イーロン・マスク 下

  • 文藝春秋
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  • Amazon.co.jp ・本 (464ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784163917313

作品紹介・あらすじ

世界的ベストセラー『スティーブ・ジョブズ』評伝作家だからこそ描けた。
  いま、世界で最も魅力的で、かつ、世界で最も論議の的となるイノベーターの赤裸々な等身大ストーリー­。彼はルールにとらわれないビジョナリーで、電気自動車、民間宇宙開発、人工知能の時代へと世界を導いた。そして、つい先日ツイッターを買収したばかりだ。

  イーロン・マスクは、南アフリカにいた子ども時代、よくいじめられていた。よってたかってコンクリートの階段に押さえつけられ頭を蹴られ、顔が腫れ上がってしまったこともある。このときは1週間も入院した。
だがそれほどの傷も、父エロール・マスクから受けた心の傷に比べればたいしたことはない。エンジニアの父親は身勝手な空想に溺れる性悪で、まっとうとは言いがたい。いまなおイーロンにとって頭痛の種だ。このときも、病院から戻ったイーロンを1時間も立たせ、大ばかだ、ろくでなしだとさんざどやしつけたという。
 この父親の影響から、マスクは逃れられずにいる。そして、たくましいのに傷つきやすく、子どものような言動をくり返す男に成長し、ふつうでは考えられないほどのリスクを平気で取ったり、波乱を求めてしまったりするようになった。さらには、地球を救い、宇宙を旅する種に我々人類を進化させようと壮大なミッションまでをも抱き、冷淡だと言われたり、ときには破滅的であったりする常軌を逸した集中力でそのミッションに邁進するようになった。
 スペースXが31回もロケットを軌道まで打ち上げ、テスラが100万台も売れ、自身も世界一の金持ちになった年が終わり2022年が始まったとき、マスクは、騒動をつい引き起こしてしまう自身の性格をなんとかしたいと語った。「危機対応モードをなんとかしないといけません。14年もずっと危機対応モードですからね。いや、生まれてこのかたほぼずっとと言ってもいいかもしれません」
 これは悩みの吐露であって、新年の誓いではない。こう言うはしから、世界一の遊び場、ツイッターの株をひそかに買い集めていたのだから。暗いところに入ると、昔、遊び場でいじめられたことを思いだす——そんなマスクに、遊び場を我が物とするチャンスが巡ってきたわけだ。 
 2年の長きにわたり、アイザックソンは影のようにマスクと行動を共にした。打ち合わせに同席し、工場を一緒に歩き回った。また、彼自身から何時間も話を聞いたし、その家族、友だち、仕事仲間、さらには敵対する人々からもずいぶんと話を聞いた。そして、驚くような勝利と混乱に満ちた、いままで語られたことのないストーリーを描き出すことに成功した。本書は、深遠なる疑問に正面から取り組むものだとも言える。すなわち、マスクと同じように悪魔に突き動かされなければ、イノベーションや進歩を実現することはできないのか、という問いである。

感想・レビュー・書評

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  • 【感想】
    イーロン・マスク公式伝記の下巻。
    下巻の読みどころは何と言ってもTwitter買収に関するエピソードである。マスクがトップに就任して以来、Twitterはポリシーや仕様の変更をめぐってたびたび機能不全を起こしており、マスクの意向に振り回されている感が否めない。
    何故混乱が起こっているかというと、一つにはマスクの仕事のやり方とTwitter社の文化が根本的に相いれなかったことに原因がある。マスクはテスラでもスペースXでも「シュラバ」をよく発動させてきた。これはマスク流のデスマーチであり、無茶な工期と改善を命令することで、社員全員に発破をかけて生産性を極限まで高める方法である。しかし、Twitter社はそのような企業文化には無い。リモートワーク中心で、ワークライフバランスに優れ、多様性を尊重する(左に寄りすぎてはいるが)、家族のような職場だ。そのような「ウォークマインド」文化はマスクが大嫌いな概念であり、彼はそんな社風を変えようと大量解雇を行うのだが、それがTwitterを混乱させるもとになったのだ。

    混乱が起こっているもう一つの理由は、マスク自身の理念がブレているからだ。
    そもそも、テスラやスペースXでてんてこ舞いのイーロンが、どうしてわざわざ「Twitter買収」といういざこざを呼び込むような真似をしたのか?スペースXを立ち上げたのは、複数惑星にまたがる種とすることで人類の意識が生き続けられる可能性を高めたいからだ。テスラは、持続可能エネルギーという未来への道を拓くことが大目標だ。
    ではツイッターは?というと、そのような「人類の可能性への投資」にそぐわない買い物である。マスクは、言論の自由に言及して、「文明を維持するというミッションに資するものだと思うようになったのです」「最近はメディアがどんどん集団的浅慮に走って同調圧力が高まっており、みんなと足並みをそろえなければ排斥されたり黙らされたりすることになります」と語っている。民主主義が死なないためには、ツイッターからウォーク文化を排除し、偏見や偏向を根絶して、どのような意見でも表明できるオープンな場に変える必要がある=人類の可能性のためには言論の自由を保証しなければならない、という理屈らしい。だが、どう考えても理由として弱い。
    対して、筆者が考えた別の理由は、「いじめられっ子だったマスクにとって、Twitterとは昔は決して入れて貰えなかった究極の『遊び場』だからである」というものだ。オンラインでもリアルでも、へこまされた、追いつめられた、いじめられたと感じると、父親にディスられ、クラスメートにいじめられた、あの痛い場所に心が立ち返ってしまう。その遊び場を自分の手中に収められる……。それがマスクの目論みであり、そうした理念なき欲望がTwitterをめぐる「言論の自由」にいざこざをもたらしているのだ。
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    本書はこのほか、マスクのビジネスについてだけでなく、マスクの家族関係(特に夫婦生活、子どもとの関係、実父とのもめごと)についても語られ、これが抜群に面白い。流石はお騒がせ男と言うべきか、私生活のほうもとにかく波乱含みの展開が綴られている。特に実父エロールは、イーロンの義理の娘のジャナを妊娠させているヤバイ奴で、イーロンの成功を自分のおかげだとメディアに吹聴したり、イーロンに金銭を要求して、「もし拒否すればお前の秘密を暴露して社会的に終わらせてやる」と脅しをかけたりしている。父親は陰謀論に染まりきっているのだが、後にマスクも同じ陰謀論にはまり、自分への批判を「仇成す組織の仕業」と罵っていくことになる。

    その仕事ぶりや私生活を通して「イーロン・マスク」という男の素性を深く知れる一冊。読んで損無し、ぜひオススメだ。

    「なにがなんでも高く狙い、思いのままに進み、大きなリスクを取って、目の覚めるような成果を挙げる――同時に、危ない感じの甲高い笑いをまき散らしながらあれこれ爆発させ、ぶすぶすとくすぶる残骸を残す。歴史を変えるほどの成果とド派手なしくじり、空約束、傲岸不遜な衝動に彩られているのがマスクの人生なのだ。」
    「衝動を抑える遅延ボタン――それひとつで、マスクのツイートはもちろん、闇の衝動にかられた言動や悪魔モードの噴火など、通ったあとをがれきだらけにするあれこれが浄化できるなら、すばらしいことだろう。だが、そうやって抑えたマスクは、自由なマスクと同じことができるのか。口にフィルターをかけ、首に縄をかけても、マスクはマスクでいられるのか。まっとうなところもおかしなところもひっくるめ、マスクという人間を丸ごと受け入れることなく、我々は、ロケットを軌道まで打ち上げたり、電気自動車の世界に足を踏み入れたりできるのだろうか。偉大なイノベーターは、つまらない教育に反発し、リスクを求める「男の子」だったりする。むちゃだったり、周りが眉をひそめるような人間だったり、それこそ、毒をまき散らす人間だったりする。クレイジーなこともある。そう、自分が世界を変えられると本気で信じるほどに。」

    上巻の感想
    https://booklog.jp/users/suibyoalche/archives/1/4163917306
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    【まとめ】
    ●スターリンクとスターシップ
    2018年6月、マスクはスターリンクに不満を覚えていた。10分の1のコストで10倍速く作れなければ商売にならない。危機感のないスターリンク上層部の8人を首にして、スペースXのロケット技術者8人を後任に据えた。
    2019年にはファルコン5による打ち上げが始まり、5か月後に衛星が稼働し始めた。

    マスクは2017年9月、ファルコン5の改良版である「スターシップ」の開発に着手すると発表し、人類を火星に送る計画を進め始める。
    スペースXは、国際宇宙ステーションに向けて宇宙飛行士を送り出した2020年5月から5カ月間で、衛星を打ち上げる無人飛行に11回成功するという偉業を達成した。だがマスクはいつどおりのマスクだった。気が狂いそうな切迫感を保てなければ、ボーイングのようにたるんで動きが鈍くなってしまう。打ち上げが成功したにもかかわらずいつものようにブチギレ、組織の大改造に着手する。

    スターシップの着陸について、マスクはある信念を抱いていた。すぐに再利用できること――マスクはこれを強く求め、「再利用性こそ、人類が宇宙を旅する文明になるための聖杯だ」と口癖のようによく言う。言い換えれば、飛行機のようにならなければならない、離陸し、着陸し、またなるべく早い時期に離陸する、そうできるべきということだ。

    スターシップの着陸について、マスクはある信念を抱いていた。すぐに再利用できること――マスクはこれを強く求め、「再利用性こそ、人類が宇宙を旅する文明になるための聖杯だ」と口癖のようによく言う。言い換えれば、飛行機のようにならなければならない、離陸し、着陸し、またなるべく早い時期に離陸する、そうできるべきということだ。

    「宇宙船をブースターの上に載せる」という目標に対して、マスクお得意の「シュラバ」が発動した。シュラバとは「とにかく死ぬ気でやれ」という命令で、マスクが無茶な工期を設定し、関係者全員をデスマーチに追い込む手法のことだ。金曜の夜遅く、発射台に作業員がいないのを見て、マスクは烈火の如く怒った。
    「いったいぜんたいなにがどうなってるんだ?仕事しろよ」
    ――スターシップのブースターと2段目は、あと10日で製作を完了し、発射台に積み上げる。ケープカナベラル、ロサンゼルス、シアトルのスペースX従業員500人もすぐにボカチカへ呼んで手伝わせろ。
    「ウチはボランティア組織じゃないんだ。ガールスカウトのクッキー売ってるんじゃないんだぞ。すぐに全員集めろ」
    シュラバ発動は効いた。わずか10日でスターシップのブースターと宇宙船を発射台に積み上げることに成功したのだ。
    2021年9月に、スペースX社は軌道を目指す民間人を載せたロケット、「インスピレーション4」の打ち上げに成功する。このミッションは、さまざまな事業や商用衛星、大いなる冒険に彩られた軌道経済の誕生を象徴する出来事だ。
    「スペースXとイーロンの成功は本当に驚きですよ」
    NASAのビル・ネルソン長官は、インスピレーション4の翌朝にそう語った。「産官の相乗効果がうまく出ています。人類にとってすばらしい話ですよ」

    2022年第1四半期には、ほかの会社と国、全部の合計に倍する質量を軌道に打ち上げている。4月には、NASA(いまだ自前の打ち上げ能力を持たない)の宇宙飛行士3人と欧州宇宙機関の宇宙飛行士ひとりを乗せ、4回目となる国際宇宙ステーションへの有人ミッションも成功させた。また同月、通信衛星の打ち上げもおこない、スターリンクの衛星数を2100基とした。ネット接続の提供も、ウクライナを含む世界40カ国に広がり、契約数は50万件を数える。軌道ロケットを安全に着陸させ、再利用するというのは、スペースX以外、どこの会社も国も成功していない。


    ●Twitter
    大勝ちしたのにチップを持ってテーブルに戻りたい。マスクの「波乱を求める病気」は、テスラやスペースXの株価が絶好調で、山ほどのキャッシュが手に入った時に爆発した。Twitterを買うことにしたのだ。
    マスクはこの数年で彼が呼ぶところの「ウォークマインド・ウイルス」が大嫌いになり、革新から保守に鞍替えしていた。そして自身はお祭り好きで、Twitterではしょっちゅう物議をかもす発言をして炎上していた。Twitter中毒者として、そういう遊び場の主になれるのはこの上なく魅力的だった。

    マスクが最初にTwitterの取締役に就任した時は、自身がTwitterを経営しようとは思ってなかった。代わりにマスクは色々とアイデアを出した。
    「月2ドルなど若干の支払いで認証が受けられるとかどうだろうね」
    クレジットカードと携帯電話番号にひも付けするサブスクなら、投稿者の身元を確認し、本人であると認証することができる。認証ユーザーは詐欺的なことや誹謗中傷、ウソとわかっている投稿の拡散などをするおそれが少ないはずで、そういうユーザーを優遇するアルゴリズムにすればいい。なにかというとすぐ、ナチだなんだと非難の応酬になるのも、多少は防げるかもしれない。
    ユーザーのクレジットカードを把握することには、ほかにも利点があるとマスクは言う。ツイッターを決済プラットフォームにして、物語や音楽、動画などに料金を支払う、チップをあげる、投げ銭をするなどにも使ってもらえるようにできる。
    「昔、Xドットコムとペイパルで夢見たビジョンが実現するかもしれない」と、マスクはご機嫌だった。

    しかし、たんなる取締役の地位では傾きつつあるTwitterを立て直せないと考えた。ブロックチェーンベースのソーシャルネットワークを自身で立ち上げる構想もあったが、最終的にはTwitterの買収を行った。
    (ちなみにこのとき、Twitterに対する最初の熱はだいぶ冷めており、マスク自身自分がどうしたいのかよくわからなくなっていた。結局買収に合意した際には、「アホが操る船でも去年は株価が70ドルまで行ってるんだ。ポテンシャルはすさまじいものがある。あちこち直せばいいんだ」と述べている)
    しかし、マスクは経営を誰かに任せるつもりはなかった。自分の遊び場にしたいのだ。

    買収後、さっそくTwitter文化とマスクの仕事のやり方が衝突する。Twitterは人に優しく、多様性を尊重し、心の安全を得られる優しい職場であった。マスクが大嫌いな社風だ。
    マスクはテスラやスペースXから集めた技術者を会議室に集め、クビに値する社員を洗い出そうとしていた。世界全体で社員の半分をレイオフする。インフラストラクチャーチームの一部(約2500人)は90%をレイオフする。社有コンピューターへのアクセス権限や電子メールは、レイオフと同時に使用不能にする。大粛清の始まりだ。
    マスクの「粛清内容」は次のとおりだ。
    第1ラウンド:1ヶ月で100行未満しかコードを書いていない奴をクビにする(コーディングに真剣に向き合っていない者をクビにしていく)
    第2ラウンド:生き残ったやつのうち、信頼が置けない奴や、やる気がない奴をクビにする(スラックのメッセージやソーシャルメディアの投稿をチェックし、マスクに批判的な者をクビにしていく。また、本当に会社に残りたいかどうかを本人に選ばせる)
    第3ラウンド:生き残った奴の書いたコードをレビューし、能力のない奴をクビにする。
    これらによって、マスクが買収した10月27日に8000人弱だった社員数は、12月半ばには2000人強になった。

    この大ナタについて、「本当に優秀なゼネラリストタイプの技術者がごく少数、チームとして働いたほうが、並の技術者がその100倍いるよりいい仕事ができるとマスクは信じているのです」とロスは言う。

    マスクはTwitterを「言論の自由」の場にしたかったのだが、コンテンツモデレーションをめぐるトラブルはずっとつきまとった。マスクはTwitterの運営に関しては独裁者状態で、委員会の決定を通さずにアカウント凍結や解除を行える位置にいた。実際、革新系や陰謀論系のアカウントを独断で復活させたり、ツイッターの方針に批判的なジャーナリストのアカウントを恣意的に凍結するなど、本当の「言論の自由」にそぐわない措置をたびたび行っている。
    マスクが検閲には反対だと宣言すると、人種差別の投稿やユダヤ人を非難する投稿が爆発的に増えた。どこまで許されるのか試してみようとトロールや扇動家が山のように湧き、黒人差別のNワードは、マスクがオーナーとなって12時間で500%も増えた。足かせのない言論の自由にはマイナスの側面もあるわけだ。
    広告に適した場を作ろうとすると、言論の自由を実現したいという望みをかなえるのが難しくなる。多くのブランドや広告代理店がTwitter広告を取り下げることを発表し、一時期は月間売上は80%も急落した。
    マスクは悪魔モードに入った。広告引き上げの呼びかけを行うアカウントを見て、「ツイッターはいいものだ。存在そのものが倫理的に正しいんだ。彼らは倫理にもとる行為をしている。そんなアカウントは凍結しろ」と命じたのだ。
    「わかった。いまここで、ツイッターのポリシーを変える。今後、恐喝は禁ずる。やめさせる。全部だ」マスクがそう宣言したが、結果として凍結はしなかった。

    Twitterはサブスプリクション(=Twitterブルー)を導入するも、荒らしとなりすましによって(そして人間のモデレーターをごっそり首にしたために)うまく機能せず、財務状況も悪化しており、マスク自身の言葉を借りれば「お先真っ暗」な状態だった。ここでマスク流の「死ぬ気で仕事をしろ」が発動する。ソフトウェア技術者全員に最近書いたコードを提出させ、それを評価し、無能なやつをクビにした。第3ラウンドまで続いた人員整理によって、社員の75%がいなくなった。

    実際のところ、コンテンツモデレーションというのはとても難しい作業である。ツイッターファイルによって、マスク就任前のツイッターコンテンツモデレーターが、右寄りのツイートを可視性フィルタリングのブラックリストに加えていたことが明らかになった(ちなみに、ツイッター社員の政治献金の98%以上は民主党)。確かに、有害なデマをツイートしているアカウントの一部はロシア情報部のものだということが発覚しており、そうしたスパムへの対処は必要不可欠だ。しかし、どのアカウントに政治的な色がついているかを見極めるのは困難だし、そもそも「言論の自由」という観点から、そうしたアカウントを即凍結すべき、と言い切れないジレンマもあるのだ。

  • 『イーロン・マスク 上&下』 - ビジョナリーな起業家の波乱に満ちた人生

    『イーロン・マスク 上&下』は、ウォルター・アイザックソンによって書かれた、世界で最も影響力のある起業家の一人、イーロン・マスクの公式伝記です。この本は、ペイパル、テスラ、スペースX、そして最近ではXといった企業を通じてテクノロジーの極限に挑むマスクの姿を赤裸々に描いています。

    伝記はマスクの幼少期から始まり、南アフリカでの困難な子供時代、家族との複雑な関係、そして彼が科学と技術に情熱を注ぐようになった経緯を掘り下げています。特に彼の父親との関係は、彼の人格形成において重要な役割を果たしており、読者に深い印象を与える部分です。

    マスクのビジネスへの取り組み方は、非常にリスクを恐れず、時には破壊的でさえあります。彼の生き方は、革新的なアイデアと技術で世界を変えることに対する彼の強い決意を反映しています。この伝記は、そのような壮大な目標に向かって突き進む彼の精神的な闘いと、個人的な犠牲を浮かび上がらせます。

    アイザックソンの筆致は、マスクの複雑な性格とその生涯の波乱に満ちた道のりを詳細に、そして感情豊かに描き出しています。読者は、マスクが直面した無数の挑戦と彼がそれをどのように乗り越えてきたかを理解することができます。また、彼の成功がどれほどの努力と時には過酷な犠牲を伴うものだったかが、鮮明に語られています。

    『イーロン・マスク 上&下』は、起業家精神に興味がある人、イノベーションとリーダーシップについて学びたい人、または単に世界を変える野心を持つ人々にとって必読の書です。この本は、夢を追求する過程での困難と、それを克服した時の充実感について深く洞察を与えてくれるでしょう。

  • 同じ一生でもこの人は退屈しないだろうな、
    と同時に枕を高くして眠ることもできないだろうなあと感じる。
    振り幅が大きすぎて凡人にはわからないことばかり。
    取材、お疲れ様でしたと著者さんには言うしかない

  • 感情の起伏が二段階しかない。機嫌のいい時はアイネクライネナハトムジークのト長調を口笛で吹いたかと思ったら、悪魔モードに突入したら旧ツイッターの買収でとんでもない数の人員整理を容赦なくやってしまう。時に陰謀論に支配され、失敗しても次々と思いついたことを形にしていく。暇が嫌、一人が嫌。観客側としては宇宙事業の次は何に興味を示すのか楽しみではあるけど、、、あぁ本当に大変な人だなと思う。

  • イーロンは夢を実現できると本気で信じていて、不可能を可能にしている。思い込みの力の重要性を証明していると思いました。
    文中に知らない言葉が多々あり、その度にググりました。違う意味でも勉強になりました。訳者の博識にも驚かされました。

  • 本書を読みながら、今は亡きマイケル・ジャクソン氏を思い出した。彼の死後、世間は掌を返して彼の功績を称賛した。そしてキング・オブ・ポップとして人々の記憶に残り、良い面が誇張され語り継がれてゆく。イーロン・マスク氏も同じように、生きている間にどれだけの成功を収めても、死ぬまでバッシングは止まらないだろう。彼が作中で述べているように、普通の人ではないから偉業を成し遂げられるのである。すべての成功者が聖人君主ではないのだ。

    以下、本書より抜粋。
    「兄のキンバルが『ポリトピア』というゲームから学んだ処世術。
    ・共感は資源ではない。
    ・ゲームのように人生を送れ。
    ・敗北を恐れるな。先を見越して動け。
    ・ターンごとに最適な手を打て。
    ・倍賭けする。
    ・選んで戦え。
    ・休むのも大事。」

    「みずから戦略を組み立てなければ成功はおぼつかない。」

    「ビル・ゲイツはワシントンD.C.の晩餐会でマスクの批判が上がった際、『イーロンの言動についてあれこれ思うのは勝手ですが、科学とイノベーションの限界を彼ほど広げている人物は、この時代、他にいませんよ』と指摘している。」

  • Xの名前の由来は上巻で触れているが、Twitter買収に至るストーリーは下巻に収容されている。買収から買収後の統合作業、大リストラまで、その執念の凄さたるや。
    スペースX、テスラのストーリーは読みながら応援したい気持ちにもなる。ただ、公共空間になっているXをイーロン・マスクのような人物が自在に操れることの危うさ含めて理解した方がよいのだろう。進行中の話でもあり、読み応えはある。
    なお、彼のプライベートはさらに常軌を逸して、驚かなくなった。苦笑
    マスクの会社をブラック企業というのはたやすいが、結果を出しているのは事実。その会社に務める社員にとって、ウェルビーイングなどという言葉は空疎に映るのかもしれない。最後の描き方はよかった。さすがアイザックソンと感嘆して終わり。

  • 最近のTwitter買収もそうだが、常に修羅場を欲して突き進んでいる
    仕事人間ではあるが家族も大切にしており、子供好き。

    イーロンマスクの下で働くということは、やり甲斐最大になるなのだろうが、ワークライフバランスは保てないのだろう。

  • 上巻より下巻のほうが面白かった。
    ウクライナへのスターリンク提供とか、ツイッター乗っ取りとか、旬な話題の舞台裏が描かれているからだ。

    ただ、上下巻を通読して思うのは、「こんな人、身近にいたらたまらんなァ」ってことだけど。

    軽すぎる訳文への違和感は最後まで拭えなかった。とくに会話の部分。「マジで」「プッツンした」とか、言葉の選択が過度に通俗的だ。
    「みんな、マスクにビビりまくっていました」とか、「あれはアスペ全開の事件でした」とか。高校生のLINEのやりとりじゃないんだから。

  • 上下巻通読。歴史を見渡しても創業の英雄はすべからく並外れた働き者。マスクが手掛ける数々の事業と働きぶりを見ると、身体が複数あるようで、また自身の内部に複数の顔を持ち、良くも悪くもキャラが傑出している。抜群の頭の良さと、ワーカーホリックの資質、そして特殊な家庭・生活環境が融合すると、時にこんな非常の人が現れるのだろう。ビジョンに向けリスク厭わず突進する精神や、人を成果へと追い立て首切りも一切躊躇わない暴君ぶりは、結果さえ出せば何でもまかり通るお国柄だからこそでもあり、いまだ健在するアメリカの強みも感じた。全体に章分けが細かく、話題がどんどん転換していくが、それだけ関わる仕事と人物が多岐で、それぞれ(私生活含め)有機的に絡んではいるから、一向読み飽きない。これは著者の高い力量で、マスクへの関心がなく、世界のトレンドを知りたいだけの人にも、お薦めできる一冊。

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著者プロフィール

ウォルター・アイザックソン【著者】Walter Isaacson
1952年生まれ。ハーバード大学で歴史と文学の学位を取得後、オックスフォード大学に進んで哲学、政治学、経済学の修士号を取得。英国『サンデー・タイムズ』紙、米国『TIME』誌編集長を経て、2001年にCNNのCEOに就任。ジャーナリストであるとともに伝記作家でもある。2003年よりアスペン研究所特別研究員。著書に世界的ベストセラー『スティーブ・ジョブズ』1・2、『レオナルド・ダ・ヴィンチ』上下、『ベンジャミン・フランクリン伝』『アインシュタイン伝』『キッシンジャー伝』などがある。テュレーン大学歴史学教授。


「2019年 『イノベーターズ2 天才、ハッカー、ギークがおりなすデジタル革命史』 で使われていた紹介文から引用しています。」

ウォルター・アイザックソンの作品

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