愛という字 (文春文庫 む 1-12)

著者 :
  • 文藝春秋
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  • Amazon.co.jp ・本 (235ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784167277123

作品紹介・あらすじ

意外なきっかけで知り合った男は画家だった。繊細な指、しゃれた服装、そして胃を病んでいる。丈夫で平凡なサラリーマンの夫とは何から何まで違っていた。魅力的な男の出現に揺れる微妙な女心を描いた表題作の他、温かくてちょっとホロ苦い向田ドラマの秀作「びっくり箱」「母上様・赤沢良雄」を収録。

感想・レビュー・書評

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  • 再読。「びっくり箱」「母上様・赤澤良雄」「愛という字」の三篇。「愛という字」では女性の浮気(未遂)の状況で、心の揺れる様を臨場感たっぷりと描き、揺れることもあるよねえと妙に納得させられてしまう。その小道具に画材店の絵の具を使い、色の名前を読みあげるだけで気持ちが徐々に高ぶっていくのを表すあたりは本当にうまい。結果として未遂に終わるのだが、その顛末も何一つ劇的ではなく自然にもとにおさまってしまうのも納得してしまう。

  • なんということのない日常の中の、ちょっとした人の心の揺るぎの表現が、沁みるように理解できる。
    自分で選んで読む作品じゃないけど、読むとなんだか温かくなる。

  • 表題作「愛という字」の他に、「びっくり箱」「母上様・赤澤吉雄」の計3つの短編集。

  • 3作の短編集。
    互いに裏切り合う母娘が、しかしそれゆえに親子として信頼を深める。
    空気が読めない風を装う祖母を少しうとましく思っていた家族が、色褪せた1通の手紙を機に、許し、打ち解ける。
    目覚まし時計の音が怖くて、設定した時間よりも先に起きてしまう臆病者の男女が、互いの存在をきっかけに、「愛」という字が何を意味するのかを考える表題作。

    読みやすい割には、内容は濃くて面白かった。

  • 向田邦子氏の短編集。それぞれが昭和の匂い漂うドラマが浮かんできます。小説なんですが、ひとつひとつのセリフがたっていて、情景や心象風景がぐっと浮かび上がる。言葉に力があるとは、この事なんでしょうね。

  • テーマは家族の愛かな。
    彼氏を実家に連れて行ったら母親が男を連れ込んでいたり、
    新築にあたりおばあちゃんの居場所が無くなりそうになったり、
    ちょっと浮気心が出てしまったり、
    家庭が崩壊すると思いきや、最後はほんわかするのです。
    読んでから向田邦子の台本を他の人が小説化したことに気づく。

  • 「向田邦子」の『愛という字』を読みました。
    東芝日曜劇場向けの放送台本を「中野玲子」が小説化した作品です。

    先日読了した『蛇蝎(だかつ)のごとく』に続き、「向田邦子」作品ですね。

    -----story-------------
    意外なきっかけで知り合った男は画家だった。
    繊細な指、しゃれた服装、そして胃を病んでいる。
    丈夫で平凡なサラリーマンの夫とは何から何まで違っていた。
    魅力的な男の出現に揺れる微妙な女心を描いた表題作の『愛という字』他、温かくてちょっとホロ苦い向田ドラマの秀作『びっくり箱』『母上様・赤沢良雄』を収録。
    -----------------------

    本作品には以下の三篇の短篇が収録されています。

     ■びっくり箱
     ■母上様・赤沢良雄
     ■愛という字


    ■びっくり箱

    東京で働いていた「厚子」は恋人を連れて実家へ帰郷。

    女手ひとつで内職をしながら苦労して「厚子」を育ててくれた母親の家では母と見知らぬ男がいて、「厚子」は母親と喧嘩になってしまう。

    人生って、驚きの連続… 人生はびっくり箱、楽しいことが出てくるか、 悲しいことが出てくるか、あけてみなけりゃ分からない。

    くびくしながら、ワクワクしながら… 人生は、日々、びっくり箱を開けながら、過ごしているのかもしれませんね。



    ■母上様・赤沢良雄
    特攻隊の所属していた息子が書いた遺書。

    生き残った息子にとっては、バツの悪い遺書になってしまったけど、母親にとっては大切な宝物… 息子の立場、亭主の立場から、母子の関係と家族の繋がりを考え直すことのできた作品でした。



    ■愛という字
    三篇の中で最も印象に残った作品。

    要約すると、平凡な生活に飽きた主婦が、愛に憧れて、それを実現しようとするけど… 現実に気付き、平凡だけど幸せな家庭に戻る、、、

    という作品なんですが、「向田邦子」が脚本を書くと平凡なドラマな感じがしないんですよね。

    画家とその彼に心揺れる女心の微妙な人間描写が巧く描かれているからなんでしょうねぇ。

    道具の使い方も巧くて… 出会いのきっかけとなる腕時計なんか、そのイイ例だと思います。

    それから心の機微を表す比喩的な表現が巧い、こういうところは大好きですね。

    心がときめくときの「胸の中で、小さく目覚まし時計がなる」とか、

    画家から色んなこと(愛情を含めて)を教えてもらったことを「お陰で、いろんな色の名前、覚えたわ」とか、

    一線を越えようとしたときに「目覚まし時計の音を怖がって鳴る前に止めてしまったのは、昨日までの直子だった」とか、

    巧い表現だと思いますね。

    「向田邦子」らしい作品だなぁ… と感じた作品でした。


    「向田邦子」作品を読み始めると、また次の作品が読みたくなりますね。

  • ドラマの脚本のような感じでさくっと読めて手軽に楽しめる。移動中とかに読むのにちょうど良さそう。

  •  向田邦子 著「愛という字」、1996.9発行(文庫)。びっくり箱、母上様・赤澤良雄、愛という字の3話が収録されています。昭和という時代、家庭であれ、喫茶店、病院であれ、人と人とのコミュニケーションがゆきかう時代だったなと改めて思います。口喧嘩しながらも、互いの距離感を測りつつ、親しくなっていくのですよね(^-^) 私は「びっくり箱」が気に入りました!
     家族の絆の素晴らしさを描いた3話、どれも素晴らしいです。びっくり箱、母上様・赤澤良雄、愛という字。 向田邦子「愛という字」、1996.9発行。母上様・赤澤良雄が一番のお気に入り。次がびっくり箱。

  • 向田邦子の放送台本を中野玲子が小説化。

    びっくり箱
    母上様・赤澤良雄
    愛という字
    収録。

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著者プロフィール

向田邦子(むこうだ・くにこ)
1929年、東京生まれ。脚本家、エッセイスト、小説家。実践女子専門学校国語科卒業後、記者を経て脚本の世界へ。代表作に「七人の孫」「寺内貫太郎一家」「阿修羅のごとく」。1980年、「花の名前」などで第83回直木賞受賞。おもな著書に『父の詫び状』『思い出トランプ』『あ・うん』。1981年、飛行機事故で急逝。

「2021年 『向田邦子シナリオ集 昭和の人間ドラマ』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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