- Amazon.co.jp ・本 (236ページ)
- / ISBN・EAN: 9784166610174
作品紹介・あらすじ
日本近代の変化と歩みは、「学習院」という学校の変遷と密接に関わっている。そもそも華族の学校として誕生した学習院だが、しだいに非華族の学生・生徒が増え、さらには軍人養成学校の色彩を帯びてくる。東條英機もその一人だ。 一方で、主立った皇族もここで学ぶが、皇太子時代の今上陛下が学習院を卒業していないのは、意外と知られていない。公務多忙のため単位不足だったからだが、卒業扱いにしようとする院内の風潮に真っ向から反対したのは、あの清水幾太郎だった。 吉田茂、三島由紀夫、近衛文麿、志賀直哉、朝吹登水子など、学習院に縁の深い、皇族・華族・軍人・文化人の逸話にも触れる歴史読物。【目次】はじめに 東條英機と学習院第一章 華族の学校第二章 特権と差別第三章 華族女学校誕生と下田歌子第四章 非華族たちの反発第五章 院長としての乃木将軍第六章 軍と学習院第七章 激動期から敗戦へ第八章 新時代へ
感想・レビュー・書評
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200円購入2020-06-15
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京都にあった学習院が華族の為の学校として東京に開校した
のは明治10年。
明治維新後、公卿家族の風紀の乱れ、知的能力の低下をどうにか
しないといけないと、宮内省所管の官立校としてスタートした。
皇族方が通う学校とのイメージが強い学習院の、その始まり
からの歴史を追ったのが本書。
なのだが、紙数のほとんどが戦前のお話。現在の学習院については
さらっと流しているので少々物足りなかった。
ただ、学習院=華族の学校とのイメージがあったので開校当初から
華族ではない階級の子弟にも入学が許されていたことは知らなかった。
でも、明治の頃は日本も階級社会。明らかに華族と非華族では
授業料の有無等の違いもあったし、気位だけは高いお坊ちゃま・
お嬢ちゃまのあいだで華族以外の階級の子弟が通うには辛い
ことだったんじゃないかと思った。
編入後、中退して他へ転出しているとはいえ、あの東条英機も
一時は学習院で学んでたんだね。この東条英機をはじめ、何人
かを取り上げてそれぞれのケースを紹介しているのだが、申し訳
ないがこの部分は飽きる。
個人のケースに紙数を割くより、戦後から現在までの学習院を
もう少し描いて欲しかったな。本書の中でも触れられているが、
秋篠宮家の眞子・佳子両内親王は大学は他校を選んでいるし、
悠仁親王は幼稚園から学習院を選ばなかった。
それに「皇族でも特別扱いはせず」だった学習院なのに、東宮家の
愛子内親王に限ってはかなりの特別扱いがなされているのでは
ないか。今上陛下なんてこの「特別扱いはせず」が原因で学習院
大学を中退なさっているのだから。
参考になったのは女子学習院の開校にあたっての下田歌子の
尽力くらいかな。「女の子には教育より花嫁修業」の時代だった
ものね。
皇族の数も少なくなって、学習院もその在り様を変えて行くのだろう
な。「華族・皇族の学校」の看板もいつかなくなってしまいそうだね。 -
皇族・華族研究で知られる著者の新作だが、「この手(ネタ)があったか!」と膝を打った。ありそうでなかったこのテーマ、内容も幕末前夜に月3でノンビリと漢籍を講じていた黎明期からリアルタイムまで、余すところなく網羅されている。だいたい、マクラに持ってきた東条英機のエピソードからして秀逸である——「有名なはずが意外に知られていない戦前日本の上流階級の実像」を、これ以上端的に表すものはないだろう。著者はそれを、学習院の公式名簿などの一次資料に丹念に当たって掘り起こしていく。結局は不明な事柄も多いのだが、著者の誠実な調査姿勢と筆致とが、欲求不満を抑えてくれる。
以後、この姿勢は巻末に至るまで続き、読みごたえは満点である。「お約束」の下田歌子・乃木希典あたりにももちろん言及されるが、そこに終わらない掘り下げこそが本書の真骨頂。このジャンルに興味のある人なら、読んで絶対に損はない。
最後に著者は、最近「皇族方の学習院離れ」などと外野がかしましい現象に触れて、「実は戦後70年を経て、ようやく当初の目的が達成されたということにすぎないのかもしれない」と書く。本書を読んだ後なればこそ、実に腑に落ちるひとことだった。
2015/2/21〜2/24読了