新装版 関東大震災 (文春文庫) (文春文庫 よ 1-41)

著者 :
  • 文藝春秋
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  • Amazon.co.jp ・本 (352ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784167169411

作品紹介・あらすじ

大正12年9月1日、午前11時58分、大激震が関東地方を襲った。建物の倒壊、直後に発生した大火災は東京・横浜を包囲し、夥しい死者を出した。さらに、未曽有の天災は人心の混乱を呼び、様々な流言が飛び交って深刻な社会事件を誘発していく-。二十万の命を奪った大災害を克明に描きだした菊池寛賞受賞作。

感想・レビュー・書評

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    https://lib-opac.bunri-u.ac.jp/opac/volume/803447

  • よくここまで詳しく書けたものだと驚く。
    情報量の多さ。。すごい。

    状況が壮絶すぎて想像が追いつかないが、映画化してほしくはない。
    グロくなりすぎってのもあるけど
    読んで、それぞれの地元や地域ならどうするかを
    考えたり想像したりするのがいいと思う

    東日本大震災と比べてしまったが
    こちらは本当に火災の怖さ。
    読んでるときに都内を歩いていて、
    「ここは関東大震災のときどうだったか」に
    思いを巡らすクセがついてしまった

    奇跡的に燃えずにすんだ地域の好事例が
    今の世代に伝えられているか心配

    ----
    ・「なにがなんでも、こんな姿をお天道様にさらしていては可哀相だ」92

  • NHKスペシャルで関東大震災の特集を放送した。
    積読に成っていた本書を読みながら、テレビで見た映像を思い出した。
    火災旋風により、人や物が宙を舞うという。まさに地獄絵図だ。
    持ち出した火災道具に火が付き、災害を増加させる。江戸時代には守られていた火災時の教訓が、大正になって守られず、むしろ後退していたとは、愚かなことだ。
    朝鮮人への根拠の無い迫害行動など、生々しく綴られていて、憤りを感じた。
    パニックを起こした人々が集団心理により、簡単に狂暴化する。
    幸い、東北大地震ではこのような事が起きなかった。過去の教訓が生かされたのだろう。
    2035年前後には東北大地震の何倍もの威力の南海トラフ地震が、必ず起こると言われている今日。
    あの東北大地震を、身をもって実感した自分としては、生きている間には2度と体験したくないものだ。
    日頃の備えは大事だ。

  • 膨大な事実を淡々と積み上げる手法が特に際立つ小説だった。
    時代を重ねるにつれ豊かになっていく事の裏返しなのか、震火災への人々の対応が江戸時代より退化していた、というのが印象的だった。

    小説の最後で、冒頭のエピソードの続きが始まり、ここで初めて表現された個人の心情が沁みた。

  • 吉村昭の小説はいつもながらリアルです。表目的な事柄だけでなく、どのように被害が拡大してひとびが些細なきっかけで凶暴になっていくのかが描かれている。

    戦争、震災、パンデミック、天災
    いつ起きてもおかしくない。理性を失った時、人はこんなにも簡単に人を殺める。
    そのことが淡々と数字を絡めて書かれている。

  • 吉村昭『関東大震災』文春文庫。

    関東大震災から丁度100年という区切りの年。我々日本人は、この100年の間に阪神淡路大震災、東日本大震災という2つの震災を経験している。日本列島が大陸のプレートの狭間に存在する以上、これからもこのような大震災を経験するのは間違いない。大切なことは震災への備えと心構えといざという時の知恵、情報であろう。

    記録文学の第一人者である吉村昭の菊池寛賞受賞作。

    少し前に読んだ江馬修の『羊の怒る時 関東大震災の三日間』では、当時の東京市とその近郊の混乱の状況が生々しく描かれていたが、本作では関東大震災の8年前の前震と思われる群発地震から震災当日からその後の状況までが、様々な視点で描かれている。

    最近放映されたNHKスペシャルでも当時の大災害の様子がカラー映像で紹介されていたので、本作を読んでいると頭の中に映像が浮かんで来る。

    関東大震災が起きる8年前の大正4年に大震災の前震と思われる群発地震が起きていたのは知らなかった。その群発地震を巡り、当時の地震学者が大地震の予兆か否かで議論しているのも興味深い。

    東日本大震災の時も2日前の昼前にM7.3の大きな地震があり、それ以降M6クラスの地震が何度も発生していたことを覚えている。しかし、この時の群発地震が東日本大震災につながることを注意喚起した学者は居なかった。今の科学では地震を予知することは出来ないというのが定説である。


    今から100年前の大正12年9月1日、午前11時58分に相模湾を震源とするM6.9の大きな地震が関東地方を襲う。多くの建物が倒壊し、直後に発生した大火災は東京や横浜を焼き尽くし、20万人にも上る多くの死者を出した。中でも最も悲惨な出来事は、大火災は火災旋風を巻き起こし、本所被服廠跡地で3万8千人もの人びとの命を奪ったことだろう。

    こうした中、再び大地震が来るとか、大津波が来るなどといった流言が飛び交う。さらには朝鮮人が火を放っている、井戸に毒を入れているなどという流言蜚語は、朝鮮人の虐殺という悲劇を生み出す。


    本体価格770円
    ★★★★

  • 2023年9月読了。

  • 今年で関東大震災からちょうど100年。その間にも大きな地震を何度も体験してきた。将来、また大きな地震が起こると言われているが、過去からどれだけのことを学べているのだろう。

    本書は、関東大震災の発生前、発生後の様子、それによって起こったデマ、どさくさ紛れに起きた甘粕事件について、まるで見てきたかのような解像度で描かれている。

    建物の耐震性は向上し、関東大震災のような被害は多少起きにくくなったかもしれないが、津波への対策などまだ課題はある。また集団心理については、あの頃とあまり変わってないのではないかとも思った。

    • mei2catさん
      おはようございます。
      吉村昭さん大好きですが、この作品は未読です。登録しようと思います!
      おはようございます。
      吉村昭さん大好きですが、この作品は未読です。登録しようと思います!
      2023/09/04
  • 100年前に起きた関東大震災の状況を丹念な取材と著者の筆力で当時の惨状が生々しく再現されています。
    飛んできたトタンで首が切り落とされた話や火災旋風やデマの恐怖などこれから起こると言われている大地震のイメージトレーニングとしても役立ちそうです

  • 大震災では、地震による建物の倒壊だけでなく、家財の持ち出しに寄る避難経路の遮断、火災、火災が誘因となる暴風、そして人心の乱れであることがよくわかった。大正の関東大震災では過去の大地震の経験が生かされなかったのである。最近とみに地震を想定した防災訓練なども行われているが、実際どうなったのか過去の事実を知った方が身につまされる。必読の書。2023.5.14

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著者プロフィール

一九二七(昭和二)年、東京・日暮里生まれ。学習院大学中退。五八年、短篇集『青い骨』を自費出版。六六年、『星への旅』で太宰治賞を受賞、本格的な作家活動に入る。七三年『戦艦武蔵』『関東大震災』で菊池寛賞、七九年『ふぉん・しいほるとの娘』で吉川英治文学賞、八四年『破獄』で読売文学賞を受賞。二〇〇六(平成一八)年没。そのほかの作品に『高熱隧道』『桜田門外ノ変』『黒船』『私の文学漂流』などがある。

「2021年 『花火 吉村昭後期短篇集』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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