- Amazon.co.jp ・本 (286ページ)
- / ISBN・EAN: 9784166608003
作品紹介・あらすじ
日本海海戦で歴史に残る完全勝利をおさめた山本権兵衛。対して権兵衛にならった山本五十六の真珠湾奇襲は日本を破滅へと導いた。二人のリーダーの光と影を軸にエリート集団の誕生から消滅までを描く。
感想・レビュー・書評
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戦争について大本営について書かれたものを読むと、陸軍について多かったが、海軍について読むのは気付けば少なかったな。
海の山本、空の山本。
日本海海戦で歴史に残る完全勝利をおさめた山本権兵衛。日本を破滅へと導いた真珠湾奇襲の山本五十六。ペリー来航以来、日本海軍における二人のリーダーの光と影を軸に誕生から消滅までが書かれた一冊。
華々しいという言葉を使って良いのか微妙だが、海軍の栄華は日露戦争までの明治海軍までだな。
日清日露戦争に完全勝利し、合理主義は影を潜め、神秘主義が台頭する。「御稜威」つまり皇統連綿たる大日本帝国ゆえに勝てたと、海軍将校まで精神主義を言い始める。
太平洋戦争へ向かう昭和海軍は、現在の官僚体制丸出しだ。
山本権兵衛が心血を注ぎ、日本海海戦勝利によって頂点に立った帝国海軍は、40年後、もう一人の山本によって滅亡するのだ。
参考文献が全くないので、かなり著者の主観に拠った感は否めないな。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
帝国海軍は善玉論を一蹴する、目から鱗の革新的内容
陸海二元統帥 山本権兵衛 これが国を滅ぼした
陸軍の北進論に対して、海軍は南進論・対米英開戦で対抗
自分の権益拡大しか関心無い 国家については無責任
軍人は大局観がない 戦争の勝敗より、作戦の短期的当否
ハワイ作戦の戦略的意味は無い むしろマイナスばかり
将校団が保守化・密室化 終身雇用で共同体化
パラダイム転換が不得手 新技術を拒絶
巨砲より魚雷 第二次大戦での主力艦撃沈
情報量よりも分析能力 これは至言 情報過多の現代こそ
二度の大失敗 いずれも近衛文麿
①蒋介石の和平案 トラウトマン和平工作
②アメリカの和平案 4.16日米諒解案
御前会議の欠点 最終決定者の不在
戦争計画は一人歩きする 政治は止められない -
The stereotypic images of the virtuous navy and the evil army was removed.
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妄想によって書かれたのではないか、と思う本。否定のみに固執し、その対となる仮説等も言及されていない。司馬史観もどうかと思うが、それを否定する事だけに腐心している。
また教養本、批評とするならば、引用若しくは参考文献を列挙すべきでだが、それもない。大学生の論文以下と感じる。著者紹介で歴史評論家とあるが、疑問である。
これを刊行した編集者もプロとしていかがかと思う。この程度では本が見放されるのも理解出来る。嘆かわしい。 -
陸軍悪玉論はけっこう説得力を持っているとは思うけど、帝国海軍もたいがいだなというのがよくわかる本。山本権兵衛をひたすら持ち上げつつも、最後に容赦無く落とすし、山本五十六に関しては、作戦としての真珠湾攻撃には一定の評価はしつつも、大局観や戦略はまったく持っていないとボロカス。難関試験を突破してきた優秀な軍人(=役人)だが、これらに外交や戦略まで任せるとロクなことにならないというのは自明のように見えるが、今現在を持ってしても官僚お任せ論が絶えないのは嘆かわしいことであろう。
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陸軍悪玉、海軍善玉、山本•井上ヒーローといった俗論を排し、冷静に海軍の滅亡を解説。
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山本権兵衛の海軍による日露戦争と山本五十六の海軍による太平洋戦争。何故、結果が大きく変わってしまったのかを、独自の視点で分析している。
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海軍の評価の仕方が自分にとっては新鮮。山本五十六への批判もなるほどだし、二水戦の田中頼三の評価とルンガ沖夜戦の解釈については他の本では見たことなく、正解かどうかは解りませんがこれまでの疑問が解けました。結構お勧めです。
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P16-17
もう一つの治外法権条約改正のための外交交渉は難航し、とりわけアメリカが抵抗し日清戦争終了まで続いた。治外法権は重大問題である。現在でも日米安全保障条約の付随条約の日米地位協定で、アメリカは駐留軍人の治外法権を要求し続けている。
NATO各国や韓国に駐留する米国軍人の法的地位にも共通するもので、アメリカ人のとる旧弊な態度の一つである。アメリカ建国のさい、まだ領土もはっきりとしない世界で、自国民を全て自らの司法の下に置こうとしたことの名残である。
英仏は、中国やオスマン帝国で儒教統治やイスラム法支配への拒絶感から治外法権を主張した。英仏と違ってアメリカには、合衆国憲法が国際法や現地法より優先するという域外適用といわれる独善性がある。アメリカとは日本人を苛立たせる国なのである。
P86
三百年にわたるヨーロッパ外交史を研究した結果、イギリスは条約に背反したことは全くなかったが、ロシアは条約破りの常習犯だった。
P144
海戦によって国家は降伏を申し出たりしない。海戦や通商破壊戦の結果、補給路を喪失した陸軍が大敗し、大量の耐え難い死者や捕虜を出し、それによる消耗感、厭戦感が決定的である。 -
本書は帝国海軍の勝利と滅亡と題して、慶応4年から1945年の敗戦までの期間の考察を展開しているが、日本の歴史の一面として面白く読めた。
著者は、兵器の特性に詳しい。戦史を読む場合にはつい現在の兵器の性能が頭に浮かんでしまい、当時の兵器の性能を考慮しない愚をついおかすことがあるのだが、本書は当時の兵器の性能とそれによる戦略を詳細にわかりやすく展開しており、そこは面白かった。
しかし、日本海海戦の敵前大回頭の伝説は、事実とはだいぶ違うとの研究もあったように記憶するが、どうなのだろうか。
本書の軍事や兵器、戦略等の内容は面白かったが、人物評価には疑問も残る。山本五十六や米内光政等の詳細な研究は興味深いが、本書の内容で「山本五十六が海軍を滅ぼした」と断定するには、ちょっと根拠が薄弱ではないのかとも感じた。ただ、当時の日本の指導者への様々な検討や評価の論議が盛り上がることは歓迎できると思った。歴史への国民的認識の合意形成への道であると思うからである。その意味で本書は内容的にはちょっと疑問も残る点もあるが、読んで興味深い本であると思った。