グリッツ (文春文庫 レ 1-3)

  • 文藝春秋
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感想 : 7
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  • Amazon.co.jp ・本 (478ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784167254032

感想・レビュー・書評

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  • 1985年発表作。エルモア・レナードがミステリ作家としては稀ともいえる脚光を浴びて、一躍著名人となった時期にあたる。当時レナードは本作タイトル「グリッツ(金ぴか)」の通り、昂揚感に満ち、充実した生活を送っていたのだろう。本作も生きの良い会話が主体で、刑事とギャング、小悪党らが俗語を用いて丁々発止の掛け合いをするさまが楽しめる。

    主人公はやさぐれた刑事モーラ。けちなチンピラに弾丸をくらい療養の身だったが、その後ろ姿を執拗に追う男がいた。復讐の機会を狙うのは、モーラが刑務所送りにした悪漢テディ。人殺しは朝飯前だが、あまりにも小者であることと、予測不能の行動をとるために、尻尾を掴ませない。一方モーラは、療養先で知り合った娼婦アイリスがカジノ・ホテルのホステスとしてスカウトされたことを知る。どうにも胡散臭さを感じたモーラはホテルのオーナーに接触を図るが、アイリスを引き止めることはかなわなかった。悪い予感が当たり、後日アイリスが不審死を遂げる。モーラは、真相を探るべく、ぎらぎらと妖しい光を放つ街アトランティック・シティへと向かう。

    クライムノベルを通してアメリカ社会の一断面を鮮やかに切り取り、所謂〝レナード・タッチ〟と称された作風にも更に磨きが掛けられている。
    卑しい街に曲者揃いの登場人物を放り込めば、あとは勝手にストーリーが動き出すといった感じで、緻密な構成よりも場面ごとのムードを重視し、躍動感に満ちた展開で読ませる。スタイル的にはチャンドラーの世界に通じるものなのだが、いわばマーロウなどが象徴する孤高のヒーローが不在の中で、本来なら脇役であるはずの男と女が、堂々と主役を張って「俺たちの物語」を創り上げていくといった印象だ。悪徳がはびこる街で、例え生き方は荒んでいようとも、己の信条までは穢さず、守らねばならない者/コトのために立ち上がる。その精神こそがハードボイルドである、とレナードは告げているかのようだ。

  • cool!映画ロック・ストック〜みたいな感じのcoolだ。
    ストーリーの終わらせ方もcool。バシッと落とすとか感動のフィナーレとかではなく、小粋な終わらせ方だった。
    出てくるキャラクターも好きだし、会話も面白いし、なんだかずっと読んでいたいと思った。
    エルモア・レナード、他の作品も読んでみたくなった。この人の空気感、好きだ。
    少し離れるが、翻訳は高見浩さん。翻訳小説は最後に訳者の解説がよくついてくるが、この本の解説は今まで読んだ中で一番良かった。読後解説を読んでいるとき、そうなんだよ、と嬉しく思った。
    あぁ、楽しい本だった。

  • 25年ぶりに再読。「レナード・タッチ」と呼ばれる軽やかな舞台回し、洒脱な会話。正しく手練れである。個人的にはロス・トーマスのほうが好みではあるが、映画のようにビジュアルな作風(それは。レナードが映画の脚本家でもあることと無関係ではないだろう)はこの作家ならではの味わいだ。堪能しました。

  • ニューオーリンズ出身というのと、2003年の『ママ、大変、うちにコヨーテがいるよ!』の飄々としたイメージが気に入っており、かなり期待して読んだが、ミステリーにしてはテンポも良くなく期待外れ。読み終えるのにやたら時間がかかってしまった。25年も前の作品なので時代遅れな感じは仕方がないが、そもそもこの翻訳者が好きではないので、どうかな?と思っていたら、やっぱり!な感じ。作家のせいなのか、訳者のせいなのか…。レナードの本が手元にもう一冊あって訳者も同じだから、再度それを確かめるべくトライしてみようか…という気力も起きない。

  • エルモア・レナードの文体と、それにマッチした翻訳は確かに、なかなか読ませるが、どうもインパクトに欠けるし、後に何も残らない感じ。

  • 恥ずかしながらエルモア・レナード作品に対して、思いっきり誤解してました。台詞がイカしてるとくればタランティーノ的世界に近いんだろう、もしくは妙な人物が色々現れるときいてたからコーエンBROS的な世界かもな、なんて思っていた。・・・映画監督でいうならソダーバーグなんですね。きっちりと、遊びをきかせながらもまっとうな作品づくりのできる才人の手によるクライム・ノヴェル。そう、すごくこの小説世界は「まっとう」なのです!<BR>
    金ぴかの虚飾の世界で、それでも自分の正義とまっとうなルールで生きてる奴が、なめた野郎と勝負する。「常識より良識」で生きてる人間独特のクールな言い回しが気持ちいい。オチの台詞もキマってるぅ!
    <BR><BR>
    ってそもそも「アウト・オブ・サイト」エルモア・レナード原作じゃん!忘れてた。でもソダーバーグだ、って思ってしまった理由は別だったのです、ホントは。あごひげもイカした刑事(ここはデカと読みたいね)のヴィンセント・モーラのイメージが、途中から何故かジョージ・クルーニーになってしまって。そのとたんあのソダーバーグ調の独特の色味がかったフィルムでイメージが再生されはじめたのだ!中盤まではどうにもこの翻訳文体に馴染めずひどく読みづらかったのに、もう映像となったらあとはノレてどんどん読み進んだ。(しかしアイリスのイメージがビヨンセだったのは、多分自分でも間違ってると思った。ラドンナ・パジェットだけはハッキリイメージがあります。ジェニファー・ティリー!どう?)
    <br><Div Align="right">(04.12.16 読了)</Div>

  • この『グリッツ』もレナードの傑作の1つとされている。

    マイアミ・ビーチ警察のヴィンセント・モーラは強盗に撃たれ、プエルトリコで療養中だったが、そこである女性アイリスと懇意になる。一方、以前モーラが刑務所にぶち込んだテディが出所し、復讐を企んでモーラの身辺をうろつくようになった。
    やがてアイリスはモーラの制止も聞かず、カジノ・ホテルへホステスになるために向かうが、2週間後、ビルから不審な転落死を遂げる。

    確かにいきなり主人公が撃たれる導入部は一気に物語に放り込まれ、怪我の静養中の主人公を襲う殺し屋の存在などハラハラする要素もあるが、なんせこの主人公がやたら女にモテるので、あまり感情移入できない。
    タフではあるが、それほどいい男に見えないだけどなぁ。

    レナード物では珍しく刑事が主人公なのだが、その特長を十分に活かしているようには思えず、いつものレナードストーリーが繰り広げられるだけだ。
    面白くなる予感はずっとあったんだけど、その予感だけで最後まで行ってしまった、つまりレナード作品にありがちな肩透かしを食らった、そんな感じだ。

    どうもレナード作品に関しては世間の傑作という下馬評と私の求めている物とは大きな隔たりがあるようだ。残念。

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