッツ提督はミンダナオ島を迂回してレイテを攻撃するという劇的な大転換を決意。それに対し、超戦艦武蔵と大和を擁する栗田提督は、レイテ侵攻に全力で対抗する動きを見せる。
太平洋戦争最後の艦隊決戦の幕が上がろうとしていた――。

感想・レビュー・書評

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  • アメリカ側の視点で見た太平洋戦争。 全6巻シリーズの5、6冊目の完結編。上巻はガダルカナル後からレイテ沖海戦まで、フィリピン戦も含む。 下巻はレイテ海戦後から沖縄戦、本土攻略、終戦までを描く。 上巻の前半はアメリカの政治的な話が多かったが、後半は日本の戦史本では読んだ事が無い様々なエピソードや出来事が詳細に考察されていて、大変面白かった。 日本側の戦史本では、米軍が物量と作戦で日本を圧倒したような記述が多いけれど、実は米軍も指揮官の判断ミスや失敗、予想外のことが起きていて、相当苦労しながら戦っていたらしい。 日本の陸海軍の仲が悪かったのと同様に、米軍も陸海軍の仲は良くなかった。 上級の指揮官のうち、誰が主導権を握るかで政治的な駆け引きがあったりして、日本軍と同じような状況だった。 レイテ海戦の栗田中将の謎の反転は有名な話だが、著者の考察には納得する部分が多かった。 つまり栗田中将のトラウマが原因であり、本当は特攻作戦だったが、現場は全く承知していなかったことなど。また日本の戦史本にはあまり出てこないフィリピン戦の状況も詳しく書かれている。下巻では台風でアメリカ艦隊に被害が出ていた話、台湾侵攻を中止した話、九州侵攻のオリンピック作戦や関東侵攻のコロネット作戦なども紹介されていた。 下巻のハイライトは、戦艦大和の沖縄特攻、沖縄戦と日本本土空襲、原爆までの話。政治的、大局的な話から沖縄戦、広島長崎の市民の声まで緻密に取材されていて、大変読み応えがあった。 日本と米国のそれぞれの視点で書かれた歴史を知ると、よりこの戦争が立体的に見えてくる。 戦争は、勝者敗者に分かれるのではなく、どちらも敗者になるのかもと思った。現在進行中のウクライナ戦争も勝者はいないだろう。

  • 三部作の最後は硫黄島、沖縄戦と上陸作戦が描かれる。
    あらためてアメリカの物量と兵站能力に驚かされる。沖縄戦に参加した海軍の艦艇数は1500。そしてそれを支える燃料・弾薬と整備班。
    初めて知ったのは、沖縄戦では海兵よりも海軍の方が犠牲が大きかったってこと。それが特攻の結果だ。それと台風の被害も大きかったらしい。神風は吹いたわけだ。でも1500からすれば、てんでなんだけどね。
    日本軍の奮闘はアメリカにとっては、脅威だった。この結果から、本土上陸作戦前に原爆を使用することになる。軍の犠牲を考慮してだ。アメリカの合理性が怨めしい。

  • 序 章 政治の季節
    報道嫌いな海軍、巧みな宣伝で英雄視される
    第一章 台湾かルソンか
    マッカーサーvsキング
    第二章 レイテ攻撃への道
    劇的な大転換を承認
    第三章 地獄のペリリュー攻防戦
    日本海軍の航空戦力に大打撃
    第四章 大和魂という「戦略」
    神風特攻隊の悲劇
    第五章 レイテの戦いの幕開け
    栗田艦隊・ハルゼー
    第六章 ハルゼーの誤算、栗田の失策
    栗田艦隊の奇襲的な勝機
    第七章 海と空から本土に迫る
    超空要塞Bー29
    第八章 死闘のレイテ島
    日本軍、分断・圧倒される

  • ふむ

  • 【かつてない太平洋戦史三部作、クライマックス】太平洋戦争最後の一年。レイテ侵攻へ動き出す米軍に日本海軍は最後の決戦を挑む。無数の群像劇で歴史のうねりを描く巨弾戦記完結編!

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