巨門星: 小説菅原道真青春譜 (文春文庫 あ 6-6)

著者 :
  • 文藝春秋
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感想 : 8
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  • Amazon.co.jp ・本 (522ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784167285067

感想・レビュー・書評

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  • 菅原道真というよりは藤原明子と島田忠臣がメインの物語でした。最初から子の取り違いを可能なように書いていたようだけど、最後はぼかして終わらせちゃいましたね。取り違いがずっと頭の片隅に残ってしまうせいですごく気持ち悪い読感になります。
    仕立てと道筋だけ決めて書き始めたんだろうけど、間を膨らませすぎてかなり冗長に見えます。1行で済む話を1ページ使うような文体。それが小説ですと言ってしまえばそれまでだけど。

  •  菅原道真少年の周辺、事件の場に必ず濃く漂う妖しい梅の香に、神隠しのように盗まれる綾なす帝、后妃の衣のけざやかなひらめき、りりしい貴人と儚く美しい姫君の艶な愛情、大臣后の政略、権力の奪い合い、秘薬毒殺に火に矢の暗殺の血生臭い仄めかし。雅な宮廷での過激な暴力と憎悪。数々の謎めいた場面をたたみかけられ夢中で読み進むものの、残り50ページくらいで山里の女手一つの大きな花畑とか出てきた時点で、まだ何一つ解明されてないがどうする?!と焦った。で、オチが!!
     赤江瀑であることを忘れるような活劇でしたが、やっぱり赤江は赤江でした。乱歩ばりの強引さも連想した。そんなオチならそりゃあいろんなことが可能になりますがしかし。いえ、充分興趣に富んだ物語でした。最後、それにしても道真、夢は夢でいいのか。主人公ははっきり物語の中で自覚的であってほしいというのも私の好みでしかないだろうけど、島田が真の主人公であったのかな。その島田にしても最後近くで花栽培の女に問いかける、本当にその青年はあなたがあの日産んだ子かとかいう疑問も、新たな謎か?だがそのままだしね。産んだ子以外誰が居るんだあと4ページくらいしかないしって感じだった。真実など明確でなく、圧倒的な平安朝時代背景文化描写の中に霞んでいくのであった。

     最近読んでる道真もの漫画「応天の門」はこの作品を参考にしてるのかもしれないとちらっと思った。

    2016/06/21

  • 20年以上前に購入して一読んだきりだったのですが久しぶりに再読です。
    初めて読んだ当時は赤江作品にしては妖しさが少なくて淡々としていた印象だったのですが…今読むとなかなか面白くて楽しめました。
    ただ…続編が出ないままに赤江氏が亡くなられてしまったのでこの先を知ることが出来ないと思うと寂しいです。

  • 菅原道真の幼少期~青春期を描いた小説。
    個人的なイメージだと、菅原道真というと歳をとっているという印象が強かったので
    若いときの菅原道真というとなんか新鮮なかんじがしました。

    内容的には思ったよりミステリーしている印象。
    がっつり謎解き…というほどではないですが、
    平安京にまきおこる不思議な事件を菅原道真が追っていくというかんじでしょうか。
    いや、どちらかといえば菅原道真というよりは
    菅原道真の父親の部下の島田忠臣さん視点のほうが多いかも。
    ダブル主人公っぽいかんじか?

    ラストはちょっと不完全燃焼気味?
    というか正直これからが本番だろう!!!ってかんじでしたかね。




    以下自分のついったーより感想メモ(がっつりネタバレ)

    ・とりあえず子供道真もとい阿古が生意気なガキんちょすぎて笑う。
    明子さんのことを「眉が少し薄いけど、中の下かな」とか
    色黒の女房の七奈木さんことを「なななぎとか呼びづらい。からすでいーじゃん、からす」とかwwww

    ・これもしかしなくても歴史ミステリーなのか!?っていう。巻き起こる謎の怪事件。
    それに立ち向かうのは少年探偵・阿古!?
    「ペロッ…この香りは…曙の香り!」(※舐めてません)。  …いや、阿古そこまで探偵してないな。現場検証してただけだ。

    ・正直、あ なんかこの小説 文徳帝でそう+サブタイトルに道真青春記って書いてあるから道真さんもでんのか
     よし買おう。って勢いで買ったのでまさかここまでミステリ仕様とは思わなかった。
    予想外で楽しいけど!

    ・高子さんを是非 惟仁親王の妃に。っていう良房さんにマジギレ文徳帝。
    ただしキレる相手が基経さん。
    ちょwwww良房さんに直接言えない文徳帝ヘタレ可愛いwwww

    ・そして、案の定毒殺…。
    直接は描写されてないけど、明子さんのモノローグから。
    てか、これ良房さん、自分の都合のいいように文徳帝が動くように以前からじわじわ毒を盛ってたっぽい? 
    うわー、ひでー。良房さんぱねぇー。安定の黒さ。


    ・さて、そろそろ物語も終盤ってかんじでだいたいこんなかんじかなー?ってのはわかってきたんだけど、
    よくわからないところも多いな。
    と思いつつ、明子さんのモノローグで実は応天門のアレは
    良房さんじゃなくて良房さんをくぐつにした基経さんと融さんの仕業だぜ!ってのに驚いた
    (明子さんのモノローグだと断定はしてないな。ちょっと変な書き方してしまったオウエイチ…。)

    ・でも確かにそれはちょっとおもしろいかもな!とも思ったり。引きこもりコンビ!(笑)
    すげー、どうでもいいけど、個人的イメージでは良房さんはストレートに黒い。
    基経さんは捻くれて黒いってイメージ。語彙が足りないので上手く言い表せないけど。




    ・それから宣来子さんの弟の仲平さんが地味にいいキャラ。
    仲平「ところで秀才の殿」
    道真「その秀才の殿ってのやめてくれ」
    仲平「はい、では兄上」

    ⇒次のページ  
    仲平「~(略)わたくしは目下、秀才の殿の後塵を拝することだけでも、手いっぱい」


    即、 戻 っ て る よ!!! 



    ・巨門星読みおわった!おもしろかった!
    けど、ちょっと不完全燃焼なんだろ?そうなんだろ?そうなんだろ?
    だって時平生まれたところで終わるとか!!むしろこれからが本番だろ!!と言いたい。

    ・まぁあとがき見るかぎり作者さんも続き書きたいかんじみたいだけど。
    これ初版1990年で現在続編が無いところを見ると、
    もう続編が出る見込みはねぇな…。チクショウ…。

    ・結局、夢主さんが誰の末孫かわかんねーし。とりあえず夢主さんと夢解さんが檀林皇后の使いの人を殺したり、明子さんの服を仁明帝のところにもってったり、文徳帝のふりしたり、その他諸々はその排斥させられた夢主の祖先の恨み?で朝廷を混乱させようとしたってことでいいのかな?

    ・しかしもし続編があったなら夢解さんはこのスキルを生かして昌泰の変の後、
    ニセ道真として宇多・醍醐帝・時平あたりの前に現れて色々混乱させそう…。


    ・てゆうか、作者さんはそのつもりでこの夢解のキャラクター設定したような気がする。だったらそこまで書いてくれよ!!!とか思うんですが、まぁ…ねぇ…。

  • 若き日の菅原道真。わくわくしながら読んだ。続編が待たれる。

  • 友人から借りました。
    赤江瀑は、いろんなシュチュエーションの話を書くけれど
    今回は、時は平安?かな。
    学問の神様として有名な、菅原道真の青春譚。
    菅原道真が主人公だなんて
    目の付けどころからしてまず赤江瀑っぽい・・・
    平安時代が設定の小説って、あまり読んだ事が無かったので
    なんだか新鮮でした。(なんて素敵にジャパネスク以来?!)
    ちょっと最後のシメが物足りなかったかしらね。。

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著者プロフィール

1933年下関生。日本大学芸術学部中退。70年「ニジンスキーの手」で小説現代新人賞を受賞しデビュー。74年『オイディプスの刃』で角川小説賞、84年『海峡』『八雲が殺した』で泉鏡花文学賞。2012年没。

「2019年 『オイディプスの刃』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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