深海の使者 (文春文庫 よ 1-1)

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  • 文藝春秋
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  • Amazon.co.jp ・本 (364ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784167169015

感想・レビュー・書評

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  • 先生の形見です

  • その徹底した史実調査に基づく正確な描写に定評があった吉村昭の作品.
    ついこの前亡くなられましたね.最後は自分で自分の死を決したということで話題にもなりましたが...合掌.

    深海の使者とはそう,潜水艦の事です.当時日本の潜水艦技術は世界トップレベルで,殊に遠洋航海が可能で大量の物資を積載し時に飛行機までも搭載することができる伊号潜クラスを建造することができたのは日本とかろうじてドイツくらいのものでした.太平洋戦争が始まりドイツとの連絡手段がシベリア鉄道か飛行機か潜水艦かに限られた時,最も信頼性が高くかつ大量の物資輸送が可能だったのはこの潜水艦輸送のみだったのです.内容は航海日誌のようなもので淡々と描写されていて正直退屈するほどですが,夏の大西洋を連合国の駆逐艦に発見されないように潜行し続ける潜水艦内の描写には息を呑むものがあります.何しろ気温は40度をはるかに越え,水・食料も極端に制限され,増加する二酸化炭素濃度にあえぎながら進むわけです.いやー大変だ.そんな苦労をしつつも無事に帰ってきたのはただ一隻だけだというんだから割に合いません...往復自体は3回くらい成功したらしいんですが,最後の最後でシンガポールで沈められたりとかしてなかなか完全に成功はしないんですよね.

    ドイツとの潜水艦輸送が行われていたことは知られてはいますが,その詳しい内容を知ろうとする時に最良の一冊となるでしょう.

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著者プロフィール

一九二七(昭和二)年、東京・日暮里生まれ。学習院大学中退。五八年、短篇集『青い骨』を自費出版。六六年、『星への旅』で太宰治賞を受賞、本格的な作家活動に入る。七三年『戦艦武蔵』『関東大震災』で菊池寛賞、七九年『ふぉん・しいほるとの娘』で吉川英治文学賞、八四年『破獄』で読売文学賞を受賞。二〇〇六(平成一八)年没。そのほかの作品に『高熱隧道』『桜田門外ノ変』『黒船』『私の文学漂流』などがある。

「2021年 『花火 吉村昭後期短篇集』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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