ここがホームシック・レストラン (文春文庫 タ 9-2)

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  • Amazon.co.jp ・本 (477ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784167218539

作品紹介・あらすじ

「子供たちにはがっかりさせられてばかり…」「友達のところみたいな母さんだったらよかったのに…」「どうして弟ばかり皆に好かれるんだろう…」。家族だから分かりあえることもあるけれど、ため息つきたくなることだってある。ファミリードラマを書かせたらこの人の右に出る者はいない、と言わしめた著者の出世作。

感想・レビュー・書評

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  • アン・タイラーの中で一番好きな小説がコレ。「人情」とうまくコミットできない堅物の母とその子供達。登場人物のそれぞれがこれ以上ないくらいに書きつくされている。家庭を巡る話を書かせたら、今アメリカではこの人の右に出る人はいないのでは??

  • おまえたちにはもう一人、母親が必要だよ。私とベックだって、最初の子がひどい病気にかかったあと、もう一人、もう一人と子供を増やしていったんだから。 -9P

    「近づきすぎると、限度をわきまえないって言われそうで。押し付けがましいとか、情緒的だとか……。でも、後ろに下がってれば無関心なやつだと思われるだろうし。とにかく、僕、他のみんなが知ってるルールを習いそこねたんじゃないかって気がするんだ。その日、ちょうど学校を休んだとかで。そのちょっとした境界が、僕にはどうにもわからない」-193P

    ふたりは末長く幸せに暮らしていくんだ、まわりにいる夫婦はみんな、くたびれた生活を送っているけど、自分たちは絶対ああはならないって思ってる感じ。ちょっとやそっとじゃ満足しない、そういう考えが、頭にくるのよ。どうしようもないの、コーディ。勝手だと思うけど、どうしようもない。あの子たちにこう言ってやりたいわよ。『あんたたち、何様のつもり? 自分たちだけが特別だと思ってるの? 私がずっとこむずかしい婆さんだったと思ってるの?』 -217P


    I was Cleopatra, I was young and an actress
    When you knelt by my mattress, and asked for my hand
    Cleopatra - The Lumineers

  • 図書館で。
    なんか前に読んだことがあるような気もするんだけど…。誰だって一度ぐらいは自分の本当の家族は違う所に居て理想の両親が自分を迎えに来るんだ…というようなことを夢想したことがあるのではないかと思うのですが、その逆を行くような、とてもリアルなお話。それにしても父親ぁ…って感じだけどまあ彼は彼で色々といっぱいいっぱいだったんだろうな。(とは言えそれが妻子を置き去りにする理由として妥当とはとても思えないけど)

    人生って色々と間が悪い時に間が悪いことが起きるもんだなぁと読んでいて思いました。次男のレストラン改装とか。確かに私が死んだ後でも良かったんじゃないってのはオーナーとしてはそうだよなって感じ。でも私も長男と同じでチキングリルを食べたいのに風邪気味みたいだからオクラのスープをお持ちしました、なんて言われたらキレルと思う。でもエズラが作りたかったのはレストランではなく、食べる人の事を気にかけてくれる家庭の食卓みたいなものだったならまあそれは仕方ないのかなぁ。

    それにしても長女は何であんななんだろう。大学を出て医者になっても男を見る目は今一つってのがなんだか…というか。まあ手に職が無いよりはましだとは思うけど… 

  • 平安寿子オススメの作家の本。

    いつもなにがしかのトラブルが起き、末っ子のレストランで最後まで食事をし終えることができない家族。
    とくに子どもの目に映る母親の姿が容赦なく描かれていた。出来事が絡みあっていく家族物語なので、読むのに時間がかかった。

  • この物語は私には「機能不全家族」のヒストリーと読めた。3人兄妹それぞれが社会的にはひとかどの成功をおさめているのに内面に空虚なものを抱えている様が痛々しくかなしい。そして彼らの子どもたちが不全の連鎖を担っていくのかどうなのか。
    ラストは、これも私としては納得のいく流れだった。
    読みながらこの感じは何かに似ていると思い、やっと三原順のマンガに似ているのだと思い至った。テーマにはじまり登場人物の描写、役割、本当によく似ている。
    この著者の作品は初めて読んだが、他の作品にも興味を持った。

  • 私が初めて彼女の作品に出会ったのが、本書。 (刊行直後の単行本でした)
    海外作品は、ミステリィばかりを読み漁っていた学生時代。
    社会人になり、とある編集者より贈られたのが、本書。
    海外ミステリィ以外は、あまり興味がなかったので、そのまま積ん読の予定だった。
    だが、社内で本書をいただいた話をすると、皆が一様にして
    「すぐに読んだ方がイイ。その編集者とは、ほぼ毎週顔を合わせるんだから」
    そうか・・・。そうだよね。  
    次回お会いする時には、お礼と感想言わなければならないのか・・・。

    翌日、しぶしぶ手にしました。 あっという間に読了。
    魅せられてしまった。  

    そして今、その頃の思い出と共に再度手にした本書。 一読後・・・
    魅せられた、とか陳腐な言葉では言い表すことが出来ない感情が
    後から後から胸に沸き起こっている。
    アン・タイラー、嗚呼、あなたはなんて素晴らしい作家なのだろう。
    後、三作品所有しているので、全て再読することにします。



    さて、物語を簡単に言うと、
    訪問販売セールスマンの父親がある日、養いきれなくなった家庭を捨てた。
    そして残された家族が、父親の不在を敢然と無視して、それぞれの人生をそれぞれが
    自分なりに生きていく・・・という家族物語である。

    アメリカ・ボルティモアのカルヴァー通りのテラスハウスに住んでいるタルー家の話。
    一家は4人家族。母親のパール、長男コーディ、次男のエズラ、長女のジェニーだ。

    物語は、一人一人の視点で進んでいきます。
    そこで語られるのは、それぞれの思惑であり、描かれるのは単なる日常である。
    ただそれだけなのに、さすがアン・タイラーだ。 グイグイ惹き付けて放さないのだ。

    レストランでレジ係をし、家族を支えるパールは、常に怒りっぽい(笑)。
    長男は、問題児。 弟は、優しいが、引っ込み思案。 何かに付け、豪快なことをやらかす長女。
    と、それぞれが様々な問題を抱え、反発しあい、この家族は、なかなか上手くいかない。
    少しずつ内部がズレている家族なのだ。  社会的にはごくごくまともなのだけれど、ね。

    やがて三人の子どもは成長します。
    コーディは、大学卒業後、実業家になり成功する。 ジェニーは医学部へ進学。 
    残ったエズラは母親の反対を押し切って、地元のレストランで働くようになる。
    そしてコックのルースに恋をする・・・。


    この一家の 「家族」 それぞれの生き様は、きっと絵空事なんかではなく・・・
    現実に、ありふれた「家族」の姿なんだと思う。 
    「家族」 ゆえの鬱陶しさ、 憎しみ、 愛情、 激しいぶつかり合い・・・ 
    それでも「家族」なくして生きてはいけないのが、現実なんだね。  何故だろう・・・?

    家族というのは、本当に大変だ。
     
    初読は、独身時代だったが、当時と今では私を取り巻く環境が全く違うように、感想も違う。
    再読した今、私は家族を持ち、母となっているのだ。 
    共感し過ぎるほどの共感。 随処に共鳴。  そして・・・唸るばかりだ。

    家族は、決して簡単な単位ではないよね。
    欠点だらけの人間が親になり、子供を育てていかなければならないことから始まるのだから。
    慌しく駆け抜ける人生が、たとえ波乱万丈であったとしても・・・ 
    家族と共に生きることに、己の生があるのだと感じる。   
    決して、すべてを捨てて、一人で生きるわけにはいかない。
    また家族と離れて暮していても、切り離せるものではないのだ。
     「家族」 は 「家族」 なのだから。


    「家族」に起こる、このジレンマは・・・共感しやすいテーマなのではないでしょうか。
    家族が愛おしくて、たまらなくなりました。

  • 家族の関係が上手すぎ…。

  • 最強。お母ちゃんの独白から入って、子どものことを一生懸命に考えているんだけどって始まるのに、いきなり親の心子知らずな感じで続くらへんからノックアウトですよ。子どもを見くびって独りよがりな親(愛ゆえに)、その親のことはお見通しで逆に上に立っているつもりの子ども(愛には気づきそうで気づかない)の構図。それからこの兄弟!おれはどっちの気持ちもすごくよく分かる。しかもこれは兄弟だけじゃなくて、不良と優等生と置き換えても読めるからねえ。まとまるには時間がかかりそうですが、まあ最強ですよ。2007.2.7

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