11人の考える日本人 吉田松陰から丸山眞男まで (文春新書 1397)

著者 :
  • 文藝春秋
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  • Amazon.co.jp ・本 (256ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784166613977

作品紹介・あらすじ

吉田松陰は国防のために、幕府を倒した? すべてをお金で説明する福沢諭吉が今も読まれる理由とは? 趙進化論者、北一輝は天皇のカリスマに賭けた? 小林秀雄はひとつのことしか言っていない? 日本が抱えた難問に答えを出した「考える日本人」。これだけ押さえれば近代日本がわかる。

感想・レビュー・書評

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  • 吉田松陰から丸山真男まで、11人の人物の経歴と思想を紹介した新書。
    松蔭、丸山を始め、福沢諭吉、岡倉天心、北一輝、美濃部達吉、和辻哲郎、河上肇、小林秀雄、柳田国男、西田幾太郎と、多士済々の人物について述べられており、彼らの思想と生き方を学ぼうとする読者には、格好の入門書と言えるだろう。
    福沢諭吉の項では、慶應義塾が日本で初めて授業料をとる学校だったとのエピソードも。
    彼が戦前から戦後まで説得力を持ち続けた唯一の思想家であるのは、人間が独立して生きるにはお金が大事だという経済リアリズムだったからとも。
    それぞれの人物について20頁前後でまとめられているのは、1回ひとり90分程度で「夜間授業」という連続講座で語った内容だからだそうだ。

  • 丸山眞男の言う、政治家を含め我が国の天皇ですら「無責任体系」が明治・大正・昭和へと続いている、と言う。奇しくも、平成、令和においても誰一人「責任ある判断、行動、決断ができない」国へと継続しており、「集団的『流れ』に任せた無責任主義」が悲しいかな横行していると感じる、のは私だけだろうか。

  •  日本の知識人・オピニオンリーダー11人の思想とその原点をわかりやく解説している。各人の経歴など、多少退屈に感じるところもあったが、文章もよみやすく、その時代の思想風潮もよく理解できた。
     各人は、多かれ少なかれ、「天皇」をどう位置づけるかにも心を砕いており、天皇は日本独自の思想背景としてなくてはならぬ存在であったこともよくわかった。近年はむしろ天皇に触れることはタブーのような風潮があるが、(どう位置づけるかにかかわらず)天皇抜きに日本の思想は論じられない、というのが、本書の裏テーマなのかな、と感じた。
     知ってるようで知らない日本の代表的な知識人達の主張の概要を学ぶには最適の一冊。

  • 11回の講義録を各々20ページ程度でまとめたもの。メジャーな思想家を取り上げてはいるが、内容的にはやや薄くかつ軽め。ただし、視点は著者のオリジナル性が感じられ、必ずしもオーソドックスな思想家紹介本とは言えない。
    注文をつけるとすれば、講座回数の制限はあったのだろうが、吉野作造と三木清を入れてもよかったのではないのかと。

  • 背景知識の要する、やや格式高い本であった。

    但し、歴史の思想の変遷に触れることができる。

  • 20230921読了

  • 音楽評論家としてテレビに登場する片山杜秀氏。
    本業は思想史研究であり、明治から戦後にわたって名を馳せた11人が選ばれ、著者が考察して本質に迫っていくスタイルをとる。吉田松陰から始まり丸山眞男までが論述されていくが、小林秀雄、西田幾太郎、丸山眞男が印象に残った。
    小林秀雄曰く、何でも科学的に説明できると信じる人が増えると世の中はダメになる。わからないものはわからないまま直視する。理論に頼る無謬主義に警鐘を鳴らし、直観による判断、間違えたら修正する柔軟性を重視している。昨今の◯◯の壁といった、お互いに通じ合えない頑な傾向を喝破している。西田幾太郎は、純粋経験という概念で、事実に従って知る、理屈で分析できなくても瞬間的に把握することを重視している。あるがままに受け止める、無の境地に触れているが、虚無的な態度だけからは何も生まれないという批判にも繋がるだろう。最後に丸山眞男だが、超国家主義というワーディングで、本来責任を持つべき者の主体性の欠如、無責任性が日本の底流にあることを指摘している。政治不信、官僚の不作為、ノブレス・オブリージュから程遠さに情け無さを感じる。

  • 【知的格闘を続けた日本人の肖像】吉田松陰の本質は軍事リアリズムだった? 天皇こそ超人だと唱えた北一輝の超進化論……11人の考える日本人を新たな視点で論じる。

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著者プロフィール

1963年生まれ。政治思想史研究者、音楽評論家。慶應義塾大学法学部教授。著書に『音盤考現学』『音盤博物誌』(いずれもアルテスパブリッシング、吉田秀和賞およびサントリー学芸賞)、『未完のファシズム』(新潮選書、司馬遼太郎賞)、『鬼子の歌』(講談社)、『尊皇攘夷』(新潮選書)ほかがある。

「2023年 『日本の作曲2010-2019』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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