播磨国妖綺譚 伊佐々王の記

著者 :
  • 文藝春秋
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感想 : 16
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  • Amazon.co.jp ・本 (240ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784163917863

感想・レビュー・書評

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  • 播磨国の法師陰陽師兄弟(薬師の律秀、僧の呂秀)の下に強敵現る。その名も蒲生醍醐。かつて京の陰陽寮に属し、謀反の疑いをかけられ、強い恨みを残しながら処刑された陰陽師だという。この世に復活し、強力な妖術で人々に禍をもたらそうと画策する蒲生醍醐。山女魚に妖しい力を与えて人を襲わせ、荒くれの巨鹿・伊佐々王を甦らせてその力を利用し、赤松教康が将軍足利義教を誅殺する "嘉吉の乱" を影で操り…。式神・あきつ鬼や猫の姿をした神の化身・瑞雲にも助けられ、蒲生醍醐の攻撃を三度退け、破邪の刀をも得た呂秀らだったが…。

    風運急を告げる播磨国で、呂秀らは果たして蒲生醍醐や伊佐々王の力を鎮めることができるのか、ってところで物語終了。な、なんて尻切れトンボな終わり方なんだ! これじゃあまるで、いいところで話を次週に持ち越す安っぽいテレビドラマじゃないか!

  • 不安いっぱいの一冊。

    今作は6話の播磨国の綺譚。

    漢薬と祈祷で救う、律秀、呂秀兄弟とあきつ鬼との再会に心和むスタート。
    と思いきや、何やらきな臭い雰囲気が。

    物憂うあきつ鬼の姿にざわざわ、不安いっぱい。だけれどその分、呂秀とあきつ鬼の関係がさらに深まっていくようでうれしさもいっぱい。

    人とそうでないものとのひと時の交わりはもちろん、喪われゆく自然界の悲しさ、自然と人間との共存という深いテーマを妖しに仕立てあげるのが巧いな。

    今後どんな展開が待ち受けているのか、続編が約束されているうれしさと待ちきれないジレンマ、困る。

  • 【収録作品】突き飛ばし法師/縁/遣いの猫/伊佐々王/鵜飼と童子/浄衣姿の男

    室町時代、蘆屋道満の子孫として民と暮らす薬師の律秀と僧の呂秀。二人は陰陽師でもあり、術者として優秀なのは律秀だが、異形の者が見えて会話できるのは呂秀。呂秀は式神・あきつ鬼を使役している。舞台となるのは、「嘉吉の乱」前夜の播磨国。

    敵方登場。

  • 播磨国妖綺譚の第二弾。読切かと思って手に取ったら思いっきり続きものだった。先が気になります。あまり室町時代にフォーカスを当てた話を読んだことがあまりなかったので新鮮でした。まだ応仁の乱も始まってない頃の話ですが、かなり血腥い感じです。イメージ通りというか。
    この話がどういう顛末になるのか、次が出たら必ず読みます。
    他の方も書かれてますがネコの神様がかわいい。

  • あきつ鬼の秘密と蒲生醍醐の怨霊が
    伊佐々王を蘇らせ何を企むのか
    これから大事が起きそうな予感
    猫の姿を借りた神さまがかわいい

  • 室町時代、播磨の国で、薬師と僧として日々を過ごす法師陰陽師の兄弟とその式神のあきつ鬼を描いた怪異譚だ。

    自分たちの力を民衆のために使いたいと生きているふたりの前に、強力な妖力を持つ男・蒲生醍醐が現れる。蒲生はあきつ鬼に執着し、さまざまな呪を繰り出してくる。
    彼の手にあきつ鬼が渡れば、大きな禍となることは間違いなく、自身とあきつ鬼を守るためにふたりは守り刀を手に入れる・・・という物語で、野や山と共存しながら徐々に技術や力を得始めている人間たちと、古くからある神霊との関りが魅力的に描かれている。

    野や山や花はいずれすべて人間のためのものになってしまって、野生動物のためのものではなくなるのではないか、という危惧のくだりはまさにその通りで、現在自分が暮らす、むき出しの土がほとんど見えない街も室町時代の頃は野原や湿地だったんだろうなあ、としみじみ思った。

    本作では蒲生醍醐との戦いは完結せず、次作へ持ち越し。都でも血腥い事件が起き、それらと相まって続編がどのように展開するのか、楽しみだ。

  • このシリーズの前作で、登場する個性豊かな面々を大好きになって、続編出るよね…?続きが読みたい!と待ちわびてました。
    シリーズ化嬉しい!
    この1冊が起承転結の、「承」かな。この1冊だけではまだ物語の結末まで遠い。

    あきつ鬼との関係が良い。
    十分清廉な僧だと誰もが思うけど、あきつ鬼への執着に気がついて葛藤する呂秀。
    全体的に血なまぐさく不穏になってきたけど、律秀の明るさ、猫にめろめろな大中臣有傅にクスッとできる。
    このバランスが自分には合う。

  • 播磨国妖綺譚シリーズ2作目
    人はどうあれば正解なのか
    底辺にある重いテーマもまた、見逃せない

  • 失敗して前の巻があるのに気づかずに読んでしまった。でも違和感なく読み進めて、半分以上読んだところで作者紹介のところで気づいた。室町時代、薬師と僧侶の兄弟。淡々と人々に寄り添い、傷ついたり病にかかった人々を助け、妖怪に対処する。途中で急に猿楽の「鵜飼」の話になったりしながら進むのが面白い。いかにも続きがある様子で終わっていて、後も気になるけど、それより前巻を読まないと!

  • あきつ鬼の本来の姿はどんなものなのか
    恐ろしいものだとしても、呂秀たちはもちろんあきつ鬼自身も戻ることを望んでいないように思うから、ガモウダイゴは引っ掻き回さないでほしいな
    世を呪うようになってしまった背景を知ると同情心がわいてしまうけれど
    まだまだ先がわからない不安な状態で終わってしまった…早く続きを!

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著者プロフィール

兵庫県生まれ。2003年『火星ダーク・バラード』で第4回小松左京賞を受賞し、デビュー。11年『華竜の宮』で第32回日本SF大賞を受賞。18年『破滅の王』で第159回直木賞の候補となる。SF以外のジャンルも執筆し、幅広い創作活動を行っている。『魚舟・獣舟』『リリエンタールの末裔』『深紅の碑文』『薫香のカナピウム』『夢みる葦笛』『ヘーゼルの密書』『播磨国妖綺譚』など著書多数。

「2022年 『リラと戦禍の風』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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