- Amazon.co.jp ・本 (346ページ)
- / ISBN・EAN: 9784167164058
感想・レビュー・書評
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これはミステリというか、結構ホラーですね
しかしうまいです、ねじれた記憶のラストにはぞっとしました
膚の記憶も、食中毒の原因を探す話がどうしてあんな結末になってしまうのか??
手品を見るような面白さのある短編たちです
しかし読み通すと、「記憶」というテーマに沿って作者がアイデアを搾り出すようにして書いてくれた、ある意味連作的な短編たちであることがわかります
アンソロジーではなくて、一人の作家が一つのテーマで書き重ねた作品集であることが非常に興味深く感じました。
続編も読みたいと思わせる作品集でした詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
表題作よりも後ろに収録されている作品が面白かったです。
特に「ねじれた記憶」はさらっと読み流したつもりでしたが
読了後、強く印象に残りました。
ただ全編を通して、やたら性的表現が多いのが気になります。 -
高橋克彦の直木賞受賞作短篇集とのことで、合間にでも読もうと積ん読しておいた本。
これがなかなか面白かったので、一気に三部作を読了。
どれも「記憶」をテーマにした作品であり、主人公が曖昧になってしまった「記憶」を突き詰めていくと、最後には思いがけなかった真実が明らかになり、それが背筋を凍らさせるような出来事だったり、心あたたまる話だったり、とそのひねり、驚き、衝撃で読者の掴み方を探っているようにも思えてくる。
殆どの作品が著者の故郷である岩手県盛岡近辺を舞台にし、主人公は画家、小説家、脚本家などのどれかで、記憶が明らかになるに連れて、殺人、ホラー、SF、はたまた暖かな想い出などに繋がっていくストーリーはある意味でワンパターンだが、それにしてもこれだけのバリエーションを良くも産み出せるものだと驚かせる。
三作の中では、やはり一作目の緋い記憶が最も秀逸である。
読んでいて最後にぞっとさせる短編が多く、ぐっと引きずり込まれた。
おかげで一気に三部作終わるまで止められなくなってしまったよ。
元々、一度も読んだことのない作家だったのだが、歴史物の長編を知人から薦められていて読もうと思いながらも、まずは軽くトライしてみた短編だったが期待以上だった。
これは今後、作品を読み連ねるのが楽しみである。 -
パラレルワールドのような短編集。
緋い記憶
ねじれた記憶
言えない記憶
遠い記憶
膚の記憶
霧の記憶
冥い記憶
ホラーなのかファンタジーなのか、境が微妙で遠野物語のような読後。
それぞれ、不思議な結末だけど、後味が違う。
解説でみちのくの作家とあるけれど、みちのくガイドに挟まれていたら面白いかも。とにかく行ってみたくなる。
秘境の温泉宿、鍾乳洞、冷麺、わんこ蕎麦。
今はどうなってるのかな。
作者のあとがきが面白かった。
「秘密の花園」への甘美な記憶。
この本が直木賞をとってしまった戸惑い。
確かにあれ?こういうのを描く作家さんだったっけ?と思いつつ読んだので。
「私は悪役がほんの一瞬見せる恥じらいというものが好きで、それこそがダンディズムだと思っている。つまり、これはそういう狙いの本だったのだ。」 -
記憶の存在ほど不確実なものはなく、個人の意識の奥底に閉じ込められた記憶は都合良く勝手に上書きされてイヤな思い出は楽しい思い出にすり変わってしまい、ある程度他人と共有できたとしてもやはり曖昧で、全てはなかったことにしたほうがいいかもしれないくらい厄介なものだったりする。
それでもなかったことにできない記憶があって、犯した罪が当人の想像を超えていて無意識に追いやってしまった記憶は、その罪によって犠牲になったものが、悲しみ悔しさの行き場をなくして強烈な腐敗臭を放ち、罪を償えと訴える。それは「緋い記憶」では友人の住宅地図だったり、「膚の記憶」では蕁麻疹であったり、突如日常に意外な形で現れるところがヒネリが効いてて面白い。古い住宅地図にあるはずの家がないと気づいたときの焦りと恐怖感って実際はどんなものだろう?例えば、自分が良く遊びにいった友達の家が住宅地図から消えていたら..やはりものすごい怖いことなのだろうか。何かしら理由があって心底忘れたい家だったら、地図から消えてくれてラッキーだと思ってしまいそうだ...自分の住んでた町がそっくり消えていたら怖いけれども。
東北、村、秘密。これらキーワードがそろえば、私にとって結局なんでもホラーになってしまう。村という共同体で長いこと秘密にされたきた事実は長い時を経ていつのまにか伝説となり、そして改めて伝説を解体していゆく作業はいつもたまらない。また家の裏に存在する古い蔵とか、古民家の、襖の隙間の向こうに広がる薄暗い空間とか、凄惨な場面が仕込まれているような気がしてつい警戒しゾワゾワする。「緋い記憶」は結構ゾワゾワしっぱなしで、襖を覗いたらそこにはというパターンが貴志祐介の「黒い家」にもあったことを思い出して余計に寒気がした。
つけものの樽からはみ出す白い大根の記憶が実は少女の白い手だったという甚だしい記憶の書きかえ、各作品に必ず盛り込まれるエロ要素、色々つっこみたいけど、高橋克彦、かなり好きなタイプだわ。 -
短編集で読みやすかった!全体的に怖い話だったけど、怪奇現象とかじゃなくって、人の記憶による隠れた真実とかそういう感じの。(説明できてないなぁ)
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記憶がテーマとなっている短編集。作者が岩手出身ということで、よく登場する。記憶は時とともに、変化したり、無くなっていったりするものである。出来事は同じでも、その時の感情は人それぞれだ。自分のいいように記憶していたり、都合よく忘れていたり、、、そういった人間らしい描写が面白かった。
本作は過去の自分に会ったり、あるはずのない家が存在したり、オカルト的な要素もある。しかし、主人公たちは嫌なオジサンが強く、読んだ気分は良くはない -
【ねじれた記憶】
『空耳だろうか。こっそりと忍び寄る足音が聞こえる。あれは私の足音なのだ。
振り返って確かめたい欲望にかられた。
ひたひたひた。
どちらの私も息を潜めていた。
【膚の記憶】
『体の関係ができたのは半年前のことだ。ママは三十八。私の生活に割り込んでくるような野暮な女ではない。五十にもなって妙な言い方だが、私たちは文字通り大人の付き合いをしている。』
【霧の記憶】
『だが、すべてはロンドンの霧のようにぼやけている。記憶にも時効があるのだろうか。
私はひたすらそれを願った。
でなければ生きていけないような気がした。
咲子を殺したのは私かも知れない。』 -
怪奇ミステリーなのでしょうね。
すべての題に「記憶」の文字がついてますが、ほとんどが閉じ込めていた子供の時の忌まわしい記憶が、よみがえるというストーリー展開です。
幽霊あり、殺人あり、タイムパラドックスあり。。。いずれも論理ではなく怪奇の世界です。
展開も意外で、読みやすいせいもあって一気に読みきってしまいました。
(でも、やはり私のジャンルではないようです)