極楽征夷大将軍

著者 :
  • 文藝春秋
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  • Amazon.co.jp ・本 (552ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784163916958

作品紹介・あらすじ

やる気なし
使命感なし
執着なし
なぜこんな人間が天下を獲れてしまったのか?

動乱前夜、北条家の独裁政権が続いて、鎌倉府の信用は地に堕ちていた。
足利直義は、怠惰な兄・尊氏を常に励まし、幕府の粛清から足利家を守ろうとする。やがて後醍醐天皇から北条家討伐の勅命が下り、一族を挙げて反旗を翻した。
一方、足利家の重臣・高師直は倒幕後、朝廷の世が来たことに愕然とする。後醍醐天皇には、武士に政権を委ねるつもりなどなかったのだ。怒り狂う直義と共に、尊氏を抜きにして新生幕府の樹立を画策し始める。

混迷する時代に、尊氏のような意志を欠いた人間が、何度も失脚の窮地に立たされながらも権力の頂点へと登り詰められたのはなぜか?
幕府の祖でありながら、謎に包まれた初代将軍・足利尊氏の秘密を解き明かす歴史群像劇。

感想・レビュー・書評

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  • 正直あまりにも長編すぎて、幾度か離脱しそうになった。。
    しかし、後醍醐天皇、楠木正成、新田義貞、赤松円心など、魅力的な登場人物が次々と登場し、なんとか最後まで読み切ることができた。
    足利直義と、高師直の幕府を確かなものにするという思いは同じものの、朝廷・公家や武士との軋轢に惑わされて、その関係がいつしか歪む姿は室町時代にもしっかりあったわけで、江戸時代のように安定する世の中にするのは如何に難しいことかわかる。
    それにしても、尊氏のなんともいえないキャラクターは、本書で初めて知ったのだが、これほど人間味のあふれる将軍(しかも初代)がいたことに驚いた。
    好きなシーンは尊氏が弟の直義を助けに、ざんばら髪で向かうシーン。あまりに間抜けな姿に、それでは目立つと配下の将たちが皆で真似し、その奇騎兵集団を想像したら、なんとも微笑ましくなってしまった。

  • 2023年上期直木賞受賞作品

    室町幕府初代将軍である足利尊氏とその弟、直義と尊氏の秘書役だった高師直の数奇な半生を描く大作です。読み応えは半端なかったですよ。読んでみて作者が膨大な資料を読み込んで時間をかけて丁寧に取材をされたのだろうと想像できます。

    源頼朝もそうですが尊氏も日本人には人気ないんですよね。
    頼朝は冷酷、尊氏は裏切りのイメージがすり込まれています。反対に二人に滅ばされたライバル的存在の源義経や楠木正成は人気があるんですよね。日本人の判官贔屓ってやつですね。本作読むまでの私のイメージも同じようなもんでした。

    とこれがどっこい!読後の尊氏のイメージがガラッと変わりましたよ。
    尊氏は将の将としての器の人です。あくまで私個人の感覚ですが武士としての能力や性格を別にして、度量の大きさで言うと三国志の劉備玄徳とか維新の志士、西郷隆盛クラスです。

    さて本書の紹介を簡単にしておきましょう。

    鎌倉時代末期から南北朝時代まで大激動の時代、中の上クラスの御家人の側室の子(非嫡男)から武士のトップオブトップ に上り詰めた尊氏の激動の生涯が詳細にに描かれています!  
    というと実力と天性の才能で天下を取るっていうかっこいいのを思い浮かべそうですが、本書の帯に「やる気なし 使命感なし 執着なし なぜこんな人間が天下を獲れてしまったのか?」とあるんですよね〜。
    いわゆる庶子生まれの尊氏は、武芸鍛錬や学問習得に努力する訳でもなく、ぼーっと日々を過ごして育つんです。上昇志向も物欲もないお人よしで、大の面倒くさがり。嫡男の病死で突然家督を継ぐことになっても、面倒くさがり逃げ回る(笑)。やむなく家督を継いだ後も、流れに身を任せたままに、謀反や挙兵といった重要な判断を全て他人任せにするんです。自己主張が強い人を指して「我が強い」という表現がありますが尊氏は「我がない」んです。
    こんな尊氏を 辛辣に批評するのが実弟の直義と秘書役の 高師直 。全くやる気を出さない尊氏に面倒くさい仕事を押し付けられてうんざりする2人という構図が作中たくさん出てきて笑えました。
    いつ天下人らしくなるのかと、500ページ超の長編を読み進めるんですが尊氏がそれらしくなるのは最後の最後だけでした。
    こんなやる気ゼロな尊氏ですが直義と師直の予想とは裏腹に、なぜか武士たちから異常なほど人望を集めていくんですよ。危機に望んでも何もせずにぼんやりしている尊氏を、周囲が勝手に懐が深く表裏がない大人物だと信じ込んでいきます。まさにカリスマです。
    尊氏の取り柄といえば、戦の戦況や時代の波がどちらに向いているかを察知する天性の「勘」です。私個人の感想ですが戦にこれだけ強いというのは脳内の空間認識能力が他人より相当優れていたんでしょう。

    尊氏は、直義や師直と共に鎌倉幕府を倒してからも、後醍醐天皇との確執や直義と師直の争いに巻き込まれたり、最後には大好きだった弟の直義と争ったりとまさに波乱万丈の人生を生ききります。

    その過程が直義や師直などの当事者目線で描かれており読み応えは文句なし。読んで良かったと言える一冊でした。

    • 本ぶらさん
      こんにちは。はじめまして。
      というか、フォローしていただきありがとうございました。
      といっても、5月頃のことなので、TAKAHIROさん...
      こんにちは。はじめまして。
      というか、フォローしていただきありがとうございました。
      といっても、5月頃のことなので、TAKAHIROさんは憶えていないかもしれませんけど(^^ゞ

      この本知ってはいたんですけど、足利兄弟と高師直の話だったんですね。
      うわー、それは読みたい(^^)/
      「太平記」関連の話、とくに足利尊氏と直義兄弟、師直をめぐる話は好きなんですよ。
      特に、南北朝に分かれてからの、一言では言い表せない3人をめぐる状況がすごく面白いんですよね。
      今はその状況を歴史的に説明している『観応の擾乱』という本も出てますけど、個人的には大河ドラマの「太平記」が、足利尊氏ってきっとこういう人だったんだろうなって気がして、すごく好きです。

      この本は、ページ数もしっかりあるから、すごく楽しみです。
      ちなみに、余計なお世話を言わせてもらえば、杉浦苑子が足利尊氏を書いた『風の群像』も面白いですよ。
      2023/12/05
  • 面白かった〜
    けど長かった〜

    長いということをはっきりと感じさせる長さ
    よく言う「長さを感じさせない面白さ」じゃなくてね

    ちゃんと史実を押えとくよパートがたくさんあって、合間合間でしっかりだるい
    しっかりだるいんだけど、まぁこのくらいなら我慢できるかってところで一旦矛を収めてくれるのでなんとか読み続けられました
    その塩梅がいいんだろうね

    そして足利尊氏の「極楽将軍」っぷりのキャラだちが凄いのと、周りの振り回されっぷりが面白おかしい
    高氏の内面をしっかり把握している弟高国を筆頭とした家臣団と知らずに傾倒していく外様たちのギャップがねニヤリーポイントです

    • ひまわりめろんさん
      ( ̄ー ̄)ニヤリ
      ( ̄ー ̄)ニヤリ
      2023/07/02
    • ひまわりめろんさん
      あ、でも機会があれば是非手に取ってほしいです
      マジで紙質が抜群に良かったw
      あ、でも機会があれば是非手に取ってほしいです
      マジで紙質が抜群に良かったw
      2023/07/02
    • 1Q84O1さん
      へぇ〜
      紙質が抜群!?
      ちょっと興味をそそりますw
      へぇ〜
      紙質が抜群!?
      ちょっと興味をそそりますw
      2023/07/03
  • 質、量共、読み応え充分。
    率直に足利尊氏ってこんな人なの!

    室町幕府に馴染みのない私には
    とても興味深く、そして、面白おかしく。
    これは尊氏の極楽ぶりのおかげ?

    反面、最後の弟、直義との対立からは
    読んでいて、とてもつらかった。

    垣根さんの作品は時代小説でありながら
    ビジネス書に通じると思う。

  • 足利高氏(尊氏)、足利高国(直義)、高師直の3人を中心に鎌倉幕府滅亡から室町幕府成立初期までを描いた歴史長篇。垣根版「太平記」。

    物語は直義、師直2人の視点で進む。そして本書前半では、直義と師直の目を通して尊氏という難解な人物が丹念に描き出されていく。正義感が強く融通の利かない堅物の直義と、機転の利く現実主義の実務家の師直。このタイプの違う能吏2人の目線で描く "極楽殿" 、"天然系の人たらし" 尊氏の人物像、がなかなか面白い。

    「普段は極楽蜻蛉のようにふわふわしているくせに、いざこういう土壇場になると、急に性根が据わる。不思議と図太くなる。いい加減さと無責任さが交じり合ったその豪胆さ」、「無欲と言えば言葉はいいが、そのあまりの自負心のなさ、己の生に対する欲求の希薄さには、愕然とする」、「二十七になった今でも素のままの天然児」、「高氏など泥人形そのものだ。…人としての精神的実体はまるでない。中身が空っぽだからこそ、見たまま感じたままを子供のように素直に口にする」、「人柄だけは底抜けに良いが、世に対する定見も信条も皆無の、優柔不断極まりない男」、「相模湾のような茫洋たる大らかさしか能がない」、「一私人としてはどうしようもない泥人形だが、人を惹きつけ、その声望を意図せずして勝ち得るという部分では、まぎれもなく異常人だ。人誑しの天才だ」…。そして「尊氏を、一個の人間として捉えてはならない。この男は、世間である。人々の喜怒哀楽が無数に入り交じった煩悩そのものである」とまで抽象化している。

    物語は、煮え切らないぐずぐずの尊氏に振り回され、すったもんだした揚げ句、尊氏一派が何とか後醍醐天皇一派を駆逐して征夷大将軍に就任し、これで一件落着と思いきや、考え方・立場の違うの違う直義と師直の対立から今度はグダグダ・ドロドロの内紛劇に突入。最後は、師直と直義2人を失った尊氏が「邪気無き鵺」の殻を破り見事 "脱皮" してフィニッシュ。結局、尊氏の成長物語だったのか(笑)。

    いや~長かったな。何てったって余白なしの上下線2段組みで550頁でっせ。読んでも読んでもページが進まない進まない。しかも後半1/3くらいはグダグダ、ドロドロの内紛劇の連続で展開が大幅スローダウン。ちょっと辟易した(まあ、そういう歴史なんだが…)。

    疲れた!

  • 足利尊氏を中心に、室町幕府誕生から、その後の紆余曲折を描く、歴史小説。

    とても面白かった!

    人物がどれも魅力的。

    薄ぼんやりしていて周りに流される〈極楽殿〉こと足利尊氏。
    彼を支える有能な両輪、実弟・足利直義と、執事・高師直。

    振り回したり、振り回されたりする、彼らの関係が滑稽でコミカル。
    ただ馬鹿にしているのではなく、心の奥底ではどこか認めている、絶妙な関係性がよかった。

    何も考えていない尊氏の真意を、外部の人間が勝手に深読みして、祭り上げていくあたりも、楽しかった。

    歴史という大きな流れの中にいるのも感じられ、最後まで引き込まれる物語。

    3人の関係が魅力的だったからこそ、後半の展開は切なかった。

  • めちゃ笑ろた。面白かった。
    申し訳ないが、歴史上人物、足利尊氏はものすごく嫌いである、という立場から読み始めた。まあ、色々コミコミで、さらに一休さんリアタイ世代なので、足利一族への嫌悪感がすごいのか?とも考えてるんだが、客観的に史実だけよんでも、尊氏、直義、高師直、この三人が筆頭で好きになれない、そして、読み終わった今でも、やっぱり好きではないが、それをさっぴいてもとても面白い小説であった。
    鎌倉末期から室町時代の話はまあ、誰でも知っているので、本書のあらすじはそのまま歴史の教科書でも読めば良いことである。どうしようもない足利室町幕府の始まる前段階から、直義が死ぬまで、そう、基本的に弟である直義が主人公的な立ち位置にある。そして、ノリがハリウッドの軍記アクション映画というか、マーベルっぽいというか。ものすごく緊迫した戦争中のシーンに醸し出す、尊氏(高氏)のヌケ感がたまらない。萌え画がつけば、ラノベと言えるかもしれない、そんな、無双もの、、主人公が天然で無自覚なんだが、周りが言い方に勝手に誤解していく系(私の好物系ラノベ)のような感じになっている。
    ”極楽殿”、”頭陀袋の神”、などと言われながらも愛される人誑し尊氏
    ”神はその中身がないからこそ広く人に愛され、様々な便利使いの願掛けに使われる”、東国らしい言いようで、たしかにかの地ではそうなんだろうと思わせられる。
    ”万民が担ぐに足る神輿というものは、その中身が軽ければ軽いほど、薄ければ薄いほどいいのだ」
    死ぬか生きるかのるかそるかの切羽詰まった時に、何事にも執着なく、考えもなく、どうでもいい、そんな尊氏と、クッソ真面目な直義、そして、”家宰”なのに、政治をはじめる師直、三つ巴のお笑い劇、お笑いは哀しさがいるもんやねぇ、、と
    史実すっかり横に置いて、楽しんだのだった。
    つい声だして笑ったのが、
    おせちの品目p298
    師直を、笑い事ではない p315
    はい、はい、左様でござりまするな p287
    世にも妙ちきりんな髪型の兵団 p288

    この世の上澄のような、
    世の欲望の上にぽっかりと浮かび上がる化身のようなもの
    尊氏とは世間そのもののようなもの

    後半になって、尊氏の出番が少なくなると
    やはり面白さ半減で、ちょっとめんどくささがうざくなってきたが、
    うまく最後まで引っ張られて爆読させられた。
    後に孫が昭和の漫画で一休さんに
    こてんぱんになるのだった、、

  • こりゃ直木賞取るよな。この時代のことは教科書に記載されている程度の薄っぺらな知識しかなかったし、それほど興味のある時代でもなかったけど一気に引き込まれた!(もちろん作者のおかげです!!)
    基本的には究極の天然である尊氏を直義・師直が支えて行くと言う構図で進んでいくのだけど、配下の2人がここまではっきり見下すというか、悪し様に評価したりするとこを、子供に呆れるような感じで描写されていて、とても憎めなく面白かった!
    直義と師直の関係性がちょっとしたボタンのかけ違いで修復不能になってしまったのはそれぞれの立場からすればやむを得ないのかもしれないけど直義がもう少し良い意味で良い加減だったならまた違う結果になったんだろうなと思ってしまった。
    尊氏を世間そのものと表現する発想がとてつもなく深いな〜と思った。
    ボリュームがすごいので感想はちょっと書ききれない(⌒-⌒; )
    他の人と感想を話し合いたいなと思わせてくれる作品でした。

  •  鎌倉幕府倒幕と室町幕府創設の立役者となった足利尊氏の生き様を描く歴史大作。

     物語は尊氏の少年時代から病死までの一代記で、弟の直義と執事の高師直の視点で交互に描かれる。
     第169回直木賞受賞作品。
            ◇
     北条宗家の有力御家人である足利家。だがその庶子に過ぎない又太郎と次三郎は、家中で誰にも期待されないし、自らも多くを望まないという日々を送っていた。足利家の執事を務める高家の次期当主である師直も、又太郎たち兄弟が日の目を見ることはないように思っていた。
     実際、次三郎から見ても兄の又太郎は学問や武芸に励むでもなく日がな波打ち際で遊ぶことを好み、野心どころか前途を悲観する素振りさえ見せない極楽蜻蛉だった。

     だが又太郎が元服し高氏と名乗るようになった頃、北条家の屋台骨が揺らぎだし、足利家当主の高齢と嫡男の若年が誰の目にも明らかになってきた。ここにおいて、一族および執事家の目は高氏に向き始めたのである。
     望洋としていながら不思議に人徳のある高氏と、目鼻に抜ける頭脳のキレを見せる弟・高国のコンビはこうして足利家の希望となった。

     そんなとき後醍醐天皇が京で倒幕の兵を挙げたと鎌倉に知らせが届く。
          (第1章「庶子」) 全4章。

          * * * * *

     これまでの 尊氏 − 直義 を始めとする太平記時代のレギュラー陣の印象がガラリと変わりました。

     足利尊氏といえば、政治は苦手である代わりに戦の天才。直義は緻密さと篤実さを合わせ持つ内政向きの落ち着いた家老タイプ。高師直は足利という武家の存続を何より優先する合理性重視で冷徹無比な家宰。そんなイメージを持っていました。

     でも本作での尊氏は、武将としては晩年まで凡庸でした。直義と袂を分かってから『孫子』を読んでいたようですが、もともと座学が苦手のため軍学を深く学んだわけではないし、武芸に打ち込みもしてきませんでした。
     ただ将を束ねるのがうまいのと戦局を判断する勘が冴えているという漢の劉邦を、さらにお人好しにしたタイプとして描かれています。そこがとてもおもしろかった。

     そんな尊氏を輔ける直義と師直。このコンビも魅力的に描かれていました。
     直義は実直だけれど、融通が利かないところがあり、毛針を広げたヤマアラシのように、自身で動きを取れなくしてしまう硬直タイプ。
     師直は計算ずくで賢く立ち回るようでいて、判断に困ると直義に下駄を預けようとするような優柔不断な一面もあります。

     この主要人物3人の、なんと人間味溢れることか。それぞれ凡人のとても及ばぬ秀でたところがあるものの、凡人と変わらぬ愚かさもあって、つい共感してしまったりします。
     まさに垣根涼介さんの人物設定の巧みさで、本作がただの英雄物語にならず、優れたヒューマンドラマにもなっています。

     さらに赤松円心・楠木正成・新田義貞・足利直冬と、軍事に優れた武将たちにもひとりの人間としての息吹を与え、その活躍に胸踊り、その死を悼んでしまうほどの親しみを持たせてくれていました。かの強者たちに対する垣根さんの思い入れをひしひしと感じずにはいられませんでした。

     どちらかと言えば理屈先行のように思えた『光秀の定理』や『信長の原理』と違って、新たな世を作った英雄たちが1人の人間として活き活きと描かれていたのは明らかです。

     まったく直木賞に相応しい、優れた歴史ロマン大作だったと思いました。

         * * * * *

     個人的には、北畠顕家推しの自分にとっては、顕家のためにもう少し紙面を割いていただけたなら言うことないのになあと贅沢なことを思ったりしています。

  • これまでも小説や映像作品等で歴史モノはいろいろと見てきたが、このあたりの時代に触れる機会はなかった。「太平記」がベースになっており、そこに作者なりの解釈やオリジナリティを加えている作品となっている。
    かなり長い(550ページ、かつ2段組構成)ので中だるみは多少あるものの、一言で言えばめちゃくちゃ面白い。主役は足利高氏、そしてその弟である直義であるわけだが、その周りを固める高師直、赤松円心、そして敵対する新田義貞、楠木正成あたりのキャラクターも丁寧に描かれていて引き込まれる内容となっている。そして何より強烈なのは後醍醐天皇。強烈な歴史上の人物といえば、織田信長をはじめとして戦国時代に多いイメージがあるが、後醍醐天皇も相当に強烈。
    正直歴史上はあまりパッとしな時代かと思っていたが、ここまでいろんなことがあった時代だとは驚き。しかし本当にこの時代の人たちはこれだけの知略を巡らせ、日々裏切り裏切られの中で、自分たちの家を守るために奔走していたのかと思うと頭が下がる思いだ。
    さすが直木賞作品、良い作品を見させてもらいました。

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著者プロフィール

1966年長崎県生まれ。筑波大学卒業。2000年『午前三時のルースター』でサントリーミステリー大賞と読者賞をダブル受賞。04年『ワイルド・ソウル』で、大藪春彦賞、吉川英治文学新人賞、日本推理作家協会賞の史上初となる3冠受賞。その後も05年『君たちに明日はない』で山本周五郎賞、16年『室町無頼』で「本屋が選ぶ時代小説大賞」を受賞。その他の著書に『ヒート アイランド』『ギャングスター・レッスン』『サウダージ』『クレイジーヘヴン』『ゆりかごで眠れ』『真夏の島に咲く花は』『光秀の定理』などがある。

「2020年 『信長の原理 下』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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