「昭和天皇実録」の謎を解く (文春新書 1009)

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  • Amazon.co.jp ・本 (302ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784166610099

感想・レビュー・書評

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  • 「昭和天皇実録」を軸に、対談者たちが今までの知見に付け加えられたことを明らかにし、また関連資料も紹介し、背景も解説してくれる。読後、だいぶ前に二章で挫折していた、古川隆久「昭和天皇」中公新書、に再挑戦したくなった。以下備忘録的に。第一次大戦の戦跡後を見て、戦争の悲惨さを漏らした言葉が伝わり、陸軍がのちに天皇をかなり無視して行動する布石になったとする見方。/治安維持法の成立を事前に止めようと動いていたこと。/熱河作戦阻止の行動と失敗が、大元帥の作戦指揮発動権は、使えないものが白日のもとにさらされた。/二二六事件の自決に際して勅使を賜りたいとの申し出への怒り/開戦前に陸海軍のトップから後続を外させた政治的直感。/自分たちを正当化するための壁。そこに向かってやりたいことを叫んでおけば、その名の下でどんなひどいことでも国民に強いることができる。ごくたまに御神体から反対の声が聞こえてくるけれども、もう一度同じことを叫べば、結局許してもらえる/乃木大将が自決直前に昭和天皇にわたした「中興鑑言」、後醍醐天皇を例に、天皇がやっていいこと悪いことを忌憚なく論じた書/特攻に対して。天皇としては、そのようにまでせねばならなかった、しかし、大元帥としては、しかし、よくやった、という見方。/大東亜政略指導大綱に見る、大東亜共栄圏の新秩序を作る、アジアの解放と言う名目の嘘。/開戦後4ヶ月で陸軍参謀総長、その2ヶ月後には海軍の軍令部総長がもう天皇に虚偽の報告をしていた/長谷川清査閲使の1945年6月の報告で、国内の戦争遂行能力は著しく低いこと、満州に派遣していた梅津参謀総長から、支那派遣軍と関東軍は一撃か二撃で崩れると報告を受けていた。/陸海軍は本当のことを報告しないから、天皇がアメリカの短波放送で日本軍の実情を知る状態であった、と。

  • 興味はあるものの通読は難しい実録。昭和史に詳しいメンバーが読み解くというので購入。今までの研究、持論、行間の推理など、それぞれの見方が面白い。統帥権はもっと万能なのかと思ったら、意外と人間関係に左右されて思う通りにいかなかったらしい。昭和20年くらいで終わっているので、続編も見たい。

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著者プロフィール

半藤 一利(はんどう・かずとし):1930年生まれ。作家。東京大学文学部卒業後、文藝春秋社入社。「文藝春秋」「週刊文春」の編集長を経て専務取締役。同社を退社後、昭和史を中心とした歴史関係、夏目漱石関連の著書を多数出版。主な著書に『昭和史』(平凡社 毎日出版文化賞特別賞受賞)、『漱石先生ぞな、もし』(文春文庫新田次郎文学賞受賞)、『聖断』(PHP文庫)、『決定版 日本のいちばん長い日』(文春文庫)、『幕末史』(新潮文庫)、『それからの海舟』(ちくま文庫)等がある。2015年、菊池寛賞受賞。2021年没。

「2024年 『安吾さんの太平洋戦争』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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